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丸く収まったこの世界  作者: 榊屋
第五章 失って気づくこの世界
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18-如何-

 どうするのか。


 どうすればいいのか。

 龍兵衛さんはすぐに来た。

「仕事が速いな。レッドテイルは全員確保終了か・・・・・・」

「後は、木好さんとその他ですね」

「ああ。まぁその他の奴らは偶然外に出ただけだろう。おそらくお前らみたいなのではない」

「分かりました。ありがとうございました」

 遊園地で簡単な確認と会話だけを済ませて、龍兵衛さんと別の作業を開始した。

 俺の右手や雅の行動力で彼らが仕掛けた全ての爆弾を集め終えた。



 隼人は敵対宣言をして、そのまますぐに身を翻して消えて行った。俺達は――少なくとも俺はその場から動く事は出来ず、隼人を追いかけることはかなわなかった。


 君らが襲撃に来るというのなら、僕は全力で迎え撃つ


 隼人はそう言っていた。


 俺達と戦う。そういう意味だろう。


「どうするんだ?嘉島?」

 帰り道で海馬が言った。

「どうするって何を?」

「襲撃だよ。もうこれ以上事件は起きないんだろ?だったら王城グループに攻撃する必要はないだろ?」

「ないっていうか出来ないよ。事件が起きないんなら警察側は行動できないからな」

「だからどうするのかって訊いてんだ」

 海馬はそう言って少し前を歩いていた俺の肩を掴む。俺はその場に止まる。

「俺達が単独で行動を開始すんのか?」

「・・・・・・分からないよ」

「分からないってそんな・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

 俺は海馬の手を肩から外させて、帰路をもう一度踏みしめ始めた。



 家につく頃には夕方になっていた。どうやら爆弾回収の作業に思ったよりも時間が掛かっていたようだ。

「遅かったわね」

 その時、玄関に虎郷が居た。

「よう。虎郷」

「何かあったみたいね」

「まぁな。中で話すよ」

 俺はそう言って止まることなく、家の中に入った。


 俺はその日の出来事を話した。レッドテイルが現れたこと、能力の進化、隼人がそこに現れたこと。それら全てである。


「なるほど。忙しかったようね」

「まぁな。で、そっちはどうだった?」

「これといって収穫無しね。それより、本当にどうするつもりなのかしら」

 虎郷はそう言って、俺を睨む。

 海馬と同じ事か・・・・・・。

「隼人の事か?」

「そう。どうするの?襲撃には行くのかしら?」

「・・・・・・・・・・・・」

 俺は相変わらず黙る。

 自分でもどうしていいか分からないのだ。


「・・・・・・まぁいいわ。夕食にしましょう」

 そう言って虎郷は立ち上がった。


 音河は悲しそうな顔をして、

 雅は思案顔で、

 海馬は俺を一瞥して

 俺は悩みながら

 それぞれ自分の部屋へと入っていった。

 これから一体どうすればいいのか。それを考えていた。


 結局、夕食までに考えが纏まるはずもなく、そのまま食卓のテーブルを囲んだ。

 メニューはいう必要はないかもしれないが、一応紹介しておくと、

 ほうれん草のおひたし、さばの味噌煮、ご飯とみそ汁。朝食と夕飯の両方に利用できそうなメニューである。


「・・・・・・」

 口数が明らかに少ない。というか誰も口を開かない。


 そして結局夕飯も終わり、俺は自分の部屋へと帰ろうとしていたところだった。


「あの」

 雅が口を開いた。

「虎郷さんはもしかして王城さんがあそこに現れることを知っていたんじゃないですか?」

 雅は虎郷を睨むわけではなく、少し悲しそうな表情で訊いた。どうやら、仲間内にそういう質問をするのは苦のようだ。

 ・・・・・・で。

「・・・・・・は?」

 というのが俺の反応だった。

 もしかして、雅の思案顔はこれのことだったのだろうか。


「虎郷さんなら見えていたはずです。私達が遊園地に行くと、そこにレッドテイルが現れることを。危険が迫っていることでしたから」

「ちょ・・・ちょっと待ってよ、雅ちゃん」

 音河が雅の話を止める。

「例えそうだったとして、どうしてレッドテイルが現れるのを知っていて教えてくれなかったの?そんな場所で事件が発生したら危険が及ぶんじゃない?」

「事件を止められる事も見えていたんでしょう。それに虎郷さんは王城さんが現れることを知っていたんだとすれば止められません。あそこに王城さんを現れさせる必要がありますから」

「・・・・・・・・・・・・」

 音河は少し青ざめた顔で椅子に座り込んだ。


「・・・・・・そうですか?虎郷さん」

「90点ね」

 虎郷はそう言った割には笑顔ではなかった。

「認めるってことか・・・・・・?」

「ええ。私は見えていたわ。貴方が遊園地に行く事も、それを狙ってレッドテイルが現れることも」

 虎郷はそう言った。

「だとすれば何故90点なんですか?」

 雅は虎郷に訊く。別に点数が100点でなかったことに不満なわけではなさそうだ。


「王城君がそこにいたのは、私がその情報を知らせたからよ」

 虎郷はそう言った。

「この間拉致された時に、レッドテイルと彼らが遭遇したら王城君に連絡するように言われていたのよ」

「何で・・・・・・!?」

「貴方達と会うチャンスはそれくらいだったのよ。幹部の監視がかかっていても、レッドテイルを止めるくらいなら出来たって事でしょう。幹部には『自分達の仲間』に連絡するという言い訳で出てきたんでしょうね」

 自分達の仲間――俺たちではなく、脱獄囚か・・・・・・。

 レッドテイルと会うという理由なら恐らく見張りもつかなかったということだろう。


「でも、じゃあ何で隼人は帰ってこないんだ?」

「彼も言っていたでしょう?今、王城は会長と社長の不在により、状況は危ない。だから彼は私達の危険とは関係なく王城を継がなければならないのよ」

 虎郷はそう言って、

「これが王城君のやり方よ」

 と続けた。

 隼人と同じような言い方で、虎郷が俺に向かって言った。

 隼人はそこまでして俺達と自分を放そうとしている。

 そして今更、警察が行動してまで王城グループに襲撃をするはずがない。だってもう危険性のある事件は起きないのだから。

 とすれば。

 俺達は何もせずにこのまま隼人を――

 そう考えていた俺に、


「で?これからどうするの?」

 と虎郷が言った。



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