32-回転-
雅 VS 明前 後編。
さーて。どちらが勝つのかな?
「本気で行きます」
「全力で迎え撃つから任せとけ」
雅は走り出した。
明前は指パッチンをマシンガンのように連発する。
「これなら・・・・・・!!」
雅は跳び上がり、地面に平行に横向きになり回転する。風が舞い起こり空気の塊と思しき物がどこかに消える。
「よし!」
「流石だな。では次はこうだ」
明前は走り、そして跳ぶ。
「Crazy Shot!」
体を一気に折りたたむように、両手を下げ、両足を上げる。結果4つの大きな空気の塊が飛ぶ。
「く・・・・・・!」
雅は避けれないと悟り、そこで回転を始めた。
「うおおおおおおおおおおおおお!!」
ぐるぐると回り、風を生む。それが4つの空気の塊と衝突して、戦いを始める。
「!」
がしかし、風の気流の中にその塊は入り込み、
「ああああああああ!!」
雅の体をまるで刃のように切り裂いた。
「・・・・・・む・・・・・・。そんなにダメージを食らわせれてないな」
「私の風は・・・・・・凄いですから」
「そうだな」
それでも明前は興味なさそうに言った。
「・・・・・・これは・・・・・・」
雅は肩から肩甲骨の辺りの傷を見て呟いた。
「・・・・・・行きます」
そう言って雅はまた走り始めた。距離はそんなに空いていない。
「まだ元気があるのか。ならば・・・・・・」
今度はショットガンと彼が言い表していた形で指を振る。
「これでどうだ」
「・・・・・・」
雅は右手を6つの空気の塊に向かって突き出した。
パァン!
「!?」
「できた・・・・・・」
そう呟いて雅はそのまま明前に飛びつく。上半身を両足で掴むように抱きついた。
「貴様何をした!!」
「私の回転力で貴方の空気塊を分散しました。貴方の攻撃を食らったときに、肩から肩甲骨の辺りの1個しか傷が無かったのはそういうことでしょう」
「しかし・・・・・・今貴様は殴っただけだろう!」
「私の能力の進化でしょう。これを『スパイラル』と名づけました」
「進化・・・・・・」
「では、行きます」
雅は拳を構えた。螺旋状に風が纏っている。
「何か言い残す事はありますか?」
「・・・・・・俺がどうして上半身を曲げているか知っているか?」
「分かりません。個性ですか?」
「これは引き金だ」
そう言って明前は上半身を引き戻した。
ドガァァァ!!
激しい音を立てて、空気が飛んでくる。直系4メートルくらい。
雅にヒットして、その流れはこちらにも飛んでくる。
「下がれ!」
俺は命令してから、床を壁に変形させる。
「ぐ!」
風は壁を壊して俺の体にぶつかる。が、勢いは収まったようで余りダメージは無かった。
「大丈夫?嘉島君」
「ああ。そこまでは痛くない」
が・・・・・・。
直撃した雅はどうなのだろうか。
見ると足を明前に絡み付けたまま、倒れている。
「ふん。俺の力は『周りの全ての空気』だ。今まで蓄えていた分の空気の圧縮レベルから考えてもそう簡単には分散できまい。お前の進化も最近出来たばかりのようだからな」
そう言って明前は雅の足を外して進み始めた。
「さぁ。次はどいつだ?1番体躯の小さい奴を出してくるとは・・・・・・貴様らも厳しい選択をしたものだ」
「く・・・・・・」
雅がやられた・・・・・・。
「私が行くわ」
虎郷が言った。
「だめだ。近距離の雅の速度でも対抗できなかったんだから、無理だろう」
「遠距離の私が行こうか?」
「それも難しい・・・・・・」
と俺達が会議していると、
「何を臆している」
と海馬が言った。
「アイツの特性は『奇想天外予想外』だ」
と。
「!」
明前の腰に手が絡みつく。
「私はまだ負けてません」
「く!まだ生きていたのか・・・・・・。だが、もう虫の息。こんな腕など・・・・・・」
明前がその手を外そうと抗う。
「・・・・・・なんだ!?この強さは!」
「回転力を加える事で締め付けを強くしています。更に、これから面白い事をして見せます」
明前の体が持ち上がる。
「な、何だ!?」
「回転の遠心力・・・・・・それを私の体の周りに纏わせ、縦向きにしたとすれば・・・・・・?」
「・・・・・・背後への勢いが増し、それは重力に抗う、垂直抗力・・・・・・!?」
「正解です」
雅はそのまま後ろに向かって明前を叩きつけようとする。
そう。立ったままブリッジをする要領で。
「ジャ・・・・・・ジャーマンスープレックス・・・・・・!?」
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
雅はそう叫んで、明前をたたきつけた。
明前はそのままぐったりして、動かなくなった。
雅は明前を放置して立ち上がり、呟いた。
「・・・・・・勝った・・・・・・」
まぁ雅が勝たなかったらビックリだよな・・・・・・。