冒険者達のご休憩
中元にある国家群のほとんどは、人間なら十五歳で成人となる。
それまでは、別に禁じられてはいないが酒は勧められず、
夜通し騒いだりといった行動もあまり誘われたりはしない。
中には不心得者もいるが、大抵は窘められるのだ。
当然、娼館通いなんてのはもってのほか、なのである。
成人するまでは。
冒険者には男も女もいる。比率は大体六対四ぐらいだろうか。
同じ一行に男女が混ざる事も多い。依頼に都合が良い事もある。
冒険者はいささか乱れた生活を送っている、と思われがちだ。
確かに行動時間は不規則だし、野宿も日常茶飯事であるし、
あぶく銭でその日暮らし、なんて者が目立ってしまってはいる。
しかし全員がそうであれば、仕事として成り立つはずもない。
まともな者が大半なのである。誤解されやすいのは確かだが。
男女が混ざる一行では恋愛沙汰でこじれそうに見えるものの、
実は兄弟姉妹やいとこという場合もあって、そう多くもない。
男女が血縁でない場合、関係も結構危うそうに見えるのだが、
ある程度の規模の町であれば、男共は娼館に直行するのだった。
仲間内での恋愛は、上手くいっている間はまあ良いのだが、
ふとした拍子にどう不味い方向に転ぶのか分からない。
女達もそこは理解しており、仕方のない雄共が、とばかりに、
半ば呆れつつ彼らの行動を黙認しているのである。
まあ、中にはヒモや男娼に貢ぎ続けるような女もいたりする。
◆
さて、この冒険者一行「暁の渡り鳥」。新入りが成人を迎えた。
他の連中四人は男女とも全員二つ三つ年上である。全員二つ星。
男二人は、さあ成人の仲間入りだ、新しい世界を教えてやろうと、
娼館へ新入りを連れ出すところ、残り女二人が待ったをかけた。
いわく、その前にわたし達二人にも新入りを祝わせろ、と。
この日は丁度依頼が完了し、それなりに懐も温かかったので、
まずは酒場で普段より良いものをいただこうか、と持ち掛けた。
話はもっともだ、と男達も賛成し、普段より少し上等な店に行き、
食事と酒をともに楽しんだ。
…新入りが目を覚ますと、隣には「暁の渡り鳥」代表の女がいる。
同じ寝台の上である。二人とも全裸である。何も覚えていない。
いや料理は美味かったし初めて飲んだ酒も刺激的だった。
そこは覚えている。こうなってる経緯は覚えていない。
最初寝ぼけた頭でぼうっと代表の女の寝顔に見入っていたが、
覚醒するにつれ冷や汗をかきはじめる新入り。何があった!?
冒険者同士で男女の関係になるのは、別に禁じられてはいない。
だが、色々こじれる事もあるぞ、なんて話は以前に聞いていた。
横で寝息を立てているのは、その話を聞いた相手、本人である。
尊敬する彼女に対して、自分はなにをやらかしてしまった?
まさか彼女が目覚めた時、すみません、何も覚えていないんです、
はさすがに通用しないだろう。どんな流れだったかさっぱりだが、
こんな関係になってしまったからには責任を取らぬ訳にいかない。
あれこれ考えていると、代表の女が目を覚ました。
新入りと目が合う。
「ん…おはよう」
「…おはようございます」
取り敢えず朝の挨拶。いやそんな場合じゃない!
新入りは寝台から慌てて降りて平身低頭、代表の女に詫びる。
全裸のまま。
「すっ、すいませんでしたっ!
何だかオレ、先輩にとんでもないことをっ!
今回の件は必ず責任取りますのでっ!」
代表の女はあくびをしながら答える。
「んー…まあ成り行きだったし、謝られてもねぇ。
責任というのなら、今後もわたし達と頑張って欲しいかな」
「はいっ、ぜひっ!」
◆
昨晩は大した事は起こっていない。男女の関係にもなっていない。
新入りが飲み過ぎて部屋に運んだのだが、寝台に寝かせる直前、
それはもう盛大に寝台と着替えに吐かれてしまっただけだ。
その際代表の女の服も被害を被った。仕方なく別の部屋に行き、
全部脱がせて寝台を共にせざるを得なかっただけである。
自分の着替えも汚されたので残りの仲間達に後始末を任せ、
ここで一緒に全裸で眠りにつくしかなかった。
まあ、新入りのお祝いだったのだ。失敗は許す。
誤解してそうだが、今後も仲間として頑張ってくれるそうだし、
そのうちほとぼりが冷めたら昨晩の事は教えてやろう。
新入りを憎からず思ってはいるらしい。今後どうなるかは不明。
自分は酒は弱いです。なので正体なくすまで飲んだ事はありません。




