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第一部【第五章】燃える信念

 手術後、炎堂は患者の家族に静かに頭を下げた。

 ズタボロに裂けたスクラブは、まるで戦場から帰還した剣士の姿そのものだった。


「私は、医学の細かな理論には疎いかもしれない。――だが、貴方の大切な人を救いたいという信念は、誰にも負けない。この命を救えたのは、家族の熱い希望と私の魂が共鳴したからだ」


 家族は涙を流しながら感謝を伝え、炎堂は静かに、そして燃えるように微笑んだ。


 廊下で待っていた氷室が近づく。いつもの冷徹な表情が、微かに揺れていた。


「炎堂烈。君のやり方は理解不能だ。だが……結果は認める」


 彼は一瞬目を閉じ、若かりし頃の自分を思い出すように呟いた。


「君の言葉、信念……かつて私も、そんな熱い魂を持っていた。データと数字に囚われ、いつしか忘れていたものを、君は思い出させてくれた」


 炎堂は氷室の肩をガッチリ掴み頷く。


「氷室涼、大事なのはデータや数字じゃあない。成功率がいかに低くとも……たとえ失敗率100%でも、残りの0%に全てを賭け、それに挑む情熱と魂が奇跡を起こす」


 氷室は小さく微笑み、炎堂の肩に手を置く。


「フッ、そのバカげたほどの熱さが、患者の命を……そしていつか私の心を救ったのだ。ありがとう、炎堂烈」


 炎堂は鋭い目で氷室を見据え、燃えるように言い放った。


「君の知識は脅威的だ。熱い魂を取り戻した君なら、どんな試練にも燃え続けられる! これからも共に、命を救い続けよう!」


 氷室は目を潤ませながら、初めて心からの笑みを浮かべた。


「これが――『炎堂烈』という男、か……」


 聖陽総合病院は、炎堂烈の伝説で沸き立った。


 最低限の知識を持ちつつ、情熱と信念で不可能を可能にした男。

 その引きちぎれたスクラブからあらわになった傷だらけの胸板や二の腕は、命の戦場を駆け抜けた証だった。


 彼の名は「炎の外科医」として、医療の常識を可能な限り尊重しつつ、その情熱で新たな可能性を切り開く存在となった。


 患者の命を救うため全身全霊で挑むそのメスは、これからも希望の光として燃え続けるだろう。


 ――そして彼は次の“戦場”へと向かった。

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