09-ありがとね-
「なるほど。確かにコレは、いいかもしれない」
「だろ?ホテルよりココの方が情報は集まりやすいぜ?王城のお堅いホテルなんかよりは、な」
「OK、ココを拠点にしよう」
王城はそう言って、部屋のパソコンをつけて寝転がった。
隼人が王城グループの経営する、お偉い方々しかこなさそうなホテルに入ろうとしたときに俺はある1つの案を思い浮かんだ。
「ココの事は、ここをよく知っている人に頼ったほうがよくないか?」
と。
このホテルで情報は集まりそうにないし、何より移動が面倒だ。ならばもっと楽に、しかも身を隠しやすいところにするべきじゃないだろうか。と考えたのだ。
そこで俺が選んだのは、事件の起こった3つ(最初の事件と、俺と隼人の事件)の場所の丁度中心あたりに当る場所・・・・・・ネットカフェだった。
「ここなら寝るのにそんなに金は掛からないし、パソコンで情報も集められる上に、あんなホテルに集まる人よりは『晴れた日に雷が落ちる』っていう噂を信じている奴が多いと思うぜ。その辺りから情報も引き出せるだろ?」
「一石で幾つもの鳥を手に入れれそうだね」
「そういうことだ」
俺はそう言ってから隼人と同じように寝転がる。ダブルの広い部屋を取ったので、広さは十分だ。
「で、これからどうするんだ?隼人」
「そうだね。1回僕は仮眠をとろうと思う。君もそうしたほうがいい」
「いや、俺は気絶した時に寝れているから大丈夫だ」
「そうか・・・・・・。そうなると君も暇だろう。宿題でもすればいい」
「いや、持ってきてねぇよ」
「自由研究くらいできるだろ?統計系の、ね」
そう言って隼人はネットを立ち上げて、ツイッターのようなチャット系の画面を開く。
「『晴れた日に雷が落ちるって知っていますか』」
言いながらその文章を打っていく。
「しばらくすれば、これに何らかの反応があると思うよ。これで自由研究も出来る。『人間の【噂】に対する反応の統計的実験』とかね」
そういいながら、隼人は横になった。
「隼人はそんなことまで思いつくのか・・・・・・」
俺はそう言ってからパソコンの画面とにらめっこする。
すると、
「ところで、何でさっきから僕のことを『隼人』って呼ぶんだ?」
と質問してきた。
「は?」
俺は振り向いて聞く。隼人は目を瞑っており、既に眠っているようにも見える。
「ちょっと前まで、『王城』だっただろ?」
「ああ・・・・・・いや、だってさ」
俺はそう言って1度言葉を整える。
「だって、お前、何か王城気に入ってないみたいだし」
「・・・・・・」
「嫌な事をされるのは嫌だろ?だったら、お前は王城を感じる前に『隼人』っていう1人の人間であればいいんだよ」
「・・・・・・ああそうかい。ありがとね」
隼人は今度こそそう言って眠りについた。
・・・・・・ん!?
俺は思わず振り向く。
「・・・・・・いや」
コイツ、今「ありがとう」って言ったのか・・・・・・?
普通にプライドの高い奴だと思っていたのに・・・・・・。
まぁいいや。俺は俺の仕事をするだけだ。
表面では自由研究。裏では調査だ。
コイツが寝ている間に俺の出来る事をしよう。