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丸く収まったこの世界  作者: 榊屋
番外編 前置きが必要なこの世界
163/324

15-※-

 その日、学校では卒業式があった。

 のは、まあ私にはどうでもよかった。


 正先輩に助けてもらってから、学校で、私が告白される事は無くなった。彼が先輩の存在を皆に教えたのだろう。

 女子や、親しい男子に正先輩について聞かれたけれど、そこまで嫌な気分にはならなかったし、写真を見せると「格好いい」と評判だった。自分のことのように嬉しかった。

 帰り道は珍しく1人だった。というのも、これから火水さんと響花さんと一緒にショッピングだから。

 3月14日。

 今日はホワイトデーだった。

 学校の登校中に

「彼ら・・・・・・返す気あるのかしら?」

「いやー・・・・・・最悪忘れてるよね・・・・・・」

 と2人は話していた。

 どうしてだろう、と思った。

 自分の好きな人くらいは信じないのだろうか。

 少なくとも正先輩は女性にそんな態度は取らない。いつでも一生懸命だ。

 私以外にも同じ態度なのは、何故か嫌だけれど、それが男子だというのだから仕方が無い。


 私の願いは「正先輩と一緒に居たかった」という願いだった。

 初めて正先輩を見たのは、海馬家のパーティーだった。

 私が中学1年生の時だったと思う。まだ出来たばかりの会社だったけれど、資金繰りがとてもよくて一気に大企業に進歩したらしい。

 私の家は老舗の料理店なので、そこに御呼ばれしたらしい。

 私は普段そういうパーティーには出席しないのだが、ダンスパーティーという事もあり、出る事にした。別にダンスなら何でも出来たから。

 特に面白くも無いと思っていた。

 その時。

「アンタ誰」

 と声を掛けられた。

「・・・・・・」

「見たところ同級生くらいか」

「・・・・・・」

「あー・・・・・・一応返事してくれるか?」

「常盤雅です」

「雅か。風情があるな・・・・・・。ダンスとか得意なほうか?」

「貴方は?」

「ああ、俺は海馬正だ。よろしくな」

 一目惚れではなかった。

 むしろ第一印象は嫌いだった。

 青い髪の毛で、手錠のペンダント。

 ふざけている。そう思った。

「踊るか?」

「いえ」

「よし、行こう」

「は?」

 先輩はペンダントを外して、髪の毛と服装を整える。

 そして右手を出した。

「御手をどうぞ」

 瞬間的に紳士になった。身長がそこらの男子より大きいことにも気付いて、男らしく見えた。

 それからのダンスも長かったはずの時間を短く感じた。


 その後は、2人で紅茶を飲んでいた。

「んー、あんまり作法を知らなかったけれど、案外上手くできたな」

「知らなかったんですか?」

「ああ、俺は運がいいから、何でも勘で出来るんだよ」

「勘ですか・・・・・・」

「てか、何で敬語なんだよ」

「え」

 突然の質問に驚く。

「お前、同級生なんだろ?じゃ、敬語なんか使うなって」

「昔からの癖ですから」

「昔からって・・・・・・」

「うちではそういう仕来りが厳しくて・・・・・・小学校に入るときにはそういう癖が身についていたんです」

「ああ、そう・・・・・・」

 先輩はそう言って、その場は落ち着いた。

 その後、

「連絡先教えてくれよ」

 と言われた。

「今度は別の日に会おうぜ。こういう張り詰めた空間以外の場所でさ」

「・・・・・・はい!」

 で。

 私はそのまま抱きついた。

 周りには誰も居なかったが、先輩は驚いて、そのまま倒れた。

「お前・・・・・・想定外だよ・・・・・・」

 そう呟いた。

 それから、何度か会うことがあり、私はそのときに「正先輩と一緒に居たい」という願いが増幅していった。

 それはいつからか「一生一緒に居たい」になった。

 いつまでも、一緒に居たい。来世もその次も。

 輪廻のごとく。いつまでもめぐり続けたい。

 めぐって、めぐって。

 いつまでもこの世界を回り続けていたいと。



「聞いてる?雅」

 響花さんがそう言った。

「え、あ、はい」

 いつの間に呼称が呼び捨てになったのかは分からないけれど、友達に近づいてきたような気がする。

「だから、あの人たちは返す気はあるのかって」

「はぁ・・・・・・」

「雅はどう思うの?」

 火水さんがそう聞く。

「・・・・・・自分の恋人くらい、信じてみたらどうですか?」

「「え・・・・・・」」

「私は信じていますから」

 私はそう言った。

 満面の笑みだったと思う。

 私は玄関の扉を開けた。

 14話の帰ってくる直前ですよ。


 題名は、『こめじるし』⇒『繰り返す』⇒『巡る』という意味です。

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