16-生きてるだけで恐いでしょう?-
すみません。今回は分かりにくいかもしれません。
僕は夜の街に居た。
「・・・・・・」
ホテルを見上げる。
隼人はあれからずっと寝ている。いや、寝ているだけではないし、思考を積み重ねているが、しかしアイツには全て分かっているようだ。この事件の全容を理解しているようだ。
「面倒だ・・・・・・」
俺はそう呟いてから、夜の街を静かに歩いた。
「・・・・・・」
中心街は深夜でも騒がしい。むしろ時間を追うごとに騒ぎは酷くなっていく。
しかしココ最近は余り問題は起こっていない。どうやら『義賊』の存在が見られているようだ。すなわち、正義の意思を持った賊・・・・・・今回の場合は暴走族らしい。
犯罪者が治安を維持するような社会を持つ、危ない街。そんな街だからこそ、人は希うのかもしれない。だから俺達のような、アクターが生まれるのかもしれない。実際に、俺、隼人、今回の犯人、そして『響』と『タケル』の5人が既に数えられている事になる。そしてそれ以外にもこの街、或いは世界に居るであろうことが容易に考えられる。汚い話で言えば、G様を1匹みたら、5匹は居ると思えというような考え方である。
閑話休題。
そういう街の中には、夜遅くでも未だ帰ろうとしていない中高生(俺が言えたことではない)や、義賊の存在を知ってか知らずか、暴れ狂うチンピラたち。あと、目立つところでは長く赤い髪の毛の少女とその周りに居る、数人の同級生くらいの男女が、激しく音楽を流して踊っている。
「事件が起きても何一つ変わらないな・・・・・・」
俺はそう呟いてから空を見上げる。
晴れている。
こんな日に雷が落ちてくる。
・・・・・・ぞっとした。
「嘉島君じゃないか?」
突然声を掛けられた。
「双葉さん」
あの刑事さんだった。
「どうかしたのかい?空を見上げて・・・・・・」
「雷が落ちてくることを想像してみました」
「どうだった?」
「ぞっとします」
「だよね」
はは、と快活に笑った。
「考えないほうがいいよ。こういうのは。雷が落ちる原因もよく分からないけれど、何がおきても危険であることには変わりないし」
「ですね」
「・・・・・・王城君は?」
「アイツなら今、ホテルの部屋で寝てますよ」
最初は嘘をつこうと思ったが、正直に答えておく事にした。
「それにしても、君も王城君もおかしいね」
「何がですか?」
「どうせ君らアレだろ?犯人探ししているんだろ?」
「・・・・・・」
「隠さなくったっていいよ。少年の内はそういうことを考えがちだから。でもさ」
双葉さんはそう言って続ける。
「そういう何か分からないものに首を突っ込むなんて、恐くないのかな?」
「アイツは分かりませんけど、俺はそうでもありません」
「・・・・・・どうして?」
「だって・・・・・・」
俺は思い浮かべる。
「人なんて、生きてるだけで恐いでしょう?」
「・・・・・・」
「では失礼します」
俺は言い切ってからホテルに入り込んだ。
それから
「くく・・・・・・」
と自分で笑う。
俺は生きていると感じた事なんて無いのに。
だって人は、死ぬまで生きていたかどうかなんて分からないんだから。
僕の中では、人は生きてなんて居なくて、
死んだ時に初めて、『生きた』という結果が生まれる。だから人は死ぬ直前まで自分の人生を評価できないし、1番恐い瞬間を『死』と感じるんだろう。
という考え方なんです。それを嘉島君に流用しました。
説明しましたけど、分かりにくいと思います。僕の勝手な想像ですから。