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丸く収まったこの世界  作者: 榊屋
第五章 失って気づくこの世界
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43-分裂-

 人の細胞分裂ってどうすりゃいいのかねー。


 あれは微生物の特権かね?


 生物が全員アメーバだったら、世界平和につながるよ。


 ま、僕は人間で幸せだけど。


 皆はどう?今幸せかい?

 25階。


 そこは俺の受けた印象としては「資料室」が相応しかった。鉄製の本棚が幾つもある。ざっと数えても30くらい。

 どうしてこんな上の方の階にこんな部屋があるのだろう。まぁ、もちろん、俺達は階段だけを昇っていたから他の部屋を見ていないため、他にも同じようにこんな部屋が多数存在するだけなのかもしれない。あらゆる階におけば、その階の近くに居る人間の行動では楽かもしれない。

 けれど、そもそもエレベーターがあるのだ。だからわざわざ、俺達のように律儀に階段を昇ってくる必要も無いのだ。


「違和感・・・・・・だな」

 俺はそう呟いた。全員が黙って、同意を示す。

「それにしても・・・・・・ここどっかで見たような気がするな」

 俺がそう呟くと

「私もそんな気がするわ。でも、正確には思い出せない」

 と虎郷も答えた。


 その時だった。

「早いな」

 と前方から声が聞こえた。

 居たのは見知らぬ男。

「お前誰だ」

 失礼ながら海馬がいきなり言い放つ。

「お前らの目的、『仙波 周真』だ」

 発言と俺達どちらが早かっただろうか。

 俺の右足は仙波の腹部、雅の左足がくるぶしを狙う。

 

 パァン!

 と。

 俺の右足と雅の左足が交差し衝突した。もちろん、避けられたわけではない。俺達は方向転換したように、脚同士をぶつけた。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 俺達はその状況に対して、冷静に仙波を睨む。

「・・・・・・なんだ。お前ら。もう少し驚いたりしろよ。ビックリしないのか?」

「そんなの関係ない」

 俺は答えてから、雅と脚を外した。

 ・・・・・・思ったより固かった。強く引っ張らないと取れなかった。

 何しやがったんだ、コイツ。

「お前らも能力者って奴なんだろ?どんなのかは知らないけどな」

 仙波はそうおどけてから、本棚の前に立つ。


「ルールは簡単。俺が負けたらお前らの勝ちだ」

 そう言って、仙波が――いや、仙波ではなく、本棚が動き始めた。床を動くように。


「!?」

 本棚は俺達を襲いながら動き続ける。仙波の位置が不明になる。無駄に広い部屋だ。それを見越しての行動か・・・・・・。

 そんな事を思ってから、

「全員ばらけるな!コレは向こう側の作戦である確率が高い!」

 俺はそう叫んだ。

「どういう!?」

 音河が叫んで尋ねてくる。

「分からない。でも、そんな気がする」

「・・・・・・わかった!」

 音河は俺のあいまいな返事を信じてくれた。

 それにしても、さっきから俺も怪しい情報が多いな。どうなっているんだ。俺の脳は・・・・・・。


 その次の瞬間、波のように動き続けていた本棚が、規律正しく、並んだ。

「・・・・・・何をする気でしょうか」

 雅が呟いた。

 沈黙。

 そして次の瞬間。


 突然本棚が一斉に動き始めた。しかも先ほどの数倍の速さで。

「避けろぉ!!」

 俺は叫ぶと同時に、右側に避けた。音河、海馬、雅は左側へと避ける。すなわち、虎郷は俺と同じ側に避ける。

 本棚は、そこに真っ直ぐ並び、連なり、上に積まれていく。そして、左側と右側で完全に分裂された空間になった。さらに、本棚はまだまだ有り余っている。少なくともこちら側には。


「く・・・・・・合流しなおそう!」

「ええ」

 そう言ってから2人で1つの本棚を蹴り飛ばす。

「!?」

 びくともしない。

「そんな・・・・・・どうなっているんだ?」

 俺達が焦っていると、


「それは外れないだろうな。すげー硬くなっているから」

 男が現れた。仙波じゃない。

 そして・・・・・・。


 そして、そいつには見覚えがあった。そして、それで俺は思い出す。

 ここはあそこに似ているんだ。と。


 目の前に現れたのは木好さんだった。

「久しぶりだな。火水。あと、嘉島」

 

 虎郷の動きが止まる。

 そう、この空間はあの図書館にそっくりなんだ。

 虎郷が思いを解き放ち、燃え尽きたあの建物に。


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