15-ただの直感-
その後、喫茶店で刑事のお2人さんとは別れた。俺と隼人も1度拠点に戻る事にした。
誰かに聞かれて良い話ではないので、個室型の部屋が適切だと判断して、拠点をホテルに移す事にした。事件の現場に戻る事はもうそこまで回数を重ねる事はないだろうと(隼人が)考えたのだ。
そしてホテルの一室を新たな拠点とすることにしたのだ。
中に入って、ボーイがルームサービスを運んできてから、僕は言った。
「・・・・・・果たしてスイートを取る必要があったのだろうか」
「一々気にしなくてもいいだろう。今更考えたって仕方ないし、君だってゆったりしたいだろう?」
「むしろ出来ないかもしれないけどな」
若干、緊張を感じる。
「それに」
隼人は言った。
「多分だけど、これからは部屋から出る必要もなくなるだろうし」
「え・・・・・・?」
「根拠はない。これは直感」
「・・・・・・」
何だろう。ただの直感なのに強い説得力を感じる。
「ところで」
隼人はルームサービスで頼んだ、紅茶を片手にソファーに座った状態で話を始めた。
「君は龍兵衛さんの手を握った時に『何を聞いた』?」
「え」
僕は対面のソファーに寝転んだ状態で、止まった。
「聞いたんだろう?『何か』を」
「・・・・・・なんで分かったんだ?」
「簡単さ」
隼人はそう言って紅茶を置き、脚を組む。
「リメンバー・リメインの深部に有るであろう能力・・・・・・『ロック』の発動後は火花が散るほどの衝撃が起きる。手同士の静電気・・・・・・つながりが過剰に拒絶するからだと言われている」
「ああ・・・・・・ってことはアレがロックなのか」
えーっと・・・・・・。
確か・・・・・・。
「ああ、思い出した。『配置:ロックを確認しました。解除コードの確認後、もう一度入力をお願い致します』だったな」
「配置・・・・・・ね」
隼人はそう呟いてから思考を始めた。
「なぁ、もう一度、ロックについて説明してくれよ」
「・・・・・・人が無意識に強制的に思考を中断する事で消えてしまったり、絶対にばれたくない事に関して全力で隠したり、忘れようとしている記憶や思考・・・・・・それを見つける事の出来る能力だよ」
「それこの間と同じじゃねーかよ」
「文句ばっかだなぁ。もう。僕の思考の邪魔はあまりしないでくれよ?」
隼人の態度に取り敢えず
「はいはい」
と適当に返事した。
「・・・・・・まあいいか」
隼人は組んでいた脚を組みなおす。
「人は少なからず隠し事をしている。また、精神的な傷・・・・・・トラウマだって抱えている。それはもう、当然の如く。人はその中でも特に隠したい内容がある。その時に君・・・・・・『リメンバー・リメイン』が触れたとき、深層心理が反応して、声が上がるのさ」
「深層心理・・・・・・」
「そうだね。言わばその声が『ロック』という能力だ。そして、そのロックのキーに合う言葉・・・・・・すなわち『キーワード』から、その隠された内容を推理するのさ」
それはつまり・・・・・・。
「今回の場合は『配置』というキーワードから推理すれば、答えに導けるってことか・・・・・・」
「そう。そしてその答えが『解除コード』だ。その解除コードを相手に向かって言い放つ事で、相手の隠していた内容が分かるってことさ」
「なるほど・・・・・・。根拠をすっ飛ばして、考えるべき内容が分かる上に、相手の答えまで分かるってことだな?」
「そんな感じさ・・・・・・って、あれ?」
隼人はそう言ってから、再思考を開始する。
「・・・・・・?」
「・・・・・・これはもしかしたら・・・・・・」
隼人はそう呟いて俺を見る。
「これはもしかしたら、相当面白い事件かもしれない」
何故か笑顔だった。