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私、性悪女だから

作者: 井上さん
掲載日:2026/02/27

今回も名前を借りました


ギャグが書きたかった

「この性悪女め!出ていけ!」


 この国の王子が、私フロースになんか言ってきた。

王子は私の婚約者。

聖女である私は王命で、王子と婚約させられた。


 今日は、王子主催のパーティーで、たくさんの貴族が集まっている。

そんな最中に始まった、王子の婚約破棄宣言。


 王子は、普通顔の私より、美人の公爵令嬢の聖女と結婚したいらしい。

普段から、2人でイチャイチャしていた。

 まぁ、私が来るまでは、公爵令嬢は婚約者候補だったから、引き裂かれた真実の愛、とか噂を広めている。

引き裂いたのは私じゃなくて、国王だけどな。


 王子曰く「真の聖女である公爵令嬢に仕事を押し付け、嫌がらせをした。聖女の役目を疎かにした性悪女とは婚約を破棄し、王都から出ていくことを命じる」


 聖女は私含めて12人。

12人で祈り、国全域に結界を張っている。

結界により、国は魔物や隣国からの侵略から守られ、病気や怪我も早くよくなり、農作物も豊富、畜産も上手くいき、治安もよく、民は幸せに暮らしている。


 ただし、この12人のパワーバランスは、私に偏っている。

私1人でも国全域に結界を張れるが、残り11人だけでは、王都内が精一杯。

 元々は公爵令嬢がメインの聖女だったが、国全域に結界を張れなかったので、聖女の素質がある女性を集め、現在の形になった。


 国王は、私が来てから国全域に結界を張れるようになったので、私を逃さない為に、王子との婚約を決めた。


 そんな事は知らない王子。

国王が外遊している間に、婚約破棄をして、私を追い出すつもりらしい。

 ま、出てけって言うならいいか。

結界張っても誰からも感謝されないし。

王子や公爵令嬢や周りの人から、嫌がらせされたのは、私。 


「かしこまりました!それじゃ!」


 私は、王子にそれだけ言うと、大広間から出て行く。


「えっ?お前、私のことを好きだっただろう?婚約破棄されて悲しくないのか?」


 王子がそんな事を言うので


「まさか。ただの王命で婚約してただけです。どうぞ、公爵令嬢とお幸せに」


 ポカンとする王子を残し、今度こそ、振り返らずに大広間から出た。






 やっぱり取り消し、とか言われる前に、さっさと王都から出る。徒歩で。


結界張るのに体力いるから、身体を鍛えていて良かった。


「やった〜!私のお陰で守られてたのに感謝しないから、早く出たかったんだよね〜!いぇ~い没落まっしぐら〜」


 開放感で、スキップしてしまう。


どこに行こうかなぁ?


隣国に逃げるか…

しばらく魔の森に住むのも良いかなぁ…


 とりあえず、魔の森に向かう。


追放された聖女って、追放先で幸せになる物語が多いもんね。



隣国の王子に溺愛されるとか…


フェンリルに守られるとか…



「そこで何をしている?」


 フラグを立てたらしい。


目の前に睨むフェンリルがいた。


「ちょっと追い出されたので、匿ってください!」


 私の発言に、更に睨みをきかすフェンリル。


「何だと?」


「お礼は狼のモノマネです!」


 大きく息を吸う。


「わお〜〜〜〜〜ん!!!!!!」


 渾身のモノマネをしてから、一瞬の間。


「ははははは…」


 フェンリルは腹抱えて笑いだした。


よし、ウケた。


「…よかろう」


 しばらくして、やっと笑いがおさまったのか、フェンリルが言った。


「我の領域に住まわせてやる」


「ありがとうございます!」


 フェンリルが、ついてこいと言うのでついていくと、洞窟があった。


「ここなら雨にあたらないし、冷えないだろう。ここに住むとよい」


「ありがとうございます」


 私は、そこら辺に落ちている小枝を集め、洞窟の中で焚き火をした。


よく考えたら、食料とか水とか、風呂とか洗濯とか着替えとか、その他諸々どうしよう?


 やっぱり、素人が野宿とか無理だろうか?


フェンリルに頼んで、隣国まで送ってもらおうか?

でもなぁ、隣国に行ったとして、また聖女としてこき使われるのも嫌だしなぁ…


「フェンリルさん…何か、人が食べられる物って、そこら辺にありますか?あと、飲める水」


 フェンリルに聞いてみた。


「ふむ…果物の木ならあっちにあるぞ。案内しよう」


 フェンリルについて行くと、林檎の木があった。

何で魔物が出る森に林檎の木があるんだろう?


