第二部【第五章】灼熱の救済
警察に連行されるテロリストたち。
その列が止まり、リーダーが静かに振り返った。
彼の視線の先には、ボロボロのスクラブ姿で仁王立ちする炎堂烈がいる。
「お前……そのバカみたいな熱さは、一体どこから来るんだ!?」
リーダーの脳裏に、制圧される直前に炎堂が叩きつけた言葉が、火花のようにリフレインしていた。
『たとえ絶望しかなくても、燃える魂で突き進めば道は開ける!』
その言葉は、彼が封印していた10年前の記憶を、力ずくでこじ開けた。
――10年前。
(回想略)
「……忘れていた。俺もかつては、お前のような熱い魂を持ちたかったはずだった」
リーダーは、手錠をかけられた拳を震わせながら、天を仰いで叫んだ。
「炎堂烈! お前の魂が、俺の死んでいた心に再び火をつけた! 間違った道を選んだ俺だが、その情熱に……感謝する!」
炎堂は、ボロ布と化したスクラブを風になびかせ、燃えるように微笑んだ。
「貴様らの魂も、いつか正しい炎で燃える日が来る! 行け、そして自分自身に打ち勝ってみせろ!」
氷室が近づき、珍しく感情を込めて呟いた。
「炎堂烈、君の戦い……見事だった。君のサポートがなければ、手術の成功はなかった。ありがとう」
炎堂は燃えるように答えた。
「いや、氷室涼。彼女を救ったのは君だ。だが、君の知識や技術ではない! 君の中に眠っていた熱い信念が、患者の魂に希望の炎を灯したのだ!」
「フッ、君には敵わないな……炎堂」
氷室は小さく頷き、心からの笑みを浮かべた。そして炎堂の肩に静かに手を置く。
「炎堂。君の『患者を救いたい』という信念があれば、最新の論文や理論も難なく覚えられるはずだ。今度は学んでおいてくれ」
「そんなことより――飲みに行くか、氷室!」
炎堂は豪快に笑い、彼も氷室の肩を叩く。
聖陽総合病院は、炎堂烈の伝説で沸き立った。
最低限の知識を持ちつつ、情熱と信念で病院と命を守り抜いた男。
その原型をとどめないスクラブから覗く、傷だらけの腹筋は、数々の戦場を駆け抜けた証だった。
彼の名は「炎の外科医」として、医療の常識を焼き尽くす存在となり、その拳はこれからも命を切り開く炎として燃え続けるだろう。
【第二部・完】




