31-どうして分かった-
アクターとは。
元来、人間が超能力としてきたもの『だけではない』。いままでの歴史の中にあった事実すらもそうなのではないかと考えられている。
例えば俺で言う、『リメンバー・リメイン』――日本語では『残留思念』だが――とは、分かっている通り、人の心を読む力である。この能力は有名占い師などが持っていることもあるが、滅多にいない。そして、本当にこういう能力を持っている人間は基本的には占い師なんかせずに、心理カウンセラーになる。なぜなら、『リメンバー・リメイン』は心優しき人にしか現れない、『演じ方』だから。
「歴史的に言うならば、聖徳太子とか卑弥呼とか・・・・・・あとは、預言者として有名なムハンマドとかね」
隼人はそう言って、説明した。
「また、これらが起きる理由として、現在分かっていることは、名前から生じる『ネーム』、存在・過去から生じる『ミラー』、突発的に生じる『アウトブレイク』という、3種類ある」
「いや、そういうことじゃなくて」
「ああ、ごめんごめん。どうして僕が知っているのかということだね?」
そう言って隼人は笑いながら、歩き続ける。
「この世の中のほとんどの書物が王城グループには存在する。そして、僕はその全てを読了し暗記している」
「・・・・・・はぁ」
「それで、僕が読んでいた書物の一部――恐らく世間に公表されているものではない、王城の研究対象の何かだったんだろう。それを読んだ時、気になる記述があった」
「気になる記述・・・・・・」
隼人の言葉を反復する。
つまりそれが・・・・・・。
「この世界に置ける、裏の存在・・・・・・アクターだ」
「なるほど・・・・・・その書物からこういうことを知っていったわけか」
「いや、ちょっとだけ違う」
隼人はそう言って笑う。
「え・・・・・・?」
「アクターに関する内容はほとんど書かれていなかった。だから、僕はその研究所に侵入したり、僕の仕事柄、出会ってきた人々から情報を収集したりした。こういうのを、少しながら知っている人もいるようでね・・・・・・。その情報を集めたんだ」
「・・・・・・仕事柄って・・・・・・?」
「・・・・・・あれ?言ってなかったっけ?」
隼人はそう言ってこちらを振り向いた。
「今から、仕事場に向かうんだけど・・・・・・」
「仕事場・・・・・・?」
おいおい、中学生でバイトはまずくないか?
と言おうと思ったのだが、
「家にある。僕はパソコンのサイトを使って、人々を探索しているのさ」
「だから、何の仕事をしているんだよ」
「さっきも言ったろ?」
隼人はそう言って、「ついた」と続けた。
「僕は探偵さ」
回想終了。
さて、そして家の中に戻るわけだが・・・・・・。
俺の夢・・・・・・か。
さて、どうしたものだろう。
「俺の夢・・・・・・か」
自分でそう呟いて、思考を開始するように促す。
結果。
正直に言うべきだろうと判断した。
「俺には、お前も知っている通り、姉がいる。姉の病状ははっきり言って最悪だ」
「・・・・・・」
隼人は黙って、話を聞いている。まあ、茶々入れられたら話しにくいし、都合のいいことではある。
「隼人は、『嘉島家族』を知っているか?」
「・・・・・・知らない」
「だろうな。じゃあ『嘉島 響』は?」
「・・・・・・知らない」
「それもそうだろう。しかし、これらは全て検索すれば、トップに出るくらいの有名な人たちだ。お前は、これらを忘れているんだよ」
「・・・・・・どういうことだ?」
隼人は、そう言って俺を改めて見つめる。
「俺の姉の・・・・・・恐らく、アクターだろう。その力は『人々の記憶を混沌させる』こと。結果的には全員、誰も俺の姉を知らないという状況になる」
「・・・・・・」
「俺の家系は、そういう『記憶』に関係する何かを持っている」
そこまで言って、隼人を見る。不思議そうな顔をしている。
「で、何で俺がこんな話をしたのか・・・・・・だよな?」
「そう。驚きの内容だったけれど、それが君の夢とどう関わっているんだ?」
「俺の夢は『家族を守ること』だ」
俺の発言を隼人は相変わらず不思議そうに訊く。
「俺の父さんは、ある美術品を持って失踪した」
「美術品・・・・・・?」
「どうせ知らないっつーか、忘れているからいいよ。でも、バイオリンらしい」
「バイオリン・・・・・・?」
「そ。それで、そのバイオリンを手に入れるために、皆、俺達家族を狙っていた。それを守るために、姉さんは、自分の能力を使って、家族全員とバイオリンの存在を隠したんだ。その代償として、今、姉さんはあの状況なのさ」
そこまで俺が話して、改めて隼人を見た。
「俺は、家族全員を守りたい」
「・・・・・・」
「だから、俺はお前の仲間になるような余裕は無いぜ」
俺はそう言って、隼人を睨む。
それを訊いた隼人は目を丸く見開いて言った。
「どうして分かった?」