45-雷電-
今回は海馬たちの戦いです。
誰目線なのかは置いておきましょう。
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「嘉島!虎郷!」
海馬が叫ぶ。
「畜生・・・・・・!!」
海馬は本棚を蹴る。しかし、びくともしない。
「向こうの様子はどう!?」
音河が訊く。
「ダメだ。この本棚は向こう側と繋がっていないタイプの普通の本棚だ。本をのけても意味が無いから、恐らく物音が聞こえないほど密閉されている事になる。酸素は・・・・・・多分問題ないとは思うが」
海馬は冷静に答えた。
「彼らなら恐らく大丈夫でしょう。今は私達は私たち自身を心配すべきです」
雅はそう言ってから、目の前の仙波を見た。
「本当はもっとばらばらにする予定だったのに、こんなもんかよ」
と、仙波は呟いた。
「で?お前ら。俺とやるんだろ?」
仙波は両手を構えた。
「そうそう、お前らは酸素は大丈夫だって言ったな?まぁ、その通りだけど、向こうは炎を使うアクターだ。『フェノメノン』だな。だから酸素の使用量が多い。酸素は王城グループの発明した機械が生産し続けるんだけど、向こう側の木好が異常に炎を使ってたら、供給が間に合わないかもな。需要と供給のバランスは大切だからな」
「木好・・・・・・!?」
海馬が驚いて叫ぶ。
「それって虎郷の・・・・・・!?」
「まぁな。虎郷への未練を捨てきれないだろうって俺が推測して、脱走させて、見つけて、提案したら一発だった」
仙波がそこまで言った瞬間に、バンという大きな音が鳴った。
「!」
雅の右足が仙波の顔面に向かって伸びた。
「!?」
雅は瞬間的に、海馬と音河の元へと帰ってきた。
「残念。俺の能力だ」
すばらしく、勝ち誇った顔で言った。しかし
「今ので完全に分かりました。貴方の能力が」
雅はそれに向かって言い放った。
「貴方の能力は磁石です。あの本棚は金属ですから、それで止めているのでしょう?」
「・・・・・・へぇ。面白いな、お前。普通はそんなこと考えられないと思うけど」
「お褒めに預かり光栄です」
雅の発言と同時に、何かが目の前をよぎった。
まだ残っていた、仕切り以外の本棚だ。
「まぁ、磁石の力で床と本棚との磁力を逆にしたり、本棚同士の磁力を上げたりして引っ付けているわけだ。だからここの本棚は全て鉄製なんだよ。んで、攻撃が来た時は、俺と相手の磁力を逆にしたり、2人がかりとかなら、その2人の磁力を同じにすればいいってわけだ」
「それだけ分かれば簡単です。音河さん。お願いします」
「了解」
音河は返事をしてから、ギターを構える。
「ショッキング・スリング!」
ギターの弦が伸びて、そこに残っていた本棚全てに突き刺した。
「本棚を壊しても、貴方なら修復させて、壁にする。だから本棚の動きを止めました。これで貴方を守る盾はありません」
雅はそう言って仙波に指を差した。
「・・・・・・でも、俺にどうやって攻撃しても、意味は無いぜ?俺はそれの磁力を変える。どんなに多くてもだ。例え世界中の石が俺に向かってきても、俺は跳ね返せる」
逆に雅も指を差し返してきた
「そうです。だからものでは戦いません」
雅はそう言ってから、一歩下がった。
そして音河が深く呼吸をする。
「・・・・・・ボイス・バースト!」
音河はそう叫んだ。その『声』は空気を切り裂き、ラインを作って真っ直ぐ飛ぶ。
「音速の衝撃波か!」
仙波はそう叫んでから体の前に腕を交差させて組んで、防御態勢をを作る。しかし、手の平はこちらに向けている。
仙波にそれは衝突して――。
衝突して。
何も起こらない。
「・・・・・・残念だったな。俺には効かん」
「そんな・・・・・・」
雅は後ずさりする。
「ボイス・バースト!」
音河はもう一発声を放った。
「お前なら、これで気付くだろう?」
仙波は言いながらライン上に右手をかざした。
すると、
バリバリ!!
という、激しい音を立てた。
そして衝撃波のラインは消える。
「・・・・・・なんだ!?何が起きた?」
海馬が訊く。
「・・・・・・そうか・・・・・・電気分解・・・・・・」
雅が呟く。
「電気分解です」
雅はもう一度そう言った。
「電気分解?」
「ええ。彼の能力は磁石じゃなくて『電気』だったんです。彼の体からは電気が溢れていて、それを体の周りで回転させることによって、自分を『電磁石』にしたんです!」
「・・・・・・コイルってことかよ・・・・・・」
「そして空気を電気分解することで、衝撃波の通るべき道を強制的に排除した・・・・・・。それがあの人の能力です!」
雅はそう言った。
そして3人とも思った。
実体あるものは弾かれ、実体無きものは消される。
これは・・・・・・勝てない。
そう思った。
これ、サブタイトルで能力ばれるような気がしてきた。