あの人の髪は紺色。僕は…
初めて開ける扉はいつだって緊張する。
僕は今まさにその扉の前に立ち尽くしている…
初めてくる美容院の扉。
気合を入れおしゃれなところにしようと思い予約したが、ドキドキする
なんでおしゃれな美容室はみんな自動ドアじゃないんだ…
そんなことを思いながらかれこれ5分は経ってしまった。
そんなこんなで予約の時間だ
そう思い初めての扉に手を伸ばした。
店内はなんというか落ち着く雰囲気だ。
深めの茶色を基調とした喫茶店のような感じ。
なのにスタイリッシュさを感じさせる。
扉が開くとレジカウンターにいた僕より少し年上の男性の美容師が微笑み
「いらっしゃいませ」と言う。
僕はイケメンに気を取られていると「こちらにおかけになってお待ちください」と言われた。
「は、はい!」と少し大きく返事をしてしまい、席に座る。
初回のアンケートを答えて席に案内される。
今回僕の担当するのは若めな黒髪のギャルっぽいお姉さんだ。
「今回カラーですねぇ。何色にしますかぁ?」
見た目に反してちょっと低めでおとなしそうな声だ。
「紺色でお願いします」
「紺色ですね。写真とかありますぅ?」
と僕の髪を確認しながら言う。
写真?
そう思いながら僕はスマホで紺色の写真を探した。
「こんな感じの色でお願いします」
僕は写真を提示すると、
「こうゆう色の紺色ですねぇ
…こうゆう女性の方好きなんですか?」
「え?ち、違います!」
僕はすぐ否定した。
「ふふっ、じゃあ準備しますねぇ」
と笑顔で席を外す。
僕が無意識に選んだ画像には可愛らしい女性のモデルが写っていた。
どことなくあの人に似ていると気づきなんか恥ずかしい。
はにかんでいると準備から戻ってきて作業を始めた。
「なんで髪染めようと思ったんですかぁ?」
髪に薬剤を塗りながら僕に尋ねる。
「僕も大学生になったんで、デビューしようかなって」
僕はそれっぽいことを伝える。
「青春っぽいですねぇ。てっきり好きな人の髪色の真似とかだとおもいましたぁ」
言われた瞬間ドキッとし、手から汗が滲み出る。
なんでバレた…。感が鋭いのか?それとも心を…
「は、はは…そんなわけないじゃないですか」
悟らせないために今できる渾身の笑顔で対応する。
「そうですかぁ?結構勘あたるんですけどねぇ」
少し残念そうな顔をしながら作業をする。
初めてのブリーチをしている間は他の人の髪のカットをしていた。
あの人も忙しそうだな。今日は人多そうだし。
セットしていたタイマーがピピっとなり美容師が僕の元に近づいてきた。
「色結構落ちてきましたねぇ。いっかい流しましょうかぁ」
そう言って僕はシャンプー台に連れて行かれた。
そして顔は白い布で覆われる。
ブリーチ剤を落としながら丁寧に洗われる僕の頭。
気持ちよくてうとうとしている。
ーピチャ
と一粒顔に水滴がかかる。
その途端僕の顔にすごい量の水がかかった。
「あの。顔に水かかってるんですけど」
返事はない。ただただ顔に水をかけられている。
「すいません!顔に水かかっ__お、おいやめろぉ!!」
怒りながら上半身をあげ顔にかかった布を勢いよく取る。
「…え?」
目の前にはおしゃれだった雰囲気の壁や天井は消え…草原が広がっていた____
毎週投稿頑張りたいと思っているんです。