28-開始-
ようやく1話のところに向かって、進行します。
襲撃『開始』
俺は睨まれながらも何とかその場を凌ぎ、虎郷(またの名を『ゴーゴン』)からの金縛りを咲け切ることが出来た。
それから俺達は丸1日を準備に使い、銃器の使い方をよく学び、よく寝て、昨日のカレーを、願懸けの意味も兼ねて、カツカレーにして食べた。よく学び、よく寝て、よく食べた。
そして、時間は23時。
襲撃の時が来た。
俺達は全員で王城グループの本社の前に立った。
片田舎でありながら、高級住宅街の多い地域では20階建てのビルやホテルがある。この辺りは田舎だけはあって、観光名所もいくらかあるのだ。その中でも一際大きいビル、32階建てのビルが『王城グループ 本社ビル』である。
台風で風に煽られながらも、歩いてそこに向かった。中央街を歩きながら、高級住宅街地域に向かって足を進める。向かい風だが気にしない。俺達は今からもっと風当りの強いものを相手にするのだ。
「これが成功したら、王城グループはどうなるんだろうな」
「さぁ・・・・・・。滅ぶかもしれないし、何とか立ち直ってくるかもしれないけれど、まぁ王城が相手だから私達にはどうにも出来ないわね」
「それはそれとして頑張ろうぜ。俺達の仲間を取り戻すためにな!」
「そういうセリフは成功してから言ってください。海馬先輩」
「成功してからはそれは言えないんじゃないかな・・・・・・」
俺達はそんな会話を済ませて、警察の軍隊(警察予備隊でも自衛隊でもない)のところに立った。
「よう。来たか」
龍兵衛さんはパトカーから降りながら言った。
「今回の作戦は、お前らはどんどん上に上がっていけ。俺達がサポートする。っていう感じの作戦だ。今回は銃刀法違反に関しては免除してやる」
「そんな権限があるんですか?」
「今回の一生摘発が成功したら、俺は恐らく副署長だ。というかそういう約束だ。それにお前らは警察だろうが」
「ああ・・・・・・。そういえばそうでしたね」
俺達は警察官なのか・・・・・・。そんな事は基本的にはないだろう。こういうことはしていいような事じゃないかも知れないが、一々気にしている場合でもない。
俺達は今から戦いを始めるんだ。
「そういえば、犯人は1人を除いて捕まったぞ」
「え?」
「一条字 雷は、自分の息子、一条字玲王に捕まった」
「む、息子に!?」
「『親父は王座から降りたのだ。これからは俺が王だ。俺は俺であるが故に、王である意味があるのだからな』だそうだ」
「は、はぁ?」
何言ってんだ、そいつは。
「そして如月 戦は、王城の協力者が捕まえた」
「・・・・・・結局その人は誰なんですか?」
「お前らは知ってるだろ?俺は名前は知らん」
「知らないんですか・・・・・・」
「アイツだよ・・・・・・えーっと、ほら」
龍兵衛さんは少し考えてから
「運転手だ。あの『東』・・・・・・だっけか?」
と言った。
「あ・・・東先輩!?」
「ああ。そうだそうだ。それだ」
龍兵衛さんがそう言って、笑う。
まさか・・・・・・東先輩が・・・・・・。てっきり敵側だと思っていた。だがしかし、そう考えれば納得できる。「スピード違反」や「無免許運転」をしていた人物という点や、王城グループの人間で隼人への協力者・・・・・・そして犯罪者を捕まえられるのは彼くらいのものだろう。
「そうか・・・・・・東先輩も・・・・・・」
俺は思わず笑った。
「嬉しそうね」
「仲間が増える事は嬉しい事だからな」
「そう。私も嬉しいわ」
と淡白に、しかし少し顔を歪ませて、笑いながら言った。
「・・・・・・。もう少しで襲撃の時間だ。心の準備は良いか?」
「はい」
「・・・・・・5秒前」
・・・3、2、1
「作戦開始!」
龍兵衛さんの命令で銃や刀、マシンガンを持った人間が突っ込む。
「よし、俺達も行こう」
と、動いたとき。
入り口から、光が漏れた。そしてその後爆発音が響き渡る。
「・・・・・・!?」
何だ!?何が起きた?
