13-助ける意味-
僕が、お気に入りにしている『蛇豆』さんの作品は、
何というか、現実的なフィクションという感じです。
とても、おもしろいので是非是非閲覧してみてください。
あ、1話1話が、とてつもなく短いです。
以上、榊乃幽也ぷれぜんつ、CMでした。
「で、これからどうするつもりだ?」
木好さんは、潤んだ瞳を袖でぬぐってから、左手を構えてそう言った。
「俺はお前らを殺して生きて見せるぜ」
左手は炎を纏う。
なるほど、一気に燃やすより、殴って動けなくしてから燃やそうと言う事らしい。
「あ、ダメだ。もうキングダムは終わる」
「あぁ、そうなのか」
「基本的には推理するだけのものだから。思考能力と相手との対話をしやすくするためのものさ。周りの時間も止まってるわけじゃないしね。後10分もすれば図書館は崩れ落ちるだろう。あ、嘉島君は倒れといたほうがいいよ。痛覚も復活するから」
「・・・了解」
いつもの事だが、
なんというか、古傷がないから良く分からないけど、「古傷が痛む」みたいな感覚になるのだ。
「戻れ」
パチンッという音を指パッチンで鳴らして、
世界はそれを合図に戻った。
瞬きしたら、世界が戻っていたという認識でいいだろう。
「・・・いてぇ・・・」
俺は、またも動けなくなった。
虎郷は泣きじゃくって顔を伏せて座り込んでいる。
「ぶっ殺すぞ」
「僕は見た目以上に強いよ」
言ってから1秒と立たず、衝突となった。
木好さんは消えて、隼人の前に現れて右拳で鳩尾を狙ってきた。
隼人はその拳を両方の二の腕で挟むという方法でガードする。
「すげぇなぁ・・・。瞬間移動すらも、見極める『脳』なのか?」
「いやいや・・・。お褒めに預かり光栄ですが、僕のは脳の伝達速度が速いというだけですから。反射神経の伝達速度の問題ですよ。
「へぇ・・・。面白いな!!」
木好さんは、炎を纏った左腕を構えた。そして、思い切りその手を振りかぶった。
「ヤバイな」
二の腕を離した。
が、今度は木好さんの右手が、隼人の右の二の腕を掴む。
「燃えろ!!」
左手の炎が纏う状態から、発射する状態に変わる。
「拒否」
掴まれた状態で、体のみを反って避ける。
「今のも脳神経か?」
「勘だよ」
隼人は、体を戻す反動で、木好さんの顔面に頭突きという手法をとる。
「ぐッ!!」
「もう一回!」
今度は、二の腕を掴んでいる木好さんの右手の肘を膝で外側に折る(ひざかっくんの肘バージョン)。
その所為で一気に縮まった距離を利用してもう一度頭突きをする。
それで、木好さんの右手は離れた。
「それも、能力ってか・・・?」
苦しそうにそう言った。
「『頭脳』力です」
「うぜぇ!!」
炎を纏った左腕で隼人の腹を狙う。
「何度やっても同じ・・・」
消える。ギリギリで手首を内側に曲げて炎を発射して消えた。
「後ろだ」
反応速度はもちろん間に合うはずが無い。
木好さんの左手は、背中にヒットした。服が燃える。皮膚が焼け爛れている。
一瞬でここまでとは、火力は本当にやばいな。
「・・・まだまだぁ!」
「そうこないとな!!」
「なぁ」
俺は倒れたまま虎郷に話しかけた。
「…………」
「何で隼人はお前を助けるんだと思う?」
「…………」
虎郷は黙ったままだけど俺は構わず続ける。
「アイツはお前と一緒で決まった未来ってのが気に入らないんだ」
「…………」
「アイツは王城グループの跡取りとして・・・王としての教育を受け、風格を持ち、頭脳を手に入れた」
「・・・・・・・・・」
「でも、アイツは王城グループを継ごうとはしない。何故だか分かるか?」
当然、返事するはずも無い。
