後日談-右手と左手の法則-
おっと、これを忘れちゃいけねーぜ。
後日談です。
大晦日の夕方。
俺達は未だ大掃除に励んでいた。
「どうして昨日やっておかなかったんだろうね」
「他人事みたいに言うな」
「いや、昨日やらなかった僕ら自身に疑問なのさ」
隼人はそう言い訳してから、トイレとバスルームの掃除を始めた。
身長の低い(165.3)隼人は、身長の関係ないところを掃除している。海馬は178くらいあるので、天井の掃除ということになっている。
雅が掃除し始めると危険なことになる(実際、リビングの掃除をさせたら2倍くらい汚くなった。実はまだ大掃除が終わっていないのもその所為だったりする)ので、庭の落ち葉を拾わせている。彼女の能力なら簡単に集められるだろう。
音河は2階の掃除。使用していない部屋ばかりなので、利用方法を考える次いでに、たまっている埃や残されている家具を整理するとか。
虎郷は1番しんどい、キッチンの掃除。しかしてきぱきと済ませて、今は大掃除全指揮者になっている。
故に、俺は残ったリビングの掃除を担当している。
「・・・・・・雅は酷い事をしてくれたものだ」
ソファーがひっくり返り、じゅうたんは捲りあがっている。テーブルも倒れており、唯一無事なものと言えば、テレビくらいのものだ。
何と不器用なのだろう。ただ、怪我に対する包帯等を巻く作業はとても上手である。
「嘉島君、早くしてくれる?」
後ろから声を掛けられた。
「・・・・・・」
虎郷だった。
「だったら手伝ってくれよ」
「無理。私は今から年越し蕎麦の材料を買いに行きます。9時までに全ての作業を終わらせてね」
そう言ってからリビングの扉を開けて出て行った。
「・・・・・・はぁ」
「嘉島!」
海馬がやってきた。
「そこの蛍光灯も掃除しなくちゃなんねーんだ。さっさとしてくれ」
「分かったよ・・・・・・。手伝ってくれ」
面倒だけれど、まぁやるしかないか・・・・・・。
「終わった・・・・・・」
8時ごろ、ようやくリビングの掃除を完了させた。
「申し訳ありませんでした・・・・・・」
雅が責任を感じているようで、少し落ち込みながら謝った。
「ああ、別にいいさ。雅のおかげで、普段掃除しないような場所とかも掃除できたし」
例えば、ソファーの裏とかね。
「そうですか・・・・・・」
今度は安堵の表情を見せる。分かりやすいなー・・・・・・。
「年越し蕎麦。食べるわよ」
虎郷が6つほど御椀をお盆の上に置いて持ってきた。
「今年は忙しかった・・・・・・」
俺はリビング用テーブル型のコタツに脚を入れてから言った。
「夏休みから動きっぱなしだったからね」
隼人は言いながら、蕎麦をすする。
「そういえば王城」
海馬が隼人を見てから言う。
「お前の親父さんたちの前で言っていた『右手と左手の法則』って奴・・・・・・何なんだ?」
「ん?ああ、仲間である証だよ」
「・・・・・・?」
海馬は不思議そうに首をかしげる。
「隼人、分かりやすくお願い」
音河が言う。雅と虎郷も見つめる。
「・・・・・・僕らが握手するときは普通は、『右手と右手』か『左手と左手』だろ?でもこの法則は違う」
そう言って、隣の音河の手を握る。
「僕が右手で、隣の人と手を繋いだ時、それは『右手と左手』になる。自然、並ぶ形になるんだ」
「ああ・・・・・・それで」
納得だ。
「仲間である印だよ。そしてこれは、繋がりは永遠であることを意味する。例えば、ココに居る6人で『右手と左手』を繋いでも、誰かの左手と右手側に人が居ない。でもそれは、そこにさらに『仲間』が来るって意味なのさ。さらに、端っこの2人が手を繋げば丸くなれる。丸く収められるってこと」
「そんなこと即興で考えたんですか?」
雅が隼人に質問する。
「そりゃあそうさ。僕は王城だからね」
と、隼人はそれで十分というように言った。
本当に隼人にしか分からない理論だよなー・・・・・・。
と。
思って、目覚めた時には正月だった。
「・・・・・・カウントダウンするの忘れた」
本当にきれいに終わらない。
丸く収められないな。
裏話ー。
この『右手と左手の法則』は、僕が手書きしていた初期設定時の、この作品の題名でした。
仲間といつまでもつながっているっていう意味の題名でしたね。
番外編です!