48-理由-
今回も語り部変更中。
大丈夫、これが誰かは明らかにする予定だから。
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海馬は本棚の中の本を投げる。
「無駄だ」
本は突如として磁力を持ち、元の本棚へと戻る。
その間に雅が走り込み、懐へと蹴りを飛ばす。
「効かねーって」
その雅へと磁力を移し、跳ね返す。
「ボイス・バースト!」
音河がすぐに声で攻撃する。
「あのなぁ・・・・・・」
右手を突き出して、その声の衝撃に当てて消す。
「俺の能力である、電気自体は常に体を纏ってるようなものなんだよ。だから、俺がちょっと念じて電気分解したり、磁力を付与するだけでいいんだよ」
「・・・・・・だから?」
海馬は睨む。
「だからぁ・・・・・・」
面倒くさそうに仙波は言う。
「お前らが勝てるわけねーんだよ。俺に不意打ちでもしない限りはな」
「・・・・・・だからなんだってんだよ」
海馬はそのまま睨み続ける。
「俺たちは戦い続けるぜ。どう足掻いてでもな。お前が電気を帯びていて、俺達が敵わない事が、戦わない理由にはならない」
「今なら生きて帰してやる。じゃないとお前らは負けるんだぜ?」
「負けることも戦わない理由にはならないよ」
今度は音河がそう言った。
「俺の力なら殺しちまうかもしれない。それでもいいってのかよ」
「死んでしまうことも・・・・・・戦わない理由にはなりません」
雅が言った。
海馬、音河、雅は3人全員で睨む。
「・・・・・・フッ」
仙波は笑うと
「天晴れだな」
と、ぱらぱらと拍手をし始めた。
「お前らが全力で来るっていうのなら、俺も全力で応対してやる。お前らの心意気は伝わったからな」
そう言った仙波は光った。
何の前触れも無く、仁王立ちのまま彼は光ったのだ。
「で・・・・・・電気・・・・・・」
「ああ。雷と同じものではない。俺自体のスピードはそこまで変わらないから。だが」
そう言って仙波は右手を伸ばす。
バチィィィイイイ!
と、激しい音を立てて、光が飛んでいく。
「電流を流すことが出来る。気をつけろ。俺は強いぞ」
「・・・・・・アンタが強い事も」
「戦わない理由にはならないんだろ?分かってるよ」
そう言って、両手を広げるような構えを取った。どこからでも掛かって来いというような、翼を広げるようなポーズだ。
「・・・・・・正先輩、コイルってどんな仕組みですか?」
「詳しくは忘れたが、棒のエナメル線を巻いて、電流流したら磁力が出来るって感じだ」
「・・・・・・でしたら、いい考えがあります」
「期待してるぜ、雅」
海馬はそういうと、走り出した。
「近接戦闘は得意じゃないんだけど!」
といいながら、拳を振るう。
「ああ。お前は得意そうではないな」
と仙波さんは呟いて、電流を海馬へと向ける。どうやら、電磁石を発生させる時には自分の纏っている電流を消さなければならないようだ。
そして、海馬は飛ばされた。
「大丈夫ですか?」
「ああ。それより、今のでなんか出来そうか?」
「十分です」
そう呟いてから雅は走り出す。
「ボイス・バースト!」
音河の声がさらに飛ばされる。
その声を背後に感じながら、雅は仙波に到達した。
「なるほど。俺を2つの方向から攻撃する事によって、電磁石でお前を止めるか、電気分解で衝撃波を止めるかという、最悪の2択をさせようとしているわけか。だが」
仙波は電流を雅に流す。
「お前を衝撃波に飛ばせばいいだけの話!」
磁力は雅へと移る。
しかし
「!?」
雅は飛ばされなかった。
そしてそのまま蹴りが仙波にヒットして、よろける。海馬は本棚を蹴って、本棚を倒しながら本を取り出す。
「しまった!」
急いで磁力を本棚に戻そうと仙波が試みるが、
「!!」
後ろから飛んで来た衝撃波が当りさらにそれを遮る。
「くそがぁ!!」
仙波はそれでも尚、立ち直って、電流を前方に飛ばす。
「く!」
「うわ!」
雅と音河は追撃を阻止されて、吹き飛ぶ。
「調子に乗るな!俺の力を甘く見るなよ!俺は――」
ドガァ!
と。
かなり鈍い音を立てて、仙波の後頭部に衝撃が走った。
仙波は思いきり床に前頭葉を打ち付けて、気絶した。
「よっし」
本を持った海馬だった。本の角で思いきり殴ったらしい。
「しまりの悪い、終わりだったけど、まぁいいよね」
音河が少し呼吸を乱しながら言った。
「で、雅は何したんだ?」
海馬が訊く。
「コイルは棒にエナメル線を巻いているんですよね?ということは、電流は回転しているはずです。だとすれば、それは私の十八番ですから」
つまり、向こうの電流の動きとは逆方向に、自分の「スパイラル」を発動したという事になるのだろう。
「・・・・・・本当に予想外な事をするよな・・・・・・お前は」
と海馬は呟いた。
ドガァ!!
と、今度は本棚が一気に崩れ落ちるように倒れた。
いや、それ以前に燃えている。
その炎と煙の中から、嘉島と虎郷がドッジボールの玉のような勢いで出てきた。
「嘉島!虎郷!」
「くっそ・・・・・・てっきり気絶したもんだと・・・・・・」
嘉島は海馬の方は見ずに呟く。
「ったく・・・・・・好き勝手やってくれやがるなぁおい!!」
体中に炎を纏った男がそこには立っていた。
ドッジボールの玉のような勢いって、伝わんのかな・・・・・・?