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丸く収まったこの世界  作者: 榊屋
番外編 前置きが必要なこの世界
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09-バレンタインデー-

 ま、そういうことっす。

 2月14日。


 この日は誰でもご存知の「バレンタインデー」だ。

 そしてそれは俺に限っては、最悪の日として迎えられる。



 俺と海馬と隼人は、一緒に学校に行った。

「・・・・・・」

 自分の下駄箱に着く。

 既に3個入っていた。

「モテモテですね、嘉島さぁん」

 海馬がニヤニヤ笑いながら見てくる。

「うらやましいか?」

「別に。100個貰っても嬉しくないだろう?特定の人からの1個が大切なんだぜ」

 海馬は言いながら下駄箱を開ける。

「うぉ!1個入ってる!やりぃ!」

「3秒前の自分殴って来い」

 俺はそう言い放ってから、隼人の方を見る。

「・・・・・・隼人」

 下駄箱が既に役目を果たしていない。

「・・・・・・気付かなかった振りってのは」「ダメだろ」

 隼人の提案を速攻で否定する。

「・・・・・・はぁ」

 隼人は溜め息をついて、鞄の中に詰めていく。



 どうも俺達3人は、この学校でも指折りの「いけめん」なのだそうだ。麺類の一種だろうか?

 というのは冗談で、嬉しい事実である。が、それでもこの日だけは嫌いなのだ。


「嘉島ー、義理チョコやるよー」

 という、誰にでも優しい女子類と話してチョコをもらえるという点や

「か・・・・・・嘉島君」

「ん?」

「・・・・・・コレ・・・・・・」

 と、普段は話さない女子とも話せるという嬉しいこともあるのだが。

「・・・・・・バレンタインの・・・・・・」

「・・・・・・ありがとう」

 どうも、俺はこの日を好きになれない。

 別に好きでもない人から貰っても、その人の期待には応えられないという点が表向きの理由なのだ。俺はそれが本質としてありたいくらいだが、それは俺がこの日を好きにならない理由というよりは、バレンタインデーという日本体への批評に過ぎないのだ。

 裏の理由がある。しかし、それは俺の小ささを示すのだ。

 だからこそ、この日が嫌いなのかもしれない。


 そんなわけで放課後の教室。

「・・・・・・10個」

「・・・・・・4個」

「・・・・・・・・・・・・じゅ・・・・・・12?」

「「嘘付けええええええ!!」」

 俺と海馬は同時に隼人に向かって叫んだ。

 隼人はどこから持ってきたのかも分からない、1袋の紙袋一杯のチョコレートを抱えていた。

「12なわけねーだろ!!お前、何でそんな貰ってんだよ!音河に向かって強い事全く言えないじゃん!」

「見ろぉ!俺は4個。嘉島は10個だ。何だ?お前、50個くらい?」

「いいじゃん!女子から4個でも十分だろう!?普通は1個貰うことすら厳しい男子社会でそんだけ貰っただけいいと思いなよ!」

「ほー!お前は、そんな悲しい男子社会でうらやましくも50個と!?舐めんなよ!俺なんか、誰にでもあげてる女子から貰った義理チョコ3個と下駄箱の無名の1個だっつーの!」


 それから隼人を2人係でボコボコにし(ようとしたが返り討ちにあっ)たあと、俺は帰ろうとしたのだが、

「海馬、今日も遠回りか?」

「ていうか・・・・・・時間稼ぎか?」

「隼人は?」

「帰宅る」

 

 その時間は既に7時だった。

「・・・・・・どうすんだよ」

「何が?」

「謝ったらいいだろ?」

「・・・・・・僕はわるくない」

「じゃあ、『謝れ』って言いにいけよ。お前は悪くないんだろ?」

「・・・・・・」

「それができないってことは何処かで、自分に非があることを分かってんだろ?」

「・・・・・・それは君にも言えるだろ?」

「言えないよ。だって、全面的に俺が悪いから」

 俺はそう言ってから、歩き続ける。

「よーぉぉぉっす!!」

 凄く元気な声がうしろからした途端、体を前に向かって倒されるように、肩を組んできた男が居た。

「あ」

「げ」

「うぃーっす」

 鉋さんだった。隼人の父親だ。しかし見た目の年齢では俺達とそう変わらないので友達に見られるぐらいだろう。

「お?何だ、隼人。お前めっちゃ貰ってんじゃん」

「うるせ。帰れ」

「だが、全盛期の俺には勝てない。俺はリムジンバスの後ろに入れて帰ったくらいだ」

 と鉋さんはそう言って、ニヤリと笑った。

「キリン。帰れ。動物園へ」

「そう言うなよ。俺、お前の親父だぜ?お前の仲間を見るのは俺の心眼だ」

「もういい・・・・・・この人会話成立しない」

「それにしても、最近はよくお前らに会う。1か月前に火水さんと会ったのを皮切りに、この間は響花ちゃんで、雅ちゃんだ。ああ、さっき、何か考え事をしながら正君も通り去っていったなぁ」

「で、隼人、奏明くん。一体、何に落ち込んでるんだ?」

 鉋さんはそう言って俺を見た。

「え・・・・・・?」

「ほとんど同じ内容で悩んでるな・・・・・・、何だ!恋愛か。そのくらいは誰でも悩むものだ。そう、アレは俺が高校三年生のことだった。それが今の妻との出会」

「うるせーってんだ!」

 隼人はキャラを覆して、鉋さんを睨んだ。

「・・・・・・何で、悩みが分かったんですか?」

「俺のアクターだ。『パラサイト・シンキング』っていう奴。他人の心を食い物にして、思考を開始する。空気とかでも喰う。ともかく、物事の流れに対して敏感な脳だ」

 ニヤリと鉋さんは笑った。


「ああ、そうそう。隼人。急いだほうがいいぜ。お前の悩みの種はお前の所為で、成長しちまったらしい」

「え・・・・・・」

「予定ではそろそろメールが届くそうだ。親父が言ってたよ」

 鉋さんの父・・・・・・椎名さんか。椎名さんも能力者なのか・・・・・・。

 どうも、この世界にはそういうのは案外溢れかかっているのかもしれない。

「!」

 本当に隼人の携帯が震えた。

「・・・・・・!?」

 隼人はそのメールを見て、驚いた。

「どうした!?」

「・・・・・・今日元さんから・・・・・・」

 と文面を見せる。

「!!」

 『監視カメラで見たんだが、音河が危険だ。音河が振った男子がキレて、数人のメンバーで連れ去られた。今、街外れに向かっている映像が見えた』

「・・・・・・行ってくる!!」

 隼人はそう叫んで走り出した。

「俺も行く!」

「来るな!コレは僕の問題だ!!」

 隼人は尚もそう叫んで、走り去っていった。


「はは!隼人も面白いなぁ。自分は自分でしか助けられないと思ってんのかねぇ?」

「・・・・・・」

「ああ、奏明君の問題も解決しようかね?」

「え・・・・・・?」

「・・・・・・あ?・・・・・・うん、あれ?これは・・・・・・」

 独り言のように呟き続けた、鉋さんは、最終的に

「はははははは!!」

 と笑った。

「あー・・・・・・面白いな、お前らは」

「え・・・・・・?」

「あのな、君のそれは」






「え?」

 モテモテですね。彼ら。いや、うらやましいよね。

 主人公補正ですよねー。


 あ、僕は最高で4個です。地味に自慢!!

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