12-真相は『愛』-
恋愛感情は感じた事はあっても、人と付き合うってのは良く分からない。
なんか、付き合ったことある奴を、見ると基本的に分かれていったような
気がする。
んん・・・。一概に恋愛は、いいともいえないのかな?
「・・・ちょっと遅かったかな?」
「嘘付け。お前そこで見てたろうが」
あまり大声で叫ぶ余裕も無いので取り合えず睨む。
「まぁ、気にしない方針で」
そう言って隼人は茶化して、木好さんを睨む。
その木好さんは立ち上がって、
「でお前は何なんだ?」
と睨み返してきた。
「ヒーロー」
真っ直ぐに隼人は言葉を返す。
「ふざけんなぁ!!」
と今にも飛びつきそうな勢いの木好さんに向かって、
「ロックオン、キーは『炎』」
隼人は言った。
意表をつかれた木好さんは驚きと疑問を掛け合わせたような何ともいえない顔をしている。
「キングダム。解除コードは『家の火事』」
言った瞬間だった。
空気が変わる。彼の能力『シンキング・キング』の真髄『キングダム』である。
能力の内容を説明しようと思う。今現在の場合、俺と隼人と虎郷と木好さん以外の人・物はこの世界に干渉しない。
原理的に言うと、隼人の王としての『威圧感』が、他の何かを感じられないようにしているらしい。
炎の熱さを感じたり、本棚の存在を目が認識する事も無い。
イメージとしては真黒な世界に、緑色で方眼用紙のような線が、壁と床に引かれているイメージだ。
「これは・・・何?」
虎郷が驚いている。
「俺の能力の1つの『キーポイント』つって、人の無意識に隠していることや、絶対に隠し通そうとする心を見破る能力だ。普通に隠しているくらいには簡単に気づけるけど、まあ無意識に隠しているのを見破る時に使うんだよ」
俺は、自然に立ち上がる。
「・・・大丈夫なの?」
「この世界では痛覚も無視できるからな」
「・・・続けてくれる?」
「ん?あぁ。で、それで嘘があるのを見破るためには、解除コードって言って、まぁいわゆる『キーワード』だよな。本当は俺がやるっきゃないんだけど・・・・・・能力に見合ってないくらいに俺は馬鹿だ」
「そうね」
「否定しろよ!!」
「いいから、続けなさい」
「・・・・・・・・・んで、隼人の能力は『最高の天才的な知能』なんだ。その力とこの空間『キングダム』を使えば簡単に終わるんだよ」
俺はそこで終わらせたつもりだったのに、その後
「だから僕とソウメイ君は名探偵コンビなんだよ」
隼人が勝手にそう言った。
「さて、始めるよ。虎郷」
「え・・・?」
「パーカーの男のこと、思い出してごらん」
「・・・・・・・・・!!」
虎郷が拒絶反応を始める。
「無駄だ」
木好さんがそう言って笑う。
「そいつは、過去の事は完全に忘れている」
そう続けて、余裕ぶって高笑いを始めた。
「・・・!!」
「虎郷!!」
俺が止めに入ろうとした。
「止めるな!!」
隼人が叫ぶ。さらに
「思い出せ!キーワードは『炎』だ!!」
「忘れるな!!あの日だ!!2年前!中学校に入りたての頃だ!!」
「君の家が燃えて、あの男が現れた日だ!!」
畳み掛けるように、虎郷に向かって叫び続ける。
「!!」
急に虎郷の震えが止まった。
「解除コード『家の火事』だ」
ココからが真実である。しかと耳に入れるように。
「まずは、この事件は2年前から始まっていた。彼女が忘れているのはその事件のことなんだけど、その事件は今回のような放火だったんだ」
「放火?」
「彼女の家が燃やされたのさ」
「燃やされた・・・。まさか、木好さんか!!」
木好さんは、すこしドヤ顔。
「ん?あぁ。うん。でもそんなことはどうでもいいのさ」
木好さんは、少しイラツキ。
「もちろん、犯人は捕まらなかったんだ。その事件で、両親共に亡くなってしまった」
家族のいない苦しみは重いもんだよね。
と、少し違う内容を繋げて隼人は木好さんを睨んだ。
「君にはわからないんだろうね」
「あぁ。わからん」
木好さんは嫌な笑顔で答えた。
俺は思わず殴りかかろうかと思った。おそらく隼人も。両親が死んだ虎郷も。
でも、隼人が作ったこの状況を崩すわけにはいかない。
