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ここはなにかが欠けている

冒険者達のご休憩

作者: 浮月重月
掲載日:2026/08/16

中元にある国家群のほとんどは、人間なら十五歳で成人となる。


それまでは、別に禁じられてはいないが酒は勧められず、

夜通し騒いだりといった行動もあまり誘われたりはしない。

中には不心得者もいるが、大抵は窘められるのだ。


当然、娼館通いなんてのはもってのほか、なのである。

成人するまでは。


冒険者には男も女もいる。比率は大体六対四ぐらいだろうか。

同じ一行に男女が混ざる事も多い。依頼に都合が良い事もある。


冒険者はいささか乱れた生活を送っている、と思われがちだ。

確かに行動時間は不規則だし、野宿も日常茶飯事であるし、

あぶく銭でその日暮らし、なんて者が目立ってしまってはいる。


しかし全員がそうであれば、仕事として成り立つはずもない。

まともな者が大半なのである。誤解されやすいのは確かだが。


男女が混ざる一行では恋愛沙汰でこじれそうに見えるものの、

実は兄弟姉妹やいとこという場合もあって、そう多くもない。


男女が血縁でない場合、関係も結構危うそうに見えるのだが、

ある程度の規模の町であれば、男共は娼館に直行するのだった。

仲間内での恋愛は、上手くいっている間はまあ良いのだが、

ふとした拍子にどう不味い方向に転ぶのか分からない。


女達もそこは理解しており、仕方のない雄共が、とばかりに、

半ば呆れつつ彼らの行動を黙認しているのである。

まあ、中にはヒモや男娼に貢ぎ続けるような女もいたりする。



さて、この冒険者一行「暁の渡り鳥」。新入りが成人を迎えた。

他の連中四人は男女とも全員二つ三つ年上である。全員二つ星。


男二人は、さあ成人の仲間入りだ、新しい世界を教えてやろうと、

娼館へ新入りを連れ出すところ、残り女二人が待ったをかけた。

いわく、その前にわたし達二人にも新入りを祝わせろ、と。


この日は丁度依頼が完了し、それなりに懐も温かかったので、

まずは酒場で普段より良いものをいただこうか、と持ち掛けた。

話はもっともだ、と男達も賛成し、普段より少し上等な店に行き、

食事と酒をともに楽しんだ。


…新入りが目を覚ますと、隣には「暁の渡り鳥」代表の女がいる。

同じ寝台の上である。二人とも全裸である。何も覚えていない。

いや料理は美味かったし初めて飲んだ酒も刺激的だった。

そこは覚えている。こうなってる経緯は覚えていない。


最初寝ぼけた頭でぼうっと代表の女の寝顔に見入っていたが、

覚醒するにつれ冷や汗をかきはじめる新入り。何があった!?


冒険者同士で男女の関係になるのは、別に禁じられてはいない。

だが、色々こじれる事もあるぞ、なんて話は以前に聞いていた。

横で寝息を立てているのは、その話を聞いた相手、本人である。

尊敬する彼女に対して、自分はなにをやらかしてしまった?


まさか彼女が目覚めた時、すみません、何も覚えていないんです、

はさすがに通用しないだろう。どんな流れだったかさっぱりだが、

こんな関係になってしまったからには責任を取らぬ訳にいかない。


あれこれ考えていると、代表の女が目を覚ました。

新入りと目が合う。


「ん…おはよう」


「…おはようございます」


取り敢えず朝の挨拶。いやそんな場合じゃない!

新入りは寝台から慌てて降りて平身低頭、代表の女に詫びる。

全裸のまま。


「すっ、すいませんでしたっ!

 何だかオレ、先輩にとんでもないことをっ!

 今回の件は必ず責任取りますのでっ!」


代表の女はあくびをしながら答える。


「んー…まあ成り行きだったし、謝られてもねぇ。

 責任というのなら、今後もわたし達と頑張って欲しいかな」


「はいっ、ぜひっ!」



昨晩は大した事は起こっていない。男女の関係にもなっていない。

新入りが飲み過ぎて部屋に運んだのだが、寝台に寝かせる直前、

それはもう盛大に寝台と着替えに吐かれてしまっただけだ。


その際代表の女の服も被害を被った。仕方なく別の部屋に行き、

全部脱がせて寝台を共にせざるを得なかっただけである。


自分の着替えも汚されたので残りの仲間達に後始末を任せ、

ここで一緒に全裸で眠りにつくしかなかった。

まあ、新入りのお祝いだったのだ。失敗は許す。


誤解してそうだが、今後も仲間として頑張ってくれるそうだし、

そのうちほとぼりが冷めたら昨晩の事は教えてやろう。

新入りを憎からず思ってはいるらしい。今後どうなるかは不明。

自分は酒は弱いです。なので正体なくすまで飲んだ事はありません。

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