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夕暮れの遊園地
夕暮れの遊園地の、駐車場から、空へ、1つの白い風船が昇ってゆく。
眠くなった4才児の、小さな手から、彼の大事な白い風船が、離れて、ゆっくりと空に昇ってゆく。
車の中に入った子どもは、風船を失くしてしまったことに気がついて、急に泣き出した。
母なる人は、子どもの背中をさすりながら、「また買ってあげるから」と、慰める。
白い風船は遊園地の観覧車のてっぺんをとうに通り越し、空へ空へと昇ってゆく。
陽はとっぷりと暮れて、しずかな夕闇が郊外の家並を、遊園地を、黒く塗りつぶす。
白い風船が、闇の中、まだまだ空へと昇ってゆく。誰にも見つからず。
いつか風船が壊れ、その時にパチンと音がしても、気付く者は誰も居ない。