「・・・さて、続けようか。彼女が、そうして両親の死んだ苦しみを感じていた時、中学校のやさしい先輩、木好さんが現れた。でもおかしいんだよ」
そう言って、不謹慎にも彼は笑う。
「彼女の周りに居た人は『木好一也』なんて人間知らないんだ」
「・・・・・・どういうこと?」
虎郷が聞いた。そりゃそうだ。幼馴染の存在を知らないなんてありえない。
「だから、幼馴染じゃないんだよ。君たちは」
「!!」
木好さんが顔色を変えた。
それはつまり・・・・・・。
「木好さんは、ヒスイ君の不安定な心の前に現れたんだ。人は心が不安定になると記憶に錯誤が起こるんだよ。まぁ、滅多にないケースだけどね」
「・・・って、事件を起こしたのは木好さんだろう。それなのに不安定な心の虎郷に優しい言葉をかけたってことなのか?」
「それは、動機が分かれば分かる事さ」
「その動機は?」
「で、その2年後、次の事件がおきたんだよ」
「・・・・・・」
ためてまで言いたいのか。全く困った相棒だ。
「その事件っていうのが、列車の爆破」
「・・・え?」
またも、虎郷の驚きだった。
「あの事件は、今回の事件と密接に関わっていたんだ」
「ああ。それは俺も見たからな」
「じゃあ、ちょっとその話をしてみてよ」
「ん?いや、木好さんが男に、電車の爆破を起こしたのはお前だろって言って、女のために金が必要だってゆすって、それで燃やされて・・・・ん?」
あれ、どういうことだ?
木好さんが、男に燃やされたんだとしたら、木好さんはココには居ない。
でも逆の立場なら木好さんは電車の爆破を起こした事になる。
あ、確か木好さんは電車の爆破の近くに行っ・・・て・・・た・・・。
気付いた。
「木好さんが、爆破犯だ」
俺は、冷静ではないがハッキリとそう言った。
「その通りだよ。俺は、家でゆったりしてると見せかけて、金のために裏でいろんなことをしてるんだ」
木好さんが答えた。
さっきのような、睨んでいるような感じではなく、俺たちに興味を抱いている感じだ。
「面白いな、お前ら。ただの探偵ごっこのガキ共だと思っていたよ」
「侵害だね。僕は王の称号を持つ男だよ」
本当にふてくされるように言う。
「まぁ話が脱線する前に戻しとこうか。これはソウメイ君の能力で分かったことだけど、ゆすってきたのは、今では死体になってしまった、ヒスイ君に過去を思い出させた、名前も分からないパーカーの男なんだよ」
ゆするという愚かな行為に対して怒っているんだろう。厳しい言い方である。
「そして、その男を燃やして、今こうなったってわけさ」
「・・・」
だまったまま、木好さんは拍手した。
「で、終わりじゃないよな?」
「一つ解明されてないわね」
「動機だな」
木好さん、虎郷、俺の順番である。
「動機はね。この事件が起きた真相と密接に関係しているんだよ」
そして、隼人は両手を胸に当てた。
「真相は『愛』だったんだよ」
「お見事だ」
もう一度そう言った隼人に木好さんは感嘆の声を上げた。
「俺は虎郷が好きだった」
「!!」
虎郷は驚く。
「虎郷もそうであったと思っていた。でも、俺と虎郷には、親とかそういう邪魔があった。だったら、それらを燃やしたいと思った。そのとき俺はこうなった」
「・・・何で?」
虎郷は―――
眼に涙をためていた。
「そんなことしなくても・・・・・・伝わっていたのに・・・」
「・・・そうかもしれないけど、でも、俺は心配だったんだよ。いつか、恋愛感情なんてものは消えてしまうんじゃないかって。現に今、お前は俺に恋愛感情は抱いていないだろう?」
「・・・・・・・・・・」
「俺はな、お前の親を殺して、お前とたった一つの存在になれたと思った。その時に、お前の能力も知って、お前と運命なんだと思った。でも、」
そこで、一度区切って、俺を見る。
「嘉島とか、そこのヒーローとか・・・お前は俺以外の男とも関係を持ち始めた。それに悩んで、嘉島を殺そうと思ったときだった。あの男が現れて思いついたんだ」
そして、木好さんも、眼を潤ませていった。
「俺が死んだ事になって、お前を殺せばお前は、一生俺の物になるんじゃないかって」
歪んだ愛情。
それが、今回の事件の引き金で、今回の事件の悪夢だったんだろう。
しかし、まだだ。
これからが本番なのだ。