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丸く収まったこの世界  作者: 榊屋
第五章 失って気づくこの世界
110/324

23-遣使-

 ↑

 この場合の意味は『パシリ』です。


 気付けばもう既に19時を回っていた。

 帰路を踏みしめながら考える。

 明日までに3人か・・・・・・。

 その途中で、

「これからどうする?」

 と海馬が口を開いた。

「海馬・・・・・最近会話を始める時はそればかりだな」

「そりゃそうだろ。俺は何をすればいいか分からないんだから」

「だからって・・・・・・」

 少し疲れたような気分になる。だって、俺だって何から始めればいいか分からないんだから。

「ともかく、家に帰ってから考えましょう。なんだか今日は疲れた気分です」

 と、本当につらそうに雅が言った。

「俺の出番だな」

 と海馬が俺のところから、雅のところに行く。

 そして雅に向かって言った。

「おんぶとお姫様抱っこどっちがいい?」

「既に二択!?」

 雅は珍しく叫んで反応した。恐らく、俺達残りも同意見の反応だっただろう。

「お前調子悪いんだろ?」

「いや、それは・・・・・・」

「よいしょ」

 有無を言わさず雅を背負う。

「うわ!」

「よし、海馬号発進!」

「降ろしてください!」

「思ったよりも重いな」

「しかも失礼!?」

「いいか?」

 海馬は背中の雅を見て言う。

「疲れた奴は誰かを頼っていいんだ。お前は頼るのに慣れていない。王城と同じでな」

「格好の良い事言って、ごまかさないで下さい」

「よし、行くぞ」

「降ーろーせー!!」

 という、妙な会話で海馬が走り始めた。うん、アレはどちらかと言えば「兄妹」だな。海馬は身長が高いし、雅は少し低いから。


「・・・・・・あの2人はやっぱり元気が良いね」

 音河が微笑んで言った。

「そう・・・・・・だな」

 微笑ましい光景である事は否定しないが・・・・・・。


 人目ははばかって欲しい。道中の人々の視線を一気に集めてしまった。



=====================


 帰宅した。

 となればこの時間だ。もうすぐ8時になってしまいそうだが、夕飯作り。

 今日の当番は雅なんだけど、どうやら本当にしんどかったらしく。今日一日動けないようだ。

 ちなみに雅は料理が上手そうだといったが、器用ではあるが、それは家事には向いていない様だ。

 リビングには雅を除いた4人。

「夕飯作ろうか?」

 俺が率先して立ち上がった。

「よろしく」

「よろしく」

「私も手伝うわ」

 上2人が海馬と音河で、一番下が虎郷だ。ちなみに虎郷の器用さはあらゆる方向に向いている。

 というか、人間性分かれるよなー。



「さて、何作る?」

「カレーかな」

「どうして?」

「2日目のカレーが美味いから、明日カツカレーでゲン担ぎと行きたいな」

「ではそうしましょうか」

「材料はあるか?」

「あるわよ」

 軽く会話して、俺の不器用さを馬鹿にされながら、カレーを作り終えた。



 雅を呼んで(すでにケロッとした顔になっていた)、皆で食卓を囲み、

「いただきます」

 という俺の号令で、4人も同時に言う。

 俺達に置いて静かな食卓などという物はなく、いつもざわついているのが基本だ。

 で、それは例外なく、だ。

 一々描写を入れるのが面倒なので、口調だけで誰か考えてください。



「人のこと背負っておいて、重いってのはどうなんでしょう」

「いや、あー・・・・・・冗談だ」

「口篭ってるから明らかに怪しいよ・・・・・・」

「嘉島君、醤油とって」

「あいよ」

「つーか元気になれたんなら俺が背負う必要なかったじゃん」

「それとこれとは話が別です」

「貴方達の痴話喧嘩は後で別の場所でしてくれる?」

「嘉島ー、醤油ー」

「あいよ」

「そうですよ、正先輩。こんな会話は始めないで下さい」

「雅ちゃんが始めたじゃん・・・・・・」

「そうね。常盤が始めた事だから、貴方に責任があるわね。どう責任とってもらおうかしら」

「嘉島。醤油」

「あいよ」

「責任って・・・・・・火水。どうやって取らせるつもりなの?」

「何かやらせたら、ぶっ殺すぞ!!」

「私のイメージって最悪なのかしら」

「奏明さん、醤油お願いします」

「あいよ」


 みたいな感じである。ふむ。俺ってつかいっぱしりなのだろうか。

 


 夕食が終わって、

「のど渇いたな」

 俺がそう言うと、

「あー・・・ジュースでも買ってりゃよかったな」

 と、海馬が応じる。

「私はカルピス」

「私は・・・・・・オレンジジュースで」

「炭酸系でお願いします」

「俺は紅茶で」

「は?」

 ・・・・・・もしかしてこれは・・・・・・


「嘉島君」

「嘉島ー」

「嘉島」

「奏明さん」

「・・・・・・・・・・・・何?」

「「「「ジュース買ってきて」」」」


 ・・・・・・本格的にパシり化してしまった。





「ったく、面倒だよ・・・・・・」

 俺はお金を持って、玄関からコンビニ向かって歩き始めた。


 ・・・・・・。

 いや、特筆すべき事態ではないと思うんだけど・・・・・・。


 酔っ払いみたいに倒れている人がそこに居た。電柱にもたれて座っている。


「あー・・・・・・」

 放っておくわけには行かないよな・・・・・・。


「大丈夫ですか?」

「・・・・・・あー・・・・・・大丈夫だ」

 そう言って、その男の人は立ち上がる。

「んー。すまん、最近は状況がよく分からず寝てしまうんだ」

「そうなんですか?」

 酔っ払いではなかったようだ。うむ、安心安心。

「大丈夫なんですよね?」

「ああ。心配するな。僕はこう見えても頭以外の部分に怪我を負った覚えはない」

 それは覚えていないだけでは?

 俺は言わなかったのに、

「覚えてないだけかもしれないが」

 と答えた。

「それにしても、こんな夜中に出歩くとは・・・・・・見た目は中学生か高校生だろう?帰ったほうがいいんじゃないか?」

「心配要りませんよ。俺は、そんなやわな人間ではありません」

「そうか。強いのか?」

「ええ。常人よりは」

「ふむ。ところで、今、僕は現状が分からないんだ。一つしても良いだろうか?」

「はい。何ですか?」

 俺の問を待っていたかのように、その男の人は嫌な笑顔を浮かべた。


 そして言った。


僕は誰でしょう・・・・・・・

「!!」

 僕は後ろに跳んだ。

 反射・・・というにはいささか遅すぎた。俺のパーカーに明らかな太刀筋が出来たからだ。

 というか、明らかにおかしい。どこから2メートル弱の刀なんか出したんだ。

 それは物理的法則を無視している!!


「あれ?避けた?もしかして僕のこと知ってた?」

「・・・・・・マジかよ」



 

 嘉島君が大変だ!助けなきゃ!


 ウソッピ。



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