「爆発!?」
海馬が驚きの声を上げた。
兵士のほとんどは爆風のようなもので飛び出ただけのようだ。
「・・・・・・」
中から現れたのは、同じような兵士達だったが、武器が明らかに違う。
そして1人の男が入り口から出てくる。
「帰れ。今なら許してやる」
バズーカを構えていった。後ろにはガトリング砲や重機関銃が設置されている。
「気をつけろ。周りの建物から狙撃班も狙っている」
「く・・・・・・」
龍兵衛さんは珍しく言葉を詰まらせてそのまま止まる。
「さっさと帰れ。貴様らの相手をしている場合じゃないのだ」
男はそう言ってバズーカの引き金に指をかける。
「これから10秒以内だ」
男の後ろから同じバズーカ兵が来る。
「10」
「建物の裏側に逃げろ!」
龍兵衛さんがそう叫ぶ。
「9」
「おい!お前らも早く逃げろ!」
「8」
逃げていいのか?俺はここから離れていいのか?
「7」
「嘉島君!一旦引くわよ!」
虎郷が叫ぶ。
それでいいのか?
「6」
「嘉島!急げ!ここで死ぬわけにはいかない!」
俺はまだ考えられていないんじゃないか。
「5」
「嘉島!逃げるんじゃないんだよ!一旦隠れようよ!」
警察の人々は一気に隠れる。
いや、逃げだ。これはただの逃げなんだ。『何か』がそう言っている。
「4」
「奏明さん!早く!」
何が・・・・・・俺を止めるんだ?
「3」
・・・・・・!何か聞こえる。これは・・・・・・アレだ。エンジンの音だ。
「2」
「逃げるな!俺達の仲間だ!隼人も虎郷も海馬も音河も雅も!」
「分かってる。だから早く逃げるぞ!」
「逃げちゃダメだ。俺達にはまだまだ残ってるだろ!」
「1」
「・・・・・・なんだありゃ」
車が一台走ってくる。
「俺達にはまだ仲間が居る!!」
俺はそう叫んで、車に向かって走った。
皆も走り出す。
「0」
俺は開いていた車のドアに捕まった。その俺や同じように車のドアに捕まったりして、俺達は連結した。
バズーカは周りの車や戦車、そしてこの車に衝突する。そして炸裂して爆発する。
煙が舞い上がった。地面が割れたり壊れたりしている。どうやら悲惨な結果を招いたようだ。これでは何もかも壊れてしまう。
「・・・・・・何!?」
しかし。
男が見た先には俺達が居た。
バズーカの爆発に巻き込まれた、無傷の車の中に。
車は男をも引いて、重機関銃やガトリング砲に突っ込んで、止まった。
「・・・・・・助かった」
「キセキね」
「運が良かったな」
「それにしても凄いね、この車」
「いずれにしても助かりました」
俺達はドアから出てきた。
「何で生きているんだ、貴様ら!!」
兵士達が叫ぶ。俺は華麗に無視するという方法を選んだ。
「ありがとうございました・・・・・・」
俺は目の前に居る、男の人にお礼を言った。
「東先輩」
「初めてだな。お前に敬語を使われたのは」
笑いながら言って、車のバンパーに座り込む。
そして目の前の連中を睨みながら言った。
「ここは先輩と警察に任せな。おまえらは先に行け」
マンガのように、自らの立ち位置を確保していった。
「東先輩・・・・・・」
「隼人のことは頼んだ」
「・・・・・・はい!」
俺はそう叫んで階段を上り始めた。
東先輩の背中は今までより一段と頼もしかった。
次回はかなり短く、東先輩の『能力』を説明。