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丸く収まったこの世界  作者: 榊屋
第零章 紡がれゆくあの過去
179/324

16-生きてるだけで恐いでしょう?-

すみません。今回は分かりにくいかもしれません。


 僕は夜の街に居た。


「・・・・・・」

 ホテルを見上げる。


 隼人はあれからずっと寝ている。いや、寝ているだけではないし、思考を積み重ねているが、しかしアイツには全て分かっているようだ。この事件の全容を理解しているようだ。


「面倒だ・・・・・・」

 俺はそう呟いてから、夜の街を静かに歩いた。

「・・・・・・」

 中心街は深夜でも騒がしい。むしろ時間を追うごとに騒ぎは酷くなっていく。

 しかしココ最近は余り問題は起こっていない。どうやら『義賊』の存在が見られているようだ。すなわち、正義の意思を持った賊・・・・・・今回の場合は暴走族らしい。

 犯罪者が治安を維持するような社会を持つ、危ない街。そんな街だからこそ、人はこいねがうのかもしれない。だから俺達のような、アクターが生まれるのかもしれない。実際に、俺、隼人、今回の犯人、そして『響』と『タケル』の5人が既に数えられている事になる。そしてそれ以外にもこの街、或いは世界に居るであろうことが容易に考えられる。汚い話で言えば、G様を1匹みたら、5匹は居ると思えというような考え方である。

 閑話休題。

 そういう街の中には、夜遅くでも未だ帰ろうとしていない中高生(俺が言えたことではない)や、義賊の存在を知ってか知らずか、暴れ狂うチンピラたち。あと、目立つところでは長く赤い髪の毛の少女とその周りに居る、数人の同級生くらいの男女が、激しく音楽を流して踊っている。

「事件が起きても何一つ変わらないな・・・・・・」

 俺はそう呟いてから空を見上げる。


 晴れている。

 こんな日に雷が落ちてくる。

 ・・・・・・ぞっとした。

「嘉島君じゃないか?」

 突然声を掛けられた。

「双葉さん」

 あの刑事さんだった。

「どうかしたのかい?空を見上げて・・・・・・」

「雷が落ちてくることを想像してみました」

「どうだった?」

「ぞっとします」

「だよね」

 はは、と快活に笑った。

「考えないほうがいいよ。こういうのは。雷が落ちる原因もよく分からないけれど、何がおきても危険であることには変わりないし」

「ですね」

「・・・・・・王城君は?」

「アイツなら今、ホテルの部屋で寝てますよ」

 最初は嘘をつこうと思ったが、正直に答えておく事にした。

「それにしても、君も王城君もおかしいね」

「何がですか?」

「どうせ君らアレだろ?犯人探ししているんだろ?」

「・・・・・・」

「隠さなくったっていいよ。少年の内はそういうことを考えがちだから。でもさ」

 双葉さんはそう言って続ける。

「そういう何か分からないものに首を突っ込むなんて、恐くないのかな?」

「アイツは分かりませんけど、俺はそうでもありません」

「・・・・・・どうして?」

「だって・・・・・・」

 俺は思い浮かべる。

「人なんて、生きてるだけで恐いでしょう?」

「・・・・・・」

「では失礼します」

 俺は言い切ってからホテルに入り込んだ。


 それから

「くく・・・・・・」

 と自分で笑う。

 俺は生きていると感じた事なんて無いのに。

 だって人は、死ぬまで生きていたかどうかなんて分からないんだから。



 僕の中では、人は生きてなんて居なくて、


 死んだ時に初めて、『生きた』という結果が生まれる。だから人は死ぬ直前まで自分の人生を評価できないし、1番恐い瞬間を『死』と感じるんだろう。


 という考え方なんです。それを嘉島君に流用しました。


 説明しましたけど、分かりにくいと思います。僕の勝手な想像ですから。

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