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丸く収まったこの世界  作者: 榊屋
第五章 失って気づくこの世界
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31-激闘-

 雅 VS 明前

「どうした?かかってこないのか?」

 男は態勢を変えずに言う。

「……あなたの名前を教えてください」

「俺か?俺は『明前(みょうぜん)』だ。王城グループの幹部をしている。専門はクレーム処理と邪魔者の処理だ」

 相変わらず態勢を変えるつもりはないようで、そのまま笑った。


「明前さん。私は全力で行きます」

「そうか。好きにしろ、常盤 雅」

 どうやら俺たちの顔と名前は把握済みのようだ。

「なので、貴方が死んでも私は責任を負いません」

「心配するな。俺は強い」

「では行きます」

 長い前置きを置いて、雅は7メートルの距離を詰めるために走り出した。



「気をつけろよ。俺は処理専門だから、生かす方法は心得てない」

 男はそう言ってから、両手の指を構えた。指パッチンの形で。

「Shot」

 男は言って指を鳴らした。音は「パチン」ではなく、「パン!」だった。或いは「バキューン!」かもしれない。

「!?」

 雅は瞬間的にしゃがみこんだ。俺達からすれば単純に何かから避けたように見える。

「焔の錬金術師ですか?」

「大佐と呼ばれた覚えは無いかな」

 2人はそう会話して、明前が続けた。


「避けられたか。まだまだ行くぞ」

 同じように指パッチンの形を取り、音を鳴らす。今度は右と左を交互に連続で。

「これは・・・・・・」

 雅は呟いて、跳ねたりしゃがんだりして明前に近づく。

「ほぉ・・・・・・これも避けるか。では、今度はこうだ」

 明前は今度は両掌りょうてのひらを開いて、濡れた手の水を散らすように手を振った。

「今度は・・・・・・散弾・・・・・・!?」

 雅は驚きながら、回転することによって風を作り上げる。

「マジか・・・・・・」

 明前も驚いて動きを止める。一々特筆すべき内容では無いと思うが、立ち姿には1つも変化は無い。

 そして雅は距離を縮め切り、ほぼ2メートルの距離で跳び上がる。

「貴方の力、見抜きました」

「貴様の力、見抜いたぞ」

 2人は同時に言って、雅は右足で跳び蹴りを、明前も右足で上段蹴りをする。足同士が交差した瞬間、火花・・が散った。

「くっ・・・・・・!」

「ぐゥッ!」

 2人は少し呻いて、2人は弾かれるようにそれぞれの後方に飛ばされた。


 雅は空中で回転してから着地した。明前は立ち姿が立ち姿だっただけに、衝撃を逃がす事に成功し、そのままの態勢で立っていた。


「貴様の足の力・・・・・・見えたぞ」

 雅に向かって明前が言い放った。

「貴様、能力者か。足に纏っていたのは回転力・・・・・・その力による風か・・・・・・。しかしどうやらそれはそもそも戦闘目的のものではないようだ。動きが早いところから、恐らく脳の中のスピードを活性化しているのか・・・・・・それが戦闘向きに変化したというところだろう」

「・・・・・・」

「正解か?」

「否定はしません」

「そうか」

「貴方の力も見抜きました」

 雅もそう言って、明前を睨む。

「どうやら貴方の力は『銃』のようですね」

「そうだ」

「指の中や手の中・・・・・・貴方の体中を取り巻いている空気を圧縮してそれを高速のスピードで放つ事により、『銃弾』と同じ威力、速度を持つ事が出来る。先ほど私と貴方の足が交差したとき、風と銃弾の速さが重なったということになり、2つの速さが混ざったんでしょう。そして風同士の摩擦力が生まれ、火花が散ったという事ではないでしょうか」

「まぁまぁ当りだ。正確に言えば、指パッチンで威力を上げられたり、連打すればマシンガン、投げるように指を散らせばショットガンだ」

「そうですか」

 お互いに答え合わせをして、お互いに興味なさそうな素振りをすると、

「ではこれでもう終わりですね」

「遊びの時間が、だな」

「はい」

「ああ」

 2人はそういうと、もう一度構えた。


 能力とは常に進化するのだ。


 僕らはそれに気付かなければならないんだ。

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