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丸く収まったこの世界  作者: 榊屋
第五章 失って気づくこの世界
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49-幸運-

 なんとなく予想つきますよね?


 彼がどこと無く関わる話ですよ。

 男の目は怒りに満ちているというのが良く分かる。

 しかし・・・・・・異常だ。


「――って嘉島!?お前、背中!」

 海馬が嘉島の背を見て、叫んだ。

「え?・・・・・・あぁ、まぁ、到達していても何とかなんじゃねーのかぁあああっとぁ!?」

 嘉島がそんな状況ながら投げ飛ばされる。

「早く治せ!」

 海馬は音河のところに嘉島を投げた。

「やってみる」

 音河はそう呟いて、口を嘉島の傷に近づけた。

「ヒーリング・ボリューム」

 静かにそう言って、「コォー・・・・・・」という、静かな吐息とその音を傷に当てていく。

 嘉島の背中は少しずつながら治っていった。


「さて、こっちの処理はこっちでやらないとなぁ・・・・・・・」

 嘉島を放置して、海馬と虎郷と雅は、男のほうを見る。コイツが木好だろう。

「てめーら、殺すぞ。お前らも嘉島の仲間なんだろ?虎郷の仲間なんだろ?」

「それがわかってんなら、殺すの許すわけ無いだろ?」

「許しなんかいらねーよ。勝手に殺す!」

 木好は炎を右手から前方へと放出した。


「電気の次は炎ですか」

 冷静に雅が言ってから、しゃがみつつ避ける。

 電気ほど早くは無いので、避けるのは簡単なようだ。

 が。

「死ねぼけがぁぁぁぁぁぁああああ!!」

 木好の怒りの増幅と共鳴するように炎の勢いと温度、さらに大きさが変化する。


「こりゃ避ける避けないの問題じゃねーな・・・・・・」

 海馬はそう呟いてから構えた。

 木好が歩いた床は、ほとんど塗装は剥がれ落ちている。断熱材でも使われているのかは分からないが、恐らく王城グループの産業の賜物と言ったところだろう。

「消し炭にしてやる!」

 大きくなった炎をさっきと同様で、前方へと放出する。

「はぁ!」

 雅はその場で回転して風を生む。風と炎が衝突して、気流を生んだ。風が炎を包み込もうとしている。しかし、炎の勢いを弱まらせ、大きさを減らす事は出来たものの、変わることなく炎は真っ直ぐ雅の方向を目指す。雅は回転していたため、回避は出来ない。

「雅ィ!」

 海馬が叫びながら、雅の方向に向かって走り出す。炎のスピードと大きさは変わったため、雅の元へたどり着くことは出来るだろうが、そうすれば海馬が炎に直撃する事は免れないだろう。

「ダメです!正先輩!」

 それでも海馬は止まることなく、雅を抱き上げるように持ち上げてから炎を避けようとする。

「くッ・・・・・・!」

 炎は海馬の肩当りを完全に喰うように燃やすだろう。

 万事休す。



 そう思われた時。



 雨が降った。俺からすれば降らした事になるのだが。



 正確には雨ではなく『火災用スプリンクラー』なのだが。



『本当にビックリするくらい運がいいな、海馬』

 俺は海馬にそう語りかける。

 海馬は雅を抱き上げたまま、呆けるように立っていた。虎郷と音河は不思議そうな顔。嘉島の顔は「信じていました」といわんばかりの表情だった。



「待ってました・・・・・・今日元さん」

 嘉島は、俺の名前を呼んで笑った。



 本当は題名は『降雨』にする予定だったんですけどね。


 それだと、スプリンクラーの件がばれるので。


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