12-真実は『恋』-
題名で心当たりのある人は、僕の作品をよく読んでくれている人です。
俺は走った。
家に向かって。
自分のしたことを反省しながら。
「まただ・・・・・・」
俺は最低だ・・・・・・!
家について、玄関に立つ。
そしてドアに手を掛けて、
「・・・・・・」
・・・・・・。
・・・・・・どうする?
俺・・・・・・なんて言えばいいんだ?
「・・・・・・知るか」
誰に言うでもなく、僕はそう呟いてから、扉を開け放つ。
こうなったら、何でもいいや。多分、何か思いつくだろう。
「虎郷!」
俺はリビングの扉を開いた。
「・・・・・・」
虎郷は、突然の来訪で、息が上がっている俺を見て目を丸くした。
「あ・・・・・・えっと・・・・・・」
言葉が全く出てこない。テンパって、頭が真っ白だ。
「・・・・・・何か飲む?」
冷静に虎郷はそう言うと、特に何も無かったかのようにキッチンのほうへ向かった。
「・・・・・・ください」
一応意思表示をしてから、俺はソファに座った。
俺の前に紅茶を置いて、そのまま隣に座った。そして自分の分のカップに口をつけた。
「・・・・・・・・・・・・」
あぁ・・・・・・。語彙力のなかったことを後悔した。
「知らなかったわ」
虎郷から言葉を紡ぎ始めた。
「貴方の気持ち」
「・・・・・・そうか」
「気付いてあげられなかったことは、謝るわ」
「あ、いや・・・・・・」
先に謝られてしまった。
「・・・・・・でも、どうして貴方が怒っているのかは分からないの」
「あ・・・・・・っと・・・・・・」
さっきから俺はほとんど会話という会話をしていない。口から言葉が出てこないのだ。
「・・・・・・1ヵ月前に・・・・・・街でお前と一緒に男子が歩いていたって同級生から聞いたんだよ」
「・・・・・・」
「それで・・・・・・何というか・・・・・・やっぱ虎郷には虎郷の恋愛があるんだろうなって、納得しようとしたけど・・・・・・それでも何か、こう・・・・・・許せないというか・・・・・・さびしくなったというか・・・・・・よく分からないけれど、思っちゃって・・・・・・」
言葉になっているのかなっていないのか、俺には分からないが、それでも話し続ける。
「それで、虎郷の前に立ったら・・・・・・分からなくなって・・・・・・。虎郷が誰かと付き合っているっていうのが・・・・・・嫌になったから・・・・・・いや」
いや違う。
そうじゃなくて。
「そんな風に嫉妬していた自分が小さいと思って・・・・・・最低だと思って・・・・・・その時に木好さんが入ってくるような気分になって・・・・・・それがまた嫌になった・・・・・・。だから、虎郷とはあんまり関わらないようにしたんだ」
「・・・・・・そう」
虎郷はそう言って、もう一度自分のカップに口をつけた。
「でも、今日、鉋さんに会ったんだ・・・・・・それで聞いた」
「・・・・・・あぁ・・・・・・それって」
「ああ。1ヵ月前に一緒に歩いていたのは、鉋さんだったんだろ?」
そう。
俺達から見たら、年齢差が有ると考える事が出来るが、傍から見ればそう見えるのも頷ける。
そういうことだったのだ。
「そんで・・・・・・今、謝ろうと思って、走って帰ってきたんだ」
そうだ。俺は謝ろうと思ったんだ。
「ごめん」
俺はようやくその言葉を言えた。先に謝られてしまったので、決まりは悪かったけれど。
「・・・・・・」
虎郷は黙って立ち上がると、キッチンの方へ向かっていった。
そして帰ってくると箱を持っていた。
「・・・・・・これ」
「あぁ・・・・・・バレンタインの・・・・・・」
悲しいなぁ・・・・・・、やっぱりこの日は最高の日にはならない。
好きな人にもバレンタインのチョコしか貰えないのだから。
そう思っていると
「違うわ」
と虎郷は言った。
「え・・・・・・」
「そんなことしたら、貴方かわいそうじゃない。今日元さんからかなり前に聞いたのよ」
そう言って、その箱を両手持ちした。
「誕生日おめでとう」
・・・・・・そう。
俺がこの日を嫌いな理由は、これだ。
バレンタインの物として渡される。そして誕生日に貰ったそれらのお返しをしなくてはならない。
この日を祝ってくれるのは、家族だけだ。
知っているのは家族だけだと思っていた・・・・・・のに。
「あ」
頭に昨日の今日元さんが浮かんだ。
『楽しみしとけ』って・・・・・・これのことか・・・・・・。
何て格好いいことをしてくれるんだ。あの人は。
「?」
「・・・・・・虎郷、ありがとう」
「どういたしまして」
虎郷はそう言ってさらに
「紅茶冷めるわよ」
と言って、自分の分を飲み干した。
「あ、あぁ・・・・・・」
俺は自分のに手を伸ばした。
「・・・・・・」
そして、戻して、虎郷に向き直る。
「虎郷」
「・・・・・・?」
「好きです。付き合ってください」
そう言った。
その時。
「あ」
「お」
「はは」
「え」
4人が帰ってきた。
「・・・・・・!!」
「こんなシチュエーションに遭遇できるとは、運がよかったよ」
海馬はそう言って、買い物袋を食事用のテーブルの上に置いた。
「俺は自分の運の悪さを恨む・・・・・・」
ああ、最悪だ。
「よかったね、火水!」
音河はそう言って虎郷の横に座った。
「ええ」
「これで、何かいい感じの6人になりましたね!」
雅は嬉しそうに言った。
「響花・・・・・・。やっぱり、動けたんだ・・・・・・」
何故かやつれた様子の隼人はそう言ってから、同じように買い物袋を机の上に置いた。
「・・・・・・何でそんな買い物してんだ?」
「はぁ?今日が何の日か忘れたのかよ」
そう言って、海馬は俺を見た。
「お前の誕生日だろうが」
「え・・・・・・」
「やるよー、誕生会」
ああ。
俺は恵まれた環境に居る。
久しぶりに涙腺をノックされた。
こうして、色々有りはしたものの、俺達は更に結束を固めた。
そうそう。
2月14日は、一生の最高の日になりました。
第一章にありましたよね?真実は『愛』。
それをもじったんです。気付いていただけたでしょうか?