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丸く収まったこの世界  作者: 榊屋
第一章 決まりきったこの世界
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09-狂いだす歯車-

「死体に触る・・・?」

「はい」

「そんな事は、絶対に許されない」

「だからこうしてお願いしています」

「・・・・・・・・・俺の権限じゃ無理だ」

「触れば真相が見えるんです」


 警察署内までの車での走行中での話だった。

 俺は、すぐにでも解決の必要があった。

 だから、「木好さんに虎郷の心当たりを聞いてみる」と隼人に言った。

 彼も「それで事件は解決するね」といって別れたのだ。

 そして、俺はパトカー内で龍兵衛さんに頭を下げた。

「死体に触れさせて下さい」

 と。


「だいだい、そんな事してなんになるって言うんだ」

「それは・・・」

「とにかくそんな事は無理だ。もしばれたら、俺の人生に支障をきたす」

「隼人の功績を盾に上に掛け合うことはできませんか?」

「無理だろうな」

「・・・・・・・・・では、手柄は全て龍兵衛さんの物にするというのはどうでしょう?」

「・・・・・・・・・・・・」

 あ、ゆれてる。今が畳み掛けるチャンスだな。

 俺は隼人に連絡した。

 答えは


『いいよー。僕らの手柄なんだし、それをどうしようと一緒さ。僕も君が確かめればその考えに合点がいくしね』

「てことは、虎郷がどこにいるか分かっているのか?」

 ツー・・・ツー・・・ツー・・・。

 返事しろよ。


「今、隼人の許可を得ました」

「・・・いいだろう。乗ろう」

「ありがとうございます」



 安置室に入った。俺と龍兵衛さんはその死体に出会った。3度目の出会いを果たしたのであった。


「・・・触れたら何が分かるってんだよ」

「心配しないで下さい」

 右手で、彼に触れた。


































「そんな・・・」

 全てを見た俺の最初の言葉は驚きだった。

「どうかしたのか?」

 そんな龍兵衛さんの問いかけに、俺は答えず、

「すみません。ありがとうございました。約束は守るのでご心配なく」

 早口でそう言って走る。


 俺は携帯を手にして、署の外に出た。

「隼人!!」

『真相にはたどり着けたか?』

「・・・あぁ」

『じゃぁ、僕は引き続き彼女を捜索するよ』

「分かってなかったのか・・・」

『分かったなんて言ってないよ』

「じゃあ、見つけたらお互い報告で」

『了解』


 その後、すぐの事だった。

 虎郷を見つけた。例の図書館だった。

「虎郷!」

「・・・・・・・・・ソウメイ君」

「何してんだよ・・・!」

 俺は、食いかかっていくような勢いだった。客観的に見てそう思う。

「・・・・・・・・・犯人が分かってしまったの」

「俺も犯人が誰かは気づいている」

「・・・今から犯人に会いに行く」

「止めるつもりは無いさ。だけど俺も同行する」

「・・・そう」

 冷静に、淡白にそう答えた。

「じゃあ、今から隼人に連絡するから」

「分かったわ」

 俺は携帯電話を取り出し、

 電話番号を押して、

 発信ボタンを押して、


 ドガ!


 そして、俺の意識は消えていく。

 その時に、俺が気付いた事は、2つ。


 東先輩を殴った犯人は虎郷だったのか、ということ。1人で行動するためには東先輩が邪魔だったのだ。


 もう1つは、彼女は本来淡白な性格ではないのではないか?という疑問。

 犯人に対しての自分の感情を抑え切れていない。

 それが怒りなのか恨みなのか――いや。

 

 そんなはずが無い。

 そんな簡単なものじゃない。犯人に対しての彼女の感情は。

 だって、彼女は木好さんを本気で愛していたのだから。



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