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第一部【第二章】炎堂烈、参上

 時計の針は、容赦なく時を刻んでいた。

 その瞬間、廊下に力強い足音が響き渡った。


「待ってくれ! この命は、私が必ず守り抜く!」


 現れたのは、聖陽総合病院の外科医・炎堂烈(えんどうレツ)、38歳。

 真っ赤な医療ウェア(スクラブ)に身を包み、鋭い眼光には揺るぎない決意が宿る。


 熱血漢として名高い彼は、スタンフォード分類や基本術式の知識は持つが、最新論文や複雑な理論にはやや疎い。

 同僚からは「情熱の(メス)」と呼ばれ、呆れられつつもその信念に心を動かされる存在だ。


「炎堂!? お前がこの症例に挑む気か?」


 山崎医師が声を荒げるが、炎堂はカルテを手に取り、静かに、しかし力強く、燃えるように言い放った。


「スタンフォードA型、緊急手術が必要なことは承知している。だが、今必要なのは知識やデータではなく、命を救いたいという信念! 目の前の患者を救うため、私の全てを賭ける!」


 高城が眉をひそめる。


「炎堂先生、知識は最低限でも、術中の血圧管理や心筋保護のプロトコルをどうするんです? 無計画では……」


 炎堂は高城を真っ直ぐ見据え、燃えるような声で答えた。


「高城君、君の言う通りだ。だが、命を救う信念は、患者の心に寄り添い、希望を灯す魂だ!」


 氷室が冷ややかに割り込む。


「炎堂烈。スタンフォードA型の術式は、人工心肺を用いた近位大動脈置換と弓部再建を要する。低体温循環停止のタイミング、脳保護の灌流圧、どれ一つとして誤差は許されない。君の『魂』でそれが制御できるのか?」


 炎堂は一歩踏み出し、氷室を真っ直ぐ見つめた。


「氷室涼、君の知識は尊敬に値する。だが、命を救うのはそれだけではない! 患者の魂に火をつけ、希望を握りしめる信念だ! その信念で、私はこの命を守り抜く!」


 そう言い放つと、炎堂はオペ室のドアを押し開けた。

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