氷室編【第二章】過去と決意
氷室涼――帝都医科のトップ外科医として名を馳せる彼だが、かつては聖陽総合病院の研修医だった。
20代の頃、炎堂烈と出会い、彼の無茶苦茶な「魂」論に呆れつつも、患者を救う情熱に心を動かされた。
ある日、研修医の氷室が失敗を恐れ手術を躊躇した時、炎堂が叫んだ。
「君の知識は武器だ、氷室涼! だが、患者の命を救うのはその武器を振るう魂だ!」
その言葉が、氷室の心に小さな火を灯した。
以来、彼は知識を極め、帝都でトップに上り詰めたが、聖陽に戻るたび、炎堂の熱さが彼の魂を再び燃やす。
会議室で、氷室は具体的な手術プランを提示する。
「PCIでは、薬剤溶出ステントを使用し、再狭窄を防ぐ。ECMOの流量は4L/minで設定、術中の心電図モニタリングで虚血再発を即座に検知。万一の心停止に備え、IABP(大動脈内バルーンパンピング)をスタンバイ。私の手で、この命、必ず守る」
高城が目を輝かせる。
「氷室先生、完璧なプランです! でも……炎堂先生は?」
その瞬間、廊下にドタドタと力強い足音が響いた。
「高城君! この命、私の魂で切り開く!」
聖陽総合病院の外科医・炎堂烈、38歳。
真っ赤なスクラブに身を包み、燃えるような眼光で現れた。
熱血漢として名高い彼は、最低限の基本知識は持つが、最新のPCI技術や薬剤理論には疎い。「情熱の剣」と呼ばれる彼の信念は、聖陽の医師たちをいつも振り回す。
「炎堂!? この症例は繊細すぎる! お前には無理だ!」
山崎が声を荒げるが、炎堂は力強く言い放った。
「山崎先生、中村さんの命を救うのは、データやエビデンスじゃない! 魂の炎だ!」
氷室が冷ややかに割り込む。
「炎堂。PCIは精密な判断が求められる。ステント留置の角度、ECMOの流量調整、どれ一つとして『魂』ではカバーできない。君に具体的なプランがあるとでも言うのか?」
炎堂は一歩踏み出し、氷室を真っ直ぐ見つめた。
「氷室、昔、君に言ったはずだ。知識は武器だが、その武器を振るうのは魂だ! ――わかるな?」
氷室は一瞬目を細め、炎堂の言葉を思い出した。
「フッ……なるほどな。では、君の魂をサポートに、私の知識でこの命を救う。準備を急げ!」




