11-白と黒の挟間で今日も-
ま、流れ的には。
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廃工場。
それは、海馬が雅のために奮闘した、あの廃工場だった。
「まさか振ってくれるとは思わなかったよ」
音河を見て、男が言う。
「お高く止まりやがって、女王にでもなったつもりかよ」
「・・・・・・」
音河は拘束されていた。未だ、目に見える怪我は無いものの、衣服に乱れと汚れがある。
その周りを5人の男子が囲んでいた。
「・・・・・・で、どうする?謝るの?付き合うか?」
「・・・・・・」
ドゴ!
と、爪先が音河の腹部入った。
「か・・・・・・ぁ・・・・・・」
空気が漏れて、音河はうずくまる。
「もう一度だけ、聞いてやるよ」
男は雅の髪を引っ張り上げ、
「付き合うか?付き合わないのか?」
「・・・・・・」
音河は睨む。
「・・・・・・死ね」
男は右膝を音河に向けてつきあげた。
『キングダム』
白い世界が包んでいく。
方眼用紙ではなく、それは真っ白な紙に包まれた空間だった。
「へぇ・・・・・・久しぶりに使ったら、どうも僕の世界も変わっていたみたいだね」
以前、壊されて、戻っていないその鋼の扉を踏みしめて男は入ってきた。
そしてそのまま白い世界が全てを支配する。
「な、何だ!?」
それは世界という概念とその男に関してだった。
金髪に制服で、且つ、乱れている服装。更に言えば、強い眼光。
「隼人!」
音河は叫ぶ。
「てめーら・・・・・・何してくれてんだ!!」
隼人はまるで飛ぶような速度で、間を詰めてきた。
「あ」
ドゴォォ!!
と、拳は最大限の強さで男を1人吹き飛ばす。
「な」
会話の間も無く、もう1人を蹴り飛ばした。
「てめぇ!」
1人が隼人の顔を殴る。
「死ね」
隼人はそのまま頭で、拳を押し返し、さらに髪を掴んで、膝蹴りで顔面を潰す。
「お前ら舐めてんじゃねーぞ」
隼人の言葉は乱れに乱れて、拳は更に暴れる。
そして残り2人も難なく、吹き飛ばした。
『解除』
白い世界は今までのように崩れるのではなく、フェードアウトするように消えていった。
「・・・・・・隼人」
音河が呼ぶ。
「ゴメン・・・・・・僕の所為で・・・・・・」
「いや、大丈夫だけど」
「でも嬉しい」
隼人はそう言って音河の縄を解いた。
「響花は、他人の目より僕を選んでくれたんだから」
「・・・・・・うん」
縄を解いて、音河に手を伸ばす。
「帰ろう」
「・・・・・・動けない」
「え・・・・・・、キングダムでダメージは完治させたはずだけど・・・・・・」
「動けない」
「・・・・・・ま、いいか」
隼人はそう言って、音河を背負う。
「あ、思ったより軽い。ちゃんと飯食ってる?」
「昨日は食べてない・・・・・・あれ?何時から食べてないっけ?」
「そうだ。チョコくれない?」
「え・・・・・・」
「昨日作ってたんだろ?」
「・・・・・・うん」
音河はそう言って、口を閉じた。
「あれ?響花?」
「・・・・・・」
「・・・・・・寝ちゃってる」
隼人はその顔を見て、にこやかに笑った。