23-遣使-
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この場合の意味は『パシリ』です。
気付けばもう既に19時を回っていた。
帰路を踏みしめながら考える。
明日までに3人か・・・・・・。
その途中で、
「これからどうする?」
と海馬が口を開いた。
「海馬・・・・・最近会話を始める時はそればかりだな」
「そりゃそうだろ。俺は何をすればいいか分からないんだから」
「だからって・・・・・・」
少し疲れたような気分になる。だって、俺だって何から始めればいいか分からないんだから。
「ともかく、家に帰ってから考えましょう。なんだか今日は疲れた気分です」
と、本当につらそうに雅が言った。
「俺の出番だな」
と海馬が俺のところから、雅のところに行く。
そして雅に向かって言った。
「おんぶとお姫様抱っこどっちがいい?」
「既に二択!?」
雅は珍しく叫んで反応した。恐らく、俺達残りも同意見の反応だっただろう。
「お前調子悪いんだろ?」
「いや、それは・・・・・・」
「よいしょ」
有無を言わさず雅を背負う。
「うわ!」
「よし、海馬号発進!」
「降ろしてください!」
「思ったよりも重いな」
「しかも失礼!?」
「いいか?」
海馬は背中の雅を見て言う。
「疲れた奴は誰かを頼っていいんだ。お前は頼るのに慣れていない。王城と同じでな」
「格好の良い事言って、ごまかさないで下さい」
「よし、行くぞ」
「降ーろーせー!!」
という、妙な会話で海馬が走り始めた。うん、アレはどちらかと言えば「兄妹」だな。海馬は身長が高いし、雅は少し低いから。
「・・・・・・あの2人はやっぱり元気が良いね」
音河が微笑んで言った。
「そう・・・・・・だな」
微笑ましい光景である事は否定しないが・・・・・・。
人目は憚って欲しい。道中の人々の視線を一気に集めてしまった。
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帰宅した。
となればこの時間だ。もうすぐ8時になってしまいそうだが、夕飯作り。
今日の当番は雅なんだけど、どうやら本当にしんどかったらしく。今日一日動けないようだ。
ちなみに雅は料理が上手そうだといったが、器用ではあるが、それは家事には向いていない様だ。
リビングには雅を除いた4人。
「夕飯作ろうか?」
俺が率先して立ち上がった。
「よろしく」
「よろしく」
「私も手伝うわ」
上2人が海馬と音河で、一番下が虎郷だ。ちなみに虎郷の器用さはあらゆる方向に向いている。
というか、人間性分かれるよなー。
「さて、何作る?」
「カレーかな」
「どうして?」
「2日目のカレーが美味いから、明日カツカレーでゲン担ぎと行きたいな」
「ではそうしましょうか」
「材料はあるか?」
「あるわよ」
軽く会話して、俺の不器用さを馬鹿にされながら、カレーを作り終えた。
雅を呼んで(すでにケロッとした顔になっていた)、皆で食卓を囲み、
「いただきます」
という俺の号令で、4人も同時に言う。
俺達に置いて静かな食卓などという物はなく、いつもざわついているのが基本だ。
で、それは例外なく、だ。
一々描写を入れるのが面倒なので、口調だけで誰か考えてください。
「人のこと背負っておいて、重いってのはどうなんでしょう」
「いや、あー・・・・・・冗談だ」
「口篭ってるから明らかに怪しいよ・・・・・・」
「嘉島君、醤油とって」
「あいよ」
「つーか元気になれたんなら俺が背負う必要なかったじゃん」
「それとこれとは話が別です」
「貴方達の痴話喧嘩は後で別の場所でしてくれる?」
「嘉島ー、醤油ー」
「あいよ」
「そうですよ、正先輩。こんな会話は始めないで下さい」
「雅ちゃんが始めたじゃん・・・・・・」
「そうね。常盤が始めた事だから、貴方に責任があるわね。どう責任とってもらおうかしら」
「嘉島。醤油」
「あいよ」
「責任って・・・・・・火水。どうやって取らせるつもりなの?」
「何かやらせたら、ぶっ殺すぞ!!」
「私のイメージって最悪なのかしら」
「奏明さん、醤油お願いします」
「あいよ」
みたいな感じである。ふむ。俺ってつかいっぱしりなのだろうか。
夕食が終わって、
「のど渇いたな」
俺がそう言うと、
「あー・・・ジュースでも買ってりゃよかったな」
と、海馬が応じる。
「私はカルピス」
「私は・・・・・・オレンジジュースで」
「炭酸系でお願いします」
「俺は紅茶で」
「は?」
・・・・・・もしかしてこれは・・・・・・
「嘉島君」
「嘉島ー」
「嘉島」
「奏明さん」
「・・・・・・・・・・・・何?」
「「「「ジュース買ってきて」」」」
・・・・・・本格的にパシり化してしまった。
「ったく、面倒だよ・・・・・・」
俺はお金を持って、玄関からコンビニ向かって歩き始めた。
・・・・・・。
いや、特筆すべき事態ではないと思うんだけど・・・・・・。
酔っ払いみたいに倒れている人がそこに居た。電柱にもたれて座っている。
「あー・・・・・・」
放っておくわけには行かないよな・・・・・・。
「大丈夫ですか?」
「・・・・・・あー・・・・・・大丈夫だ」
そう言って、その男の人は立ち上がる。
「んー。すまん、最近は状況がよく分からず寝てしまうんだ」
「そうなんですか?」
酔っ払いではなかったようだ。うむ、安心安心。
「大丈夫なんですよね?」
「ああ。心配するな。僕はこう見えても頭以外の部分に怪我を負った覚えはない」
それは覚えていないだけでは?
俺は言わなかったのに、
「覚えてないだけかもしれないが」
と答えた。
「それにしても、こんな夜中に出歩くとは・・・・・・見た目は中学生か高校生だろう?帰ったほうがいいんじゃないか?」
「心配要りませんよ。俺は、そんなやわな人間ではありません」
「そうか。強いのか?」
「ええ。常人よりは」
「ふむ。ところで、今、僕は現状が分からないんだ。一つしても良いだろうか?」
「はい。何ですか?」
俺の問を待っていたかのように、その男の人は嫌な笑顔を浮かべた。
そして言った。
「僕は誰でしょう」
「!!」
僕は後ろに跳んだ。
反射・・・というには些か遅すぎた。俺のパーカーに明らかな太刀筋が出来たからだ。
というか、明らかにおかしい。どこから2メートル弱の刀なんか出したんだ。
それは物理的法則を無視している!!
「あれ?避けた?もしかして僕のこと知ってた?」
「・・・・・・マジかよ」
嘉島君が大変だ!助けなきゃ!
ウソッピ。