36-選択-
ちょっと海馬の話を区切りすぎたような気がします。
ま、海馬好きな人多いし。いっか。
「本当かよ、海馬。いつ知ったんだ?」
俺は少し疑いを持ちながら訊いた。
「厳密に言うと、俺が始めて缶に弾をヒットさせたときだ」
「で。どんな能力なんだよ」
「知らん。俺は何も知らずに言われたとおりやっていただけだ」
海馬はそう言った。
「だが、解明はできた。アイツは、『2択』において最強なんだよ」
「2択・・・・・・!?」
何言ってんだ。こいつ。というか言われた通りって・・・・・・!?
俺が不思議そうな顔をしていると、
「雅が教えてくれたんだよ」
「教えたって・・・・・・どうやって?」
「・・・・・・どうやってって・・・・・・」
海馬が悩む。
人吉はその顔を睨んでいる。
「・・・・・・どうやってだ?」
海馬はそう言って俺を見た。何か、逆に聞き返された。
「雅ー」
俺は雅に聞いてみる。
「私は何も。したのは音河さんです」
「?」
「音河さんのギターで、『声』を伝えました。彼女の力の進化です」
「進化・・・・・・!?」
何だ?ここにきて皆の力が進化している。何がおきているんだ・・・・・・!?
「嘉島?大丈夫?」
音河が俺を見てそう言った。
「あ、あぁ。ごめん」
俺は謝ってから、「続けてくれ」と促した。
「どうやら思いを伝えるという事を具体化したみたいだよ。音符を相手にぶつけると、その人と繋がれるって感じなんだ」
「へー。そうだったのか」
海馬が1番感心している。
「じゃあ、『2択』ってのは何なんだ?」
俺は今度こそ海馬に訊く。
「単純だ。2択だったら最強って訳さ」
「・・・・・・は?」
「つまり今回みたいに『右か左の缶を狙う』って時には最強なんだよ。ミリオネアで言えば『50:50』ってわけだ」
「それはお前の運すらも凌駕したって事なのか!?」
「まぁ、コイツの能力は『運』っていう概念じゃないからな。恐らく、決定事項なんだよ。50:50というのは、1+1=2という等式と同じって訳だ」
「そう・・・・・・なのか・・・・・・」
しかしだとすれば疑問がわいてくる。
「じゃあどうして勝てたんだ?」
「ああ。こいつに勝つためには、俺は『オーディエンス』と『テレフォン』を使ったんだよ」
オーディエンス・・・・・・つまり雅や音河のことか。そしてテレフォンは音河のギターか。
上手い表現をするものである。しかし。
「一向に伝わってこない」
「俺は雅の指示を音河のギターから聞いて、それを忠実に行った。それだけの話だ」
「具体的には?」
「コイツに3択目を与えた。例えば、俺が2つ同時に狙うことや自分が狙われることによって、避けなければならないかったり、缶の位置が移動することだったりで、2択という状況が乱されたんだ。恐らく、相手も自分と同じ状況じゃないといけなかったりするんだろうな」
そうか。
最初の2挺拳銃は、相手と状況を変えることで優位に立った。
次の人吉を狙った弾丸の意味は、相手に『避けなければならない』という3択目を作り上げた。少なくとも、そう思わせることに意味は有った。
そして最後に銃を投げたのは、缶が移動することによって『右と左』という選択の根本を変えて見せた。
だとしたら。
だとしたら、人吉はどう対応するんだろう。
「・・・・・・なーんだ。そこまでばれてんだ」
人吉はそう言って銃からトリガーを外した。
アンケートでもしてみようかな。