05-天秤の釣り合い-
帰り道。
隼人と海馬は「気まずいから時間潰して帰る」そうだ。それなら俺だってそうしたいくらいだ。
「はぁ・・・・・・」
先ほどの話を頭の中に思い浮かべる。
「・・・・・・はぁ」
二度目の溜め息。
すると、後ろから
「何か悪い事でもあったのか?」
と声を掛けられた。
「・・・・・・東先輩」
本屋へ行った後の帰り道のようで、本屋の名前が入った紙袋を持っていた。
「溜め息1回に幸せが1つ逃げていくらしいぜ?」
「夏休み以降で、既に10000は超えてるよ」
「あっそ。で?何かあったのか?」
「あー・・・・・・別に、なんでもない」
俺はそう言って、話を打ち切ろうと思ったけど、
「東先輩は」
と口走っていた。
「ん?」
「今日元さんのどこが好きなんですか?」
「何だかんだでほとんど完璧に出来るところ。けど、方向音痴っていう、俺がカバーできるところが抜けているところがかわいいと思う。あと、ミステリアスで、印象としては大人の女子感じる。成人にもなっていないのにな」
恥ずかしげも無く、詰まることなくそう言った。
「・・・・・・何?」
「何で簡単に言えるんだ?」
「いや、好きな人の好きなところの1つや2つ、何時尋ねられても答えられないと・・・・・・って」
東先輩は、そこで思いついたような顔をする。
「虎郷か」
「・・・・・・あの、俺ってそんなわかりやすい?」
「いいや、別に。単純に、あのメンバーで空いてるのは虎郷だけだったから」
東先輩はそう言ってから、笑った。
「大丈夫だって、虎郷はお前と一緒にやっていけるから。失敗のある恋愛なんて無い。俺はそう思ってるぜ?」
「それは無いぜ」
「人を好きになった事を、失敗だと思うなってことさ」
東先輩はそう言って、途中で立ち止まった。
「じゃあ、俺はこれから今日元に会いに行くから」
「・・・・・・どうして苗字なんだ?」
「は?」
東先輩は止まる。
「どうして『終』って呼ばないんですか?」
「・・・・・・ああ、それは――」
少し思案したような顔をして、
「わかんね」
と答えた。
本当に分からないようだ。
そして東先輩は靴裏に小さな車輪をつけて、
「そんなもんだよ」
と言って、ローラーブレードの要領で走り去っていった。こんな舗装されていないアスファルトの上をよくもまぁ、ローラーブレードなんかで走れるもんだな。
と、このタイミングで携帯電話が震えた。
「・・・・・・」
文面。
『鶏肉買ってきて』
勝って来てじゃないな。そして虎郷だった。
「・・・・・・無理だ」
東先輩の発言と今日、同級生から聞いた話を天秤に乗せる。
・・・・・・やっぱりなぁ・・・・・・。
俺は簡単に割り切れなかった。
本来入れる予定の無かった話。
東先輩と今日元さんが余り語られていなかったので。
ちなみに2人は付き合っていませんが、お互いに好きです。それを知ってます。
前回から書かれていない、同級生のセリフは次回です。