第一部【第四章】奇跡の炎
手術は12時間に及んだ。
誰もが不可能と信じた大動脈修復が、炎堂の手によって完成した。
モニターに映るバイタルがなぜか安定し、患者の命が奇跡的に保たれた瞬間、オペ室は歓声に包まれた。
炎堂の赤いスクラブは汗と血でズタボロになり、まるで命の戦場を駆け抜けた剣士の鎧のようだった。
破れた布から覗く鍛えられた筋肉は、壮絶な闘いの証だった。
「成功した……! どうして!? ありえない!」
高城が絶句する。
炎堂は誇らしげに胸を張り、天高くメスを掲げる。
「諸君! このメスは命を切り開く炎の刃! 信念があれば、どんな絶望も、どんな闇も打ち砕ける!」
観察室の氷室は、信じられないという表情で呟いた。
「魂が知識を凌駕するだと……? なぜだ。なぜあの男が成功した?」
助手の一人が、感嘆の声を上げる。
「炎堂先生の信念が、患者の魂に火をつけたんです! 医学の常識を焼き尽くす情熱の炎です!」
別の助手が続ける。
「炎堂先生のメスは希望そのもの! 命の剣なんです!」
周囲の医師たちは、口々に炎堂を称賛し始めた。
「炎堂先生の情熱は、医療の限界を打ち砕いた!」
「彼の信念が、奇跡を呼び起こしたんだ!」
「彼は勇者だ!」
称賛の嵐は止まらず、オペ室はまるで炎堂の英雄譚を讃える舞台と化した。
医療知識や理論は完全に無視され、「信念」「希望」「炎」といった言葉が全てを圧倒。
患者の命が救われた事実は、炎堂の「魂」に帰結され、周囲は彼の熱さに飲み込まれていく。




