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丸く収まったこの世界  作者: 榊屋
番外編 前置きが必要なこの世界
151/324

03-他人の目-


 ゴメン、まじゴメン。


 これ【恋愛】だわ。見たくない人は見なくてもいいけど、展開についていけなくなるかも!


「大変な事になりそうです」

 偶然、全員が同じタイミングで帰ってきて、制服から着替えた後、昼食を取る事になって、その時に雅が言ったのだ。

「大変って?」

 隼人がオムライス(本日の戦利品である卵)を食べながら言う。

「いえ、少し色々有りまして」

 雅はそう言って、話を打ち切ろうとした。恐らく、女子にだけ相談したかった事を無意識に口に出していたのだろう。しかし、

「もしかして告白のことか?」

 と俺が(冷静に考えると無頓着に)言い放ってしまった。

 カタンと。

 海馬と雅のスプーンが机に落ちて、音を鳴らす。

「あ」

 しまった。簡単に言っていいことではなかったか。

 その証拠に虎郷の目が俺を射るように見ている。音河は目を白黒させている。

「えー・・・・・・っと」

「雅。どういうことか説明しろ」

 海馬が雅を睨む。

「あの・・・・・・えっと」

「彼女、昨日告白されたそうよ」

 虎郷が答えた。

「虎郷さん!?」

「いいのよ。どうせいつかはばれる事じゃない」

 と淡白に雅に応対する。

「そうなのか?」

 海馬が雅を見る。

「はい・・・・・・。でも断ったんです」

「そう・・・・・・か」

 そして安堵した表情になった。いや、安心するタイミングじゃないぞ。

「それで、大変というのは何があったんだい?」

 と隼人が訊く。そうそう、それだよ。

「その男子がしつこいんです。断ったのに、一緒に帰ろうとしたり、メアド訊いてきたり・・・・・・」

「俺に任せろ」

 海馬が立ち上がる。

「絶対ぶっ潰す!」

 勢いあまってチキンライスが口から散布し、俺の顔に張り付く。

 ああ、青春しているなぁ。だが、食べながら喋るのはいかがなものかと。

「・・・・・・ダメですよ」

 雅は珍しく小さな声で言う。

「え?」

 海馬はまさかの否定に対応できずに少しうろたえる。

「私は、学校で目立ちたくないんです。こんな髪色だからそれだけで凄く目立つのに・・・・・・」

「だからって・・・・・・お前は困ってるんだろ?」

「正先輩には関係有りません・・・・・・」

 ギリ。

 と、海馬の歯軋りが聞こえた。

「あ、いやそうじゃなくて」

 それに気付いた雅は必死に弁解を試みるが、

「そうかよ」

 海馬は呟いてからリビングを飛び出し、玄関から外に出て行った。



 雅はそれから少し落ち込んだ面持ちで部屋へと戻っていった。

 食器類を片付けて、俺達はソファーでくつろぐ。

「ケンカ・・・・・・しちゃったね」

 音河がそう言って、苦笑する。

「海馬君が怒るのは珍しいね。別に敵対している相手でもないのに」

「それに弁解も聞こうとはしなかったわね。怒り心頭状態ね」

「まぁ・・・・・・関係無いって言われちゃー・・・・・・怒るよな」

 そこで少しの沈黙が流れた。


「響花も告白されたのか?」

 隼人は思い出したように訊く。・・・・・・待て。隼人の前で、音河の話はしていなかったはず・・・・・・。

「どして?」

「頬の緩みが、ぎこちない。響花が何か後ろめたい事を抱えている時の表情だ。ミヤビ君のときの過剰な反応とかから想定してみても、ただ、この現状に対応できていないだけじゃぁないっぽいから」

 こんなときにも冷静分析か・・・・・・。

「まぁ、いつものことだけどね」

 音河は笑う。

「あっそ。返事したの?」

「・・・・・・」

「まだなのか。いつもならさっさとするのに」

 あ、隼人が少し怒ってる。

 これは能力ではなく約半年で見つけた隼人の特徴である。淡々と相手を追い詰めていく動作をする。それは相手を犯罪者と同様に見ているから出来る行為だと、俺は考えている。

「王城君。触れすぎよ」

「僕と響花の問題だよ」

「男子は男子で悩みなさい。女子は女子で考えるから」

「・・・・・・分かったよ」

 隼人は言って、ソファーに深く座り、背もたれに身を預けた。

 あ。これは。

「・・・・・・寝たぜ」

「寝たわね」

 まるで死んだような勢いで睡眠状態に体を持ち込む癖がある。いつも気分を張り詰めているからだ。


「・・・・・・隼人、超怒ってるね」

「ああ」

 俺と音河の会話に、

「そうなの?」 

 と虎郷が入ってくる。

「・・・・・・私、部屋戻るよ」

 音河はリビングから出て、そのまま部屋へと入っていった。


「ケンカ2連続かよ・・・・・・」

「どうする?私達もケンカしてみる?」

「っていいながらファイティングポーズをとるな。俺、死ぬ」

「そう。つまらないわね」

 虎郷は手をおろす。

「どうして音河は返事してないんだ?」

 俺は疑問を口にする。

「さぁ。私にはさっぱり」

「・・・・・・女子ってやっぱり世間の目とか気にするのか?」

「世間というか・・・・・・。まぁ、クラスでの立ち位置くらいは」

「俺推理」

 宣言してから言う。

「音河は、結構告られている。そのたび、音河は断っているはず。だから、男子に高飛車とか言われたり、女子に嫉妬されたりする事があって、簡単に断れる状態じゃない・・・・・・とか」

「・・・・・・ま、ご想像にお任せするけれど」

 正解ってことか。違う時は違うって言うから。

「だとすれば王城君は気付いているはずよね・・・・・・。そのくらいの事なら」

「隼人は・・・・・・まぁ、アレだよ。うん、男子にしか分からない世界だ」

「・・・・・・そう。そういう言い方するなら、貴方に女子の話はしないわ」

「いいよ。別に。どうせ教えてくれるんだから」

 俺はそう言って、リビングから出た。


 そして部屋に入り、その扉に背中を預けて座り込む。

「・・・・・・だよな、隼人」

 そんな事は関係ないんだよ。君は自分のものであって欲しい。だから、他の女子の目とか男子の目とか気にせずに、自分のそばにいて欲しいんだ。


 頭では分かっていても、簡単に受け入れられないんだよな。間違っている事も分かっているんだよな。




 そして、次の日を迎えるのだが。

 その日、俺と虎郷も話さなくなってしまう。


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