10-それが、『運』命だから-
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夕日は沈み、月明かりが道を照らしていた。
その時、雅は帰り道だった。それについて行くように1人の男が居た。
「いいじゃん、常盤、付き合えって」
「だから、私は嫌です」
「何でだよー、お前誰とも付き合ってないんだろ?」
「付き合ってますよ」
「じゃあ、誰だよ?」
「他校の男子です」
「嘘つくなって!学校でもあんまり対人関係を築かないお前が、他校の男子と付き合うわけ無いじゃん?」
そんな偏見に基づいて嘘だと言われても・・・・・・。
と雅は思う反面、それを否定できない事も痛い事実では有った。
喋り方上、距離を感じさせてしまうようで、仲良くしていただいているが、友達と言える人は数えられるほどしか居なかった。それと同時に、その喋り方がアニメやマンガのキャラクターのようで、男子受けしているのも嫌な事実であったのだ。
「あ、今日、バレンタインデーだろ?チョコくれよ」
「貴方の分はありません」
「そんなこと言ってぇ!」
男は雅の鞄を剥ぎ取る。
「あ!」
犯罪行為だ。間違いなく。
「やめてください!」
「あったー」
男は鞄の中から1つの箱を取り出した。
「貰うぜー。今日はこれで良いやー」
高らか箱を上げた男は言った。何が良いのだろうか
「ダメです!それは――」
「俺んだ」
その箱を、何の苦も無く、普通に取った。
「え・・・・・・!」
でけええええ!!
男はそれを見て思った。
「返せ。俺のなんだよ」
「あ・・・・・・え・・・・・・お、お前何だよ」
それでも、男は強く出る。
「海馬正だ」
「だから何なんだよ!」
男は引っ張るようにその箱を強く持った。
が、その瞬間箱のパッケージのみが破れて、地面にしりもちをついた。
「運が悪かったな」
海馬はそう言って雅の横に立った。
「雅、これ貰うぞ」
「え・・・・・・あ、はい」
「ん」
そう言って海馬は雅の手を握った。
「・・・・・・お前・・・・・・常盤の何だ」
男はそう言って立つ。
「このチョコも雅も俺のだ。雅は俺の嫁だ」
「・・・・・・っざけんなぁぁ!」
男は海馬を殴ろうと拳を握った。
「ふざけてない。俺は雅が好きだ」
そう言って、海馬はそのまま拳を振るってカウンターで対処した。
民家のブロック塀に背中を打ち付けて、男は倒れた。
「雅を好きになったのは、運が・・・・・・」
そこまで言って、海馬は「いや」といって、雅から手を離して歩いて近づいて、見下ろした。
「ひぃ・・・・・・」
「お前が悪かったな!」
吐き捨てるようにそう言ってから、その状態で男を1度蹴った。
男は頭をブロック塀にぶつけて、そのまま倒れた。
「・・・・・・帰るぞ」
「あ・・・・・・、あの正先輩。ご」「ごめんなさい」
海馬は雅の発言を遮ってそう言った。
「・・・・・・」
「・・・・・・はい」
そう言って雅と海馬はもう一度手を握って歩き出した。
「でも、どうしていつものセリフで吐き捨てて去らなかったんですか?」
「雅を恐がらせたのがムカついた」
「・・・・・・」
雅はそこでにこやかに笑った。海馬はその顔を見て頬をかいた。
月明かりが2人の踊り手にスポットライトを当てていた。
このシチュエーションは海馬君の決め台詞を作ってから、考えていたものです。
「てめぇが悪い」です。