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丸く収まったこの世界  作者: 榊屋
第零章 紡がれゆくあの過去
200/324

37-あの少年が-

 まず、家に帰宅した。

 そりゃあそうだ。まずは現状について整理しなくてはならない。

 それから、俺達は移動する。

 どこかの廃ビルのようだ。

 『義賊 暮射くれいる』という暖簾のれんや旗がそこら中にある。


「おぉ!嘉島に王城だなぁ!」

 そう言って、最上階の広場に1つだけ石の椅子を設けて座っている東先輩は言った。

「で、何の用だ?」

「何の用、じゃねーよ、コラ」

 俺はそう言って、東先輩に掴みかかった。

 周りの子分(?)たちも動き始めたが、どうも東先輩が人差し指を出して、止めた。

「どうなってんだ?超狙われたぞ?」

「あぁー・・・・・・。まだ、あいつら居たのか・・・・・・」

 そう呟くと東先輩は乱暴に俺を突き放した。どうも、簡単に俺の攻撃など避けれるようだ。

「折角、関係ない強い奴らを捜して事件の調査させたのに・・・・・・まぁいいか」

 さらにそう言って、

「いいよ。お前ら。依頼終了」

 と言い放った。

「な――」

「事情だけは説明してやる。だから、聞いたら、もうこの事件には関わるな。絶対だ」

 そう言って、俺達が反応する間もなく話を始めた。


「アイツらが大量殺人の犯人の一味だ。アイツらを指揮している奴の息子が、快楽のために大量殺人を起こした。それを隠すために、事件に関わろうとしている連中を全員殺そうとしているんだろう」

「な・・・・・・!!」

 それじゃあ、つまり、俺達はこれからも狙われ続けるってことか!?

 俺がそう言うと、

「いや、それはない」

 と東先輩は一蹴した。

「関わる事をやめているということが証明されれば、狙われることは無い」

「・・・・・・」

「俺達は顔がわれていたから、他の誰か・・・・・・出来ればあいつらみたいな異常な奴らを空いて取れる奴を捜していた。それが」

「僕たちだった」

 そこで始めて隼人は口を出した。

「なるほど。これでようやく繋がった。どうして、貴方が僕らのところに依頼しに来たのかが最大の謎だったんだ」

 そう言って隼人は

「依頼終了だ」

 と言った。

「な・・・・・・!?いいのかよ、隼人!」

「このまま長居すれば、僕らがまるで義賊の仲間みたいじゃないか」

「・・・・・・だとして、それがなんになるってんだ?」

 俺がそういうと、隼人はこちらを睨んだ。

「それをばれてしまえば、向こうはもう一度義族たちを狙いに来る・・・・・・すなわち、東先輩達を」

 そう言って隼人は東先輩を見た。

「狙われるのは僕らだけでいい」

 そして東先輩の方向へ歩く。

「?」

 東先輩は不思議そうな顔をした。

 そして、隼人は

「すみません」

 殴った。

 東先輩を、だ。

「隼人!?」

「さぁ。僕らを早くつまみ出せ。それで、僕らの仲間関係はなくなる」

「・・・・・・!?」

 東先輩は驚いた顔を見せ、

「・・・・・・そういうことか」

 そう言って笑った。そして、

「感謝する」

 と1度言った後、

「やさしく、つまみ出せ」

 子分たち2人がやってきて、「失礼するぜ」とだけ言って、俺達を引っ張った。




 2人は何も言わずに俺達の体を投げ捨て、廃ビルの中に戻っていった。

「何なんだ?あいつらは・・・・・・」

 隼人はそう言う。

「隼人?」

「義賊の頭領だって言うから、どんな奴らかと思ったら、ただの乱暴な奴だったね」

 そう言って隼人は、1度僕にウインクした。

 ・・・・・・なるほど、演技ね。

「さっさと帰ろうぜ。今日はよくわからないのに狙われたりして忙しかったし」

「怪我してばっかだな。まぁ、ムカついたから殴っただけだけど」

 



 家について、俺はキッチンに立った。そして夕食を作り始めた。

「これで、東先輩達は守られたんだろうか」

 俺はそう言って、東先輩達が居る建物の方向を見やる。

「さぁ・・・・・・。必ずしも大丈夫とは限らない・・・・・・。もしかしたら、僕らの行動の意味がばれているかもしれない」

「ていうか、わざわざ殴った意味はあったのか?」

「そう。そこがポイントだ」

 隼人はそう言って、食卓テーブルの自分の席に座った。

 俺はそこにハンバーグプレートを置いた。

 そして、自分も着席して、

「どういうことだ?」

 と尋ねた。

「あれによって、実は僕らの命も永らえているんだよ」

「・・・・・・?」

「ああやって殴れば、僕たちは東先輩に頼まれて行動をして、挙句、仲間割れしたようにも見える」

「・・・・・・待てよ!それじゃあ――」

「そう。危険が及ぶのは東先輩の方になるだろう」

 隼人は冷静にそう言って、ハンバーグを口に入れた。

「・・・・・・その言い方じゃ、策がありそうだな」

「そう。奴らから見れば、『僕ら』と『義賊』のどちらが敵なのか分かりにくくなっている。この錯乱状態なら、今日の内はまだ行動できないはずだ」

「けど、行動してくるかもしれないぜ?」

「だから、東先輩には警戒するように伝えた」

「どうやって?」

「僕らがつまみ出される時に、子分さんの1人にメモを握らせておいたのさ。念のために作っておいたメモを、ね」

 そう言って隼人はニヤリと笑った。

 ・・・・・・相変わらず、やることなすこと先読みだなぁ、コイツは。

「それで?これからどうするつもりなんだよ」

「さっきも言ったとおり、恐らく奴らは今日は攻撃してこれないはずだから、僕らが明日、朝一で仕掛ける」

「・・・・・・なるほど。そうすれば、向こうの狙いは俺らだけに定まるわけだ」

「そーいうこと」

 そして隼人は、どんどん食べ物を口に入れていく。


「ところで、犯人が殺した奴らが一体どんな奴だったのかについて調べてみた」

「ほぉ。で?どうだった?」

「全員犯罪者だ」

「・・・・・・え」

 どういうことだ?

 犯人は快楽のために殺していたんじゃ・・・・・・。

「もちろんそれだけじゃなかった。だけど犯罪者が多数を占めていたね。ああ、でも濡れ衣を着せられた人の時は犯罪者じゃなかったらしい」

「なるほど・・・・・・」

 納得した瞬間だった。

 何故か、思い出した。


 この間出会った少年・・・・・・。

 あの少年が・・・・・・もしかしたら・・・・・・。


 突然そう思ったが隼人には言わなかった。

 理由は分からない。


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