57-創造-
前話とこの話の「東」と「今日元」への呼び捨てはわざとです。
今回は長いかもよ。
「・・・・・・君は・・・・・・何なんだ」
それでもなお、彼はそう質問してくる。
「俺はお前だ。そして皆だ」
「・・・・・・」
隼人は睨む。
「お前は何を睨んでいる」
「君だ」
「そう。嘉島奏明だ。でも、それだけじゃない」
「それだけだ。僕が戦っているのはそれだけで十分なんだ」
「違う」
俺は否定して続ける。
「お前が睨んでいるのは、虎郷だ。海馬だ。雅だ。音河だ。東だ。今日元だ。そしてお前だ」
「違う」
「違わない。俺は背負う。お前みたいに支配していない」
「・・・・・・支配する?」
隼人はそう言って眉間のしわを深くする。
「僕はそんなことしていない。受け入れている」
「受け入れる?何を?」
俺は尋ね続ける。
「僕の王宮へ、だ」
「だったら見せてみろ。お前のルールを」
俺は両手を広げて受け入れる構えを取る。
「キングダム!」
黒い方眼用紙が包んでいく。
「・・・・・・」
「これが僕の王宮だ」
「・・・・・・黒いな」
俺は呟く。
「これがお前の国なのか」
「そうだ。そしてこの国では民に傷をつけることは無い。だから僕が指定した人間が傷つくことはない」
「・・・・・・」
「全員を守るために僕が作り上げた王宮だ」
「・・・・・・違う」
俺は呟く。
「お前はこもったんだ。この王宮に」
「・・・・・・は?」
「出て行けなかったんだろ?誰にも守ってもらえるはず無かったんだろ?だからお前はこの王宮で過ごす事にしたんだろ?」
「何言って――」
「お前はこの国で何を守ろうとしているんだ?」
「・・・・・・皆を・・・・・・守るために」
「違う!」
俺は叫んで、もう一度言う。
「お前は支配しようとしているだけだ!全てを!誰にも邪魔されないために!」
「違う・・・・・・!僕は、皆が傷つかない平和を」
「お前がしているのは支配だ!そしてこの国はお前のたった一つの居場所だ!王城グループとしてでもなく、王城の御曹司でもない。もう2度と、俺達のところに戻れないから、自分のために作り上げた場所なんだよ!」
「・・・・・・」
「ここは、お前を守っている部屋に過ぎない!王宮や国には程遠いんだよ!!」
俺は走り出す。隼人との距離を一気に縮める。
俺は拳を突き出した。
「!」
隼人の頬に当る。
俺に衝撃が来るが、恐らく隼人には何のダメージも無い。
「・・・・・・だったら」
隼人が呟く。
「だったら、僕の居場所はどこにある!?」
隼人は俺の顔面を殴り飛ばす。
当然、痛い。
俺は地面で1度バウンドしてから、横たわる。
「僕は王城を継がなければならない。でも僕は王城の御曹司という肩書きを捨てたい。だって僕の目標は」
「王城を越える・・・・・・だろ」
俺は言いながら立ち上がる。痛みはまぁまぁ酷い。
「そうだ。だから、僕はこの場所を創り上げた」
隼人は言いながら歩いてくる。
「僕は・・・・・・僕で居たかった。僕は僕でありたかった」
「知ってる。だから、夏休みに家を飛び出してまで街を歩いていたんだ」
「そうだ」
隼人は歩みを止めて、俺の前に立った。
俺が自分を捜していたように。
彼も存在を確かめていたのだ。
「居場所くらい・・・・・・いつでも創ってやれるよ」
「・・・・・・」
「俺達はお前から、返せないほどの物を貰ってる」
俺は笑う。そして続ける。
「お前のおかげで、何人救われたと思ってんだよ」
「・・・・・・」
「なぁ。お前は何が欲しいんだ」
俺は隼人を見る。
隼人も顔を上げる。
「虎郷は自分の心を解き放った」
「海馬は自分の価値を知った」
「音河は自分の居場所を得た」
「雅は自分の命を救われた」
「東先輩は自分の想いに気付いた」
「今日元さんは自分自身を悟った」
「俺は初めての仲間をもらった」
「お前は何がほしいんだ」
王城を越えるのが目標だったはずだ。それを諦めるのか。
「・・・・・・僕は・・・・・・居場所が欲しいんだ」
「だったら、そういえばいいんだよ。俺達は仲間なんだから」
「・・・・・・仲間・・・・・・」
「ああ。背負う必要なんか無い。支配する必要なんか無い。俺達全員、何もかも全部ひっくるめて、お前なんだ」
「・・・・・・」
「皆は・・・・・・僕なのか」
「そうだ。居場所なんか、本当は創るまでも無い」
俺は笑う。
「お前が自分を見てから、皆を振り返ったなら、そこにお前の『居場所』があるから」
「・・・・・・そうか」
隼人も笑う。
「帰るぞ。隼人」
俺は手を差し伸べる。
「・・・・・・うん」
隼人はその手を固く握った。
王宮は崩れる。
嵐は過ぎる。
雪は舞い降りる。
語るねー。
こういうのって作者によるし、実際語ってたら殴りたくなるよねー。