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丸く収まったこの世界  作者: 榊屋
第五章 失って気づくこの世界
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40-人間-

 人間の定義は何だろう。


 どこにあるかも分からない、心があればいいのだろうか。


 誰かに思われればいいのだろうか。


 人間の活動における、働くべき器官があればいいのだろうか。


 人の形をしていればいいのだろうか。


 僕には分からない。一生掛けても。


 死んだ時に気付けるのかもしれないけれど、それはもう僕ではないから。


「アンタが・・・・・・魅陽・・・・・・?」

 俺はそう言った。

『ああ。そうだよ。なんだ、君らもか。どうして私をみたら皆驚愕するのかなぁ・・・・・・?』

 魅陽は言う。

 つまり。

 つまり、放送の声ではなく、この『機械』が『魅陽』なのか。


「・・・・・・あんた・・・・・・弟って・・・・・・?」

『隼人のことかい?そりゃそうさ。彼が生まれるのとほぼ同時に私は生まれたたんだから』

「生まれた・・・・・・?」

『うん。そうだよ。彼はどんどん成長していくけれど、私は成長っていうのは分からないんだよねー。隼人なんかもうすっかり大人だよ。でも私には子ども時代は無かったから、もう大人なのかな?』

「・・・・・・お前何言っているんだ?」

 俺ばかりが質問している。

『あー・・・・・・分からなくてもいいよ。私のことは理解できないから。できるはずないから。だって私は特別な生態だからねー』

 ・・・・・・。

 全員口を噤んでいる。

 俺でさえ分かっているんだ。皆気付いているに違いない。

 そう。



 彼女、魅陽は――王城魅陽・・・・は、自分を人間だと思い込んでいる。



 人間だと思い込み、それに合理的な理由をつけている。

 自分は皆とは違う生物なのだという・・・・・・自分への言い訳。

 無意識なイメージ。幻想。幻覚。


 ・・・・・・そうか。

 幻覚という彼女の能力が生まれた理由。

 それは『ミラー』だ。

 自分を人間だと思い込み、それで『無意識』願った願い。

 人間になりたいという願い。

 その幻想。


 それが彼女の能力を作り上げた。

 自分の思っている世界観を作り上げる。

 そして、彼女は自分の能力に気付いている。しかし、自分の存在には気付けいない。


「・・・・・・」

『あり?どうかしたのか?急激に元気をなくしたね』

「・・・・・・音河の発言でお前は幻覚を作り上げたのか?」

『ん?ああ、その話ね。そうだよ。まさか洞窟みたいな強い反響じゃないのに、隼人の彼女さんが気付いているとは思わなかったよ』

「まぁ、耳がいいのが音河の特徴だからな・・・・・・。ところで迷路は攻略って事でいいのか?」

『いいんじゃない?そもそも私はここを完備するだけで、動けないからねー。私の後ろに階段があるよ』

 魅陽はそう言った。


「おい、嘉島」

「・・・・・・なんだよ、海馬」

「何普通に話してんだよ、お前分かってんのか?」 

「ああ分かってるぜ?アイツは隼人の姉貴だ」

「・・・・・・嘉島」

「それが真実だ」

 俺はその判断にした。

 それが答えでいいのだ。

 

 彼女の考え方は美しい。

 でも正しくない。

 それは俺も同様に。

 彼女に『本当』を教えないことは、美しくはあっても正しくは無いのだ。

 どこかにそんなフレーズがあったのを覚えている。

 そしてそれは俺にとって、言い得て妙なのだ。


「魅陽さん。ここを通す事はできますか?」

 雅が訊く。

『どうだろう。私は自分の考えで行動できるようになっているから、私が何とかできると思うけれど・・・・・・』

 そう言って、少し黙った。

 そして次に出た音声は


『・・・・・・・ゴメン、ダメだ』

 だった。

『侵入者は全員消去だよ。ここまできてしまった以上は』

 その声を合図に、壁や機械本体から、あらゆる武器が出てくる。

 刀、銃、機関銃、マグナム、火炎放射器、ロケットランチャー・・・・・・

「!!」

 極めつけは大きな『手』だった。

 その『手』が、俺達を握りつぶそうとするように俺達を掴む。

 『手』には爆弾がついているようだ。


『ゴメンね。隼人の友達達。私は命令に従うように育てられてきたから』

 本当にかわいそうだというように、魅陽さんは言いながら、


 全ての武器を俺達に突きつけた。抵抗しても無駄ということか・・・・・・。


「・・・・・・マジかよ」

「く・・・・・・」

 海馬と雅は必死にもがくが外れるはずも無い。


「うわあああああああああああああああああああ!!」


 音河は叫んだ。


 そして、音河を締め付けていた手が、機械の作動する音と共に爆発した。





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