34-空缶-
「・・・・・・!?」
海馬本人も驚いている。
「お前・・・・・・一体何をした」
「手のうち曝すわけ無いだろ?でも今回は僕の運は君の運を上回ったって事かな」
「上回る・・・・・・!?」
海馬は思考が中断されかけて、狼狽えている。
「やばいですね」
雅は呟いた。
「先輩は『予想外』に対応できません。今、彼が何をしたのかが分かっていないから、彼にとって今から人吉さんがする行為は全て『予想外』です」
「そんな・・・・・・じゃあどうすればいいの?」
音河が雅に訊く。
「私達で彼の能力を解明しましょう。それしかありません」
能力の解明・・・・・・?それは、つまりコイツもアクター・・・・・・。そして海馬の運が勝てなかったということは、それは『普通には起きない現象』がそこに有ったという事・・・・・・。
「少年。はやく始めてくれよ。それとも兵士達が来て捕らえられるのを待つのか?」
「・・・・・・分かった。準備してくれ」
俺はそう言ってから、思考を中断し試合に集中する。
「開始」
同時に銃弾は銃から飛び出る。
次は人吉の左、海馬の右の缶に銃弾がヒットした。
打ち抜いたのは・・・・・・・・・
またも人吉の銃弾だった。
「やっほい」
「くっそ・・・・・・」
海馬が焦りの顔を見せる。かなり焦っている様子だ。
「早く解明しなよ。確か君って予想外に対応できないんじゃなかったっけ?」
「く・・・・・・」
海馬は自分の能力を解明されている事に、うめき声を上げる。
向こうは余裕過ぎる・・・・・・。これは本当に勝てるのか?
「早く次やろうよ」
相変わらず人吉が急かす。
「・・・・・・準備してくれ」
俺はそう言って、新しい缶を置く。
「・・・・・・」
海馬は黙ってもう1つの銃を取り出した。二挺拳銃である。
「・・・・・・まさか2つ同時に狙うつもりなのか?」
「さぁな」
そう言って海馬は銃を構えた。
「開始」
銃の音は3発分重なって、同時に狙った。
両方の缶が空を舞う。
「え・・・・・・?」
当ったのは両方とも海馬の弾だった。
「よっし!」
「チッ・・・・・・」
人吉は悔しそうに舌打ちをして、
「2つの拳銃は僕と同じ条件じゃない。それは僕のほうが不利だ」
「何でだ?先に当てたほうがいいってことは、どっちに当っても早けりゃいいんだろ?」
「僕の一発が外れても、君には2発あるっていうのはずるいよ」
「・・・・・・」
海馬は黙って俺を見る。
「・・・・・・残念だが理屈は通っている。1つにしろ」
「了解」
そう言って海馬は銃をしまった。
「機関銃とかライフルとかにするのはだめなのか?」
「ダメだ」
人吉が答える。
「お前も替えればいいんじゃないか?2択しかないのも面白くないだろう?」
「僕がルールだ。コレは変えない」
「そうかよ」
少し不満そうに海馬は言った。
「準備しろ」
俺はそう言って新しい缶を置いた。
「いけるか?」
「ああ」
「さっさとしろ」
2人の返事を聞いてから
「開始」
と合図を出した。
海馬の銃弾は海馬から右の缶、人吉の銃弾は人吉から見て右の缶でそれぞれ別の缶を狙った。
缶はほぼ同時に空を舞う。そして同じタイミングに落下した。