「アイツは、お前と一緒だったのさ。決まりきった未来なんかつまらないって。アイツは、基本的に誰かに協力したり、助けたりする事は無い。でも、アイツが誰かを助けるっていうのなら、それはつまり、ソイツを仲間だと思っているっていう証拠だ」
「・・・・・・・・・」
「まぁ、心配するな。お前が死にそうになっても、殺されそうになっても、死にたいと思っても、壊したいと思っても、消えたいって思っても、全てから・・・お前の心からでさえも守ってみせる。俺達が」
「・・・・・・・・・・・そんなボロボロで言われても、何の説得力も無いわね」
虎郷はそう言って立ち上がった。
「まぁ・・・それもそうだな」
「そうよ」
「・・・俺たちがお前を助ける方法は1つしかない。お前自身の心を苦しみから解き放つ事だ」
「・・・・・・・・・どういうこと?」
「そもそも助けるなんていった割には、何をどう助ければいいか、正直よく分かってなかった。でも今分かったよ。俺たちは、過去に縛られているお前の心から、お前自身を助けなきゃならない。そのためには、お前の思いを・・・お前の想いを解き放つ事だ」
「つまり、私自身が一也と戦わなければならないという事ね」
そういうことだ。
俺がそう言おうと思ったときに、
ドガッシャ!
木好さんが図書館の壁に激突した。
衝撃で上から、一本の鉄骨が落ちてくる。
「ヒスイ君。さぁ、やってごらん」
隼人は身を翻し、こちらに歩いてきた。
「恋愛もトラウマも火事も家族も全てを分かった上で、忘れるのではなく、自らを解き放つんだ。僕らと来ても大丈夫だよ。君が僕らと一緒に来て不幸な未来は見ていないだろう」
「・・・嘉島くんと同じようなことを言うのね」
「まぁ、僕らは息ぴったりの相棒だからね」
「おう」
ま、ここは肯定しておこうか。
虎郷は、歩き出した。
赤く泣き腫らしたままの目だったけれど、それでも一歩ずつ、自分の気持ちを踏みしめて。
「一也」
「・・・・・・火水。お前は俺のものにはならないのか」
「残念だけど、私はそういうものではないわ」
「・・・・・・・・・そうか」
「でも、私はあなたを愛して後悔はしていない」
「・・・・・・・・・そうか」
一つ一つの言葉が木好さんの涙腺をノックする。
「ありがとう」
虎郷のその言葉に、木好さんは
「・・・・・・・・・またな」
そう言って。
木好さんの目から涙が零れた。
倒れたままの木好さんの、腹の中心に、虎郷の拳がヒットする。
ほぼ同時に図書館は轟音を鳴らしながら、崩れ落ち始めた。
俺様クンの反論コーナー。
いわゆる世界観というものは人の考え方によって変わるもので、
現実的な、リアリティのある物語を主とし、超能力のようなものや、
何かに逸脱した、スキルなどを嫌うものも居る。
僕としては、そのような話も好きだが、
自分が書くという点において言うと、俺はスキルというものに頼るのが好きだ。
何というか、化物染みた人間でも、それは結局ただの人間で、
それなりの心を持ち、傷ついたり、仲間を持ったりというストーリーが
好きなのである。
そういう超能力のようなものが、残機 ∞ が最強とは限らない話が作りたい。
そういう能力者が主人公ならば、それより強い敵を作ればいい。
主人公も普通に傷つき、普通に泣き、普通に怒り、普通に笑う。
そういう物語にこそ意味があるのだろう。
そういう人間にも、越えられない壁は有ってそれこそ、それを一般人でもない
超能力者が越えるまでの物語を作りたい。
長くなってしまったし、キザだし、ウザいと思われたたり、かっこつけと言われてもいいが。
僕は、超能力者の物語に対する偏見を越えるのを目標にしたい。
落ちも無いくせに、長くて申し訳ない。
ただ、格好をつけたいわけではない事をご了承いただきたい。