13-卒業-
過去編終了後の話の最初です。
すなわち、ややこしい話です。
それは突然だった。
3月に入り、高校入試が一週間後と迫っていた。
「まさか・・・・・・ここまで絶望的とは・・・・・・」
隼人が俺と音河と雅と海馬を見た。
「彼氏が馬鹿というのは、何というか・・・・・・自分のことのようで悲しいわね」
「・・・・・・うるさいよ。何だよ、連立方程式って。こんなの習ってねーよ」
俺はそう言って歯向かう。
「まぁ、海馬君は最悪、適当にやってたら答えは合うみたいだけど・・・・・・」
「理論とか嫌なんだよ。俺は。まだ、記号問題のほうが楽だっての」
つーかてめーは記号は満点だろうが。
ずるいっつーの!
「雅くんも頭の回転は速いから、応用は何とかなるみたいだし・・・・・・。数学は公式を覚えて、英語は文法を覚えていこう。で、問題は君らだよ」
俺と音河を睨む。
「・・・・・・OK。これからは、完全態勢だ。僕が響花を担当して、ヒスイ君は嘉島を担当してくれ」
「待てよ」
止める。
「俺は隼人が相手がいい」
「君の考えは分かっている。僕相手なら、わからなければすぐに聞けばいいからだろう?」
・・・・・・ばれてましたか。
「君は精神的に追い詰められてなさすぎる。君はストレスで強くなる男だと信じているよ」
「いや、それは・・・・・・」
「君は精神的に追い詰められてなさすぎる。君はダメージで強くなる男だと信じているよ」
「俺はそんなサイヤ人的な男じゃない」
「君は精神的に追い詰められてなさすぎる。君はMだと信じているよ」
「死ね」
という会話を済ませて。
突然、海馬が吹っ飛んだ。
そして、そのまま壁にぶつかる。
「何だ!?」
「気にするな。一瞬だ」
男が居た。
「音速を感じろ」
男はそう呟くと、彼の速度に遅れてきたかのような風が窓を割りながら突っ込んできた。
突っ込んできた。
そう表現するに相応しい、弾丸のような連発の風。
「ぐ・・・!」
体を貫きはしないものの、ガスガンの連打されている痛みを感じる。
テーブルやソファーがずり動く。
「・・・・・・うむ、やはり気絶はしない」
男はそのまま、仁王立ちの姿勢になった。
「お前・・・・・・なんだ!?」
海馬は立ち上がって言った。
「『必然的偶然』はこんなところでも発動するのか・・・・・・。予想外には対応できないはずだが、こんなことまでまさか予測していたのか」
「!!」
知っている・・・・・・?
コイツは単に能力を使って、自分のために生きている人間じゃない!?
しかも、海馬のような新能力でさえも・・・・・・!!
「貴方は一体何なんですか・・・・・・?」
隼人が聞く。
「『希望の崩壊』だ」
彼はそういって俺を見る。
「うむ・・・・・・折角、気道閃には『キラー・ミラー』を授けたんだが・・・・・・意味が無かったか。まあ、記憶をなくす前に奪ったから、能力は0になっていたということだろう。しかし、それでもお前の力は計り知れないな、『残留思念』」
「!?」
残留思念・・・・・・それは、俺のアクターの日本語名だ・・・・・・。
いや、まて。
それより先に・・・・・・!
「キラー・ミラーって・・・・・・!?」
「ああ、お前らはアイツを知らないのか。アイツは元仲間のXだ。あいつ自身の記憶の中には、俺達仲間は殺した事になっているから、あいつ自身を知っているのは俺達だけだろう」
淡々と男は話す。
「しかし、『超脳力』と『残留思念』がコンビを組むとは・・・・・・、それは最強になるだろうな。『残留思念』では出来ない推理を『超脳力』がして、戦闘方面を『残留思念』に任せると・・・・・・」
虎郷が動いた。
そのまま、拳を突き出す。
「焦るな、『未来予想図』。俺の話を聞け。いや、聞くな。音速で理解しろ」
そう言って、またも男は消えるような速度で移動する。
「ん?ああ、そういえば『未来予想図』では無く、『悪夢の夢』だったな。いやそんなことはどうでもいいのか」
男は俺達の真ん中辺りに立った。わざわざ囲まれたのか・・・・・・。
「貴方の能力、見抜きました」
「ん?そうか、『赤い靴』は頭も言いのか。だから、『奇想天外予想外』なのだったな。いいだろう、聞いてやる」
男はそう言って雅を睨む。
「貴方の能力は音速です。単純にそれだけです」
「ああ、そう見えるのも当然だ。お前らには俺が分かっていないはずだからな」
まるで、雅がそう答えるのを知っているかのような速度でそう答えて笑う。
違うという事か・・・・・・!?
「俺の能力は教えん。しかし、音速という概念はいいのかもしれんが・・・・・・しかし『感情と戦争の演奏』は、俺から何も感じていないはずだ。それはつまり、そういうことだ」
男はそう言ってから、
俺と肩を組む。
「!」
まただ。いつの間にか移動している。
「俺とお前は鏡だぜ。『残留思念』」
「鏡・・・・・・!?」
「似て非なるものってことさ」
と言って、男はそこに招待状のような封筒を投げた。
「お前らを高校に招待する。それが俺達との戦いの始まりだ」
男はそう言って、また消えた。
ふと見てみると、机やソファーの位置も戻っており、窓も何事も無かったかのように戻り、俺達の体も元通りだった。
「な・・・・・・なんだったんだ・・・・・・」
「隼人どうする?」
「・・・・・・はっきり言って先が見えない戦いになるような気がする」
隼人はそう言って、ソファに座る。
「だな・・・・・・」
俺は頷いて、隼人の座っているソファーの端に座るか立つかの間ぐらいの姿勢で立つ。
「ですが、私はここで諦めたくありません」
「それに向こうから諦めるとも思えねーぜ?」
雅はソファの前に座り込み、海馬はソファの背もたれに背中を預けて立つ。
「どうするの?隼人」
いいながら、音河が隼人の横に座る。
「罠かもしれないけれど・・・・・・どうする?」
虎郷は言って俺を背後に置いて、俺と同じ場所に座る。
「決まっている」
隼人は顔を上げた。
「絶対に彼に追いついてみせる。彼が一体何者か・・・・・・敵かどうかも分からないけど、それでも絶対負けない」
さぁ、始めていかなければならない。
これからの未来を。