…深く考えるのはやめよう。


「近くに川があるが、もう夜だ。危ないから川は明日案内しよう」


「ありがとう!」


 林檎を何個かもぎ取り、洞窟へ帰って、そのまま齧る。


「美味しい…フェンリルさんも食べる?」


 フェンリルにも林檎を何個か渡す。


「うむ」


 フェンリルは、器用に両前足で押さえて林檎をかじった。


「ふむ…たまに食べると美味いな」


 お腹が膨れると、眠くなった。

歩き疲れたんだろう。

そのまま横になって眠る事にした。


「お休みなさい、フェンリルさん」


「お休み」


 フェンリルの返事を聞くと、ちょっと嬉しくなった。


「変な人間だ」


 フェンリルが呟いたが、眠っていた私には聞こえなかった。







 フェンリルとの、まったり野宿生活を堪能している頃、王都では大変な事になっていた。


「結界が…王都内しか張れていないだと…?」


 王子が宰相から伝えられた言葉に信じられないとばかりに眉を寄せる。


「はい…王都外では、結界が無くなり、魔物の襲撃があるとか、作物も萎れてきているとか」


「聖女がいるだろう?」


「教会の話では、残りの11人がどんなにがんばっても、王都内しか結界が張れないとのこと」


「レジーナが、あいつがいなくても大丈夫だと言っていたのに!?」


「公爵令嬢のレジーナ様がそう言ったので?」


「そうだ、だからあいつを追放したんだ」


 宰相は、額を押さえながら言う。


「シリウス様。何故国王が、フロース様を婚約者にしたとお思いで?」


「知らん」


「フロース様がいらっしゃってから、国全域に結界が張れるようになったからです」


「は?」


「フロース様がいらっしゃるから国全域に結界を張れていたのです。それまでは、王都だけしか張れてなかったのです」


「そんな事は…」


「フロース様がいなくなって結界はどうなりましたか?」


「まさか…そんな訳…」


 王子は、まだ信じたくないのか抵抗をしている。


「では、王都の外がどうなっているか、ご自分の目でご確認ください」


 宰相は諦めて、シリウス王子の部屋から出ていった。


 国王の留守に、王子がやらかしたのに気付いた時には既に、聖女フロースは王都を出たあとだった。行方を捜すがまだ見つからない。


「あとは…魔の森くらいか…」


 フロースは魔の森に行ったのか?

それとも隣国にでも向かったか?


まだ国王は戻らない。


「王子に魔の森へ探しに行ってもらうか」


 




 国中を、騎士達で探し回ったが、フロースは見つからない。


「王子、早くフロース様を見つけないと、もっと国が大変なことになります」

「国王が帰る前に探し出さないと」


 大臣達にせっつかれて、護衛を連れて渋々と、魔の森に行くシリウス王子。


森の真ん中で、シリウス王子は運良くフロースと遭遇した。






 目の前に、王子が現れた。

名前は…覚えてない。


「おい!城に帰れ」


 挨拶も何もなく、そう言った。


「何でですか?」


「結界を張れ!」


「追放したのは王子ですよ」


「うるさい!黙って結界を張れ!」


 その時、王子と私の間にフェンリルがやってきた。

護衛は、王子を捨てて逃げた。


 フェンリルは、鼻にシワを寄せて、王子を威嚇する。


「ひぃ!」


 一歩、王子に近づくフェンリル。


「ひぃ!死にたくない!お前!助けろ!」


 尻もちをつきながら、命令してくる王子。


「嫌です」


「俺は王子だぞ!助けろ!」


「やだ!私、性悪女だから!」


 性悪女と言われた事は忘れてないぞ。

だが、王子は忘れたらしい。

皮肉に気付かない。


「王子命令だ!俺を助けろ!」


「う〜ん…どうしても?」


「俺は死にたくない!」


「じゃあ、魔物に襲われても、死なないようにしますね!」


「さっさとやれ!」



『魔物に襲われても死なない』



 私が王子に魔法を掛ける。光が王子を包む。


「これで安心だ」


 それを聞いて、フェンリルは、王子に噛み付いた。


「ぎゃ〜!痛い!痛い!」


 だが、すぐに噛み傷が消える。


「どういう事だ?」


「魔物に襲われても死なないようにしました!」


「え?…つまり…、襲われないようには…?」


「ならないですね!死ななくて良かったですね!」


「ぎゃ〜!」


 王子は逃げた。


王子は、途中で何度も魔物に噛み噛みされたが、死ななかった。


 ただ、毎回、痛みはある。


王子は城に着くと、一生部屋から出てこなくなった。






「森の向こうに、我が守護する地がある。そこの人間に、お前の家や服や食事を用意させようか?」


 フェンリルのこの言葉に、私は甘える事にした。


やっぱり野宿生活は、素人には無理だもんね。


 移動した先の国で、聖女として迎え入れられ、平穏な生活を送れる事になるとは、この時は思ってもいなかった。


読んでいただきありがとうございます

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