運命の双子
私は双子の姉として生を受けた。一卵性双生児の姉である私「リマ」は妹「エマ」の事を愛してやまなかった。妹は私と瓜二つ。なのだが、鏡に映った自分の姿は反吐が出る程に気持ちが悪く、一方で妹は地上に使わされた天使そのものである。妹エマが視界にちらっと入るだけで気分が高揚し充足感で満たされた。私は妹エマに病的なまでに執着し妹もその愛を受け入れてくれた。朝から夜寝るまで、むしろ夢の中であっても一日中、妹エマと行動を共にしていたのだ。
小学校の入学式。大きく張り出されたクラス分けの用紙。違う組に載っていた「リマ」と「エマ」の名前。私はそれを見てカッとし職員室に乗り込み担任をカッターナイフでめった刺しにした。
担任が組分けを担当した訳でも無いし、双子を別の組として離す事は一般的ではあるので、担任にとってはひどいとばっちりであるのだが…。
学校側としても苦渋の決断ではあったのだろうが、私と妹エマは特殊な事情があるとして同じ組として通えるようになった。またそのような刃傷沙汰があった事はクラスメイトには配慮し隠蔽され、刺された先生は泣き寝入りすることになり、そのまま教師を辞めてしまった。担任は副担任が務め、酷く私達双子に怯えていた。そして小学校の6年間は私達姉妹は2人同じクラスで過ごした。
中学校に入学する。小学校1年生での私の凶行ともいえる噂は子供同士では伝わっていないが県内の学校にはお触れが出ていた。それは幸いなことに中学でも私達姉妹は同じ組として通う事ができた。毎年同じ組で常に一緒にいる美人双子姉妹は隣町・隣の学校にまで噂が広まるようになった。朝2人で一緒に腕を組んで登校する際に別の学校の男子がこちらを遠目で見ている。私は妹エマの崇高な気高さを他人の目に触れて欲しくない気持ちと誇らしい気持ちの綯い交ぜとなった、いたく複雑な気分であった。
中学校にもう一組の一卵性双生児の兄弟がいたが、双方に目を合わせようともしていない。生活環境が同じ、かつ一卵性双生児はDNAが同じであるので容姿が似る。アイデンティティーの確立の妨げになるので思春期や反抗期は仲が悪くなるものだという。しかし私達姉妹はそのような通説は何のその。妹エマは更に美に磨きをかけ世界をあまねく照らす大天使だと思っている。長くサラサラな栗色の髪には天使の輪が光り、大きく青みがかった目は輝き吸い込まれそうになる。肌は白く透き通りまさに輝いているのだ。未成年でこれなのだ。このまま大人に成長したら、私のようなドブスは妹エマの近くにいては蒸発してしまうだろう。妹エマは
「リマお姉ちゃんの方が綺麗だと思うんだけどなぁ」
なんて言うけど、私なんてそこらへんのただの汚物である。
高校3年のある日。本当に何でもない平常の一日であり、永遠に忘れない日。それは私達が18歳に成人する前日の夜19:40。姉妹でリビングに居てTVのバラエティー番組を見ていた際に
「ちょっと部屋に携帯取ってくるね」
妹エマがそう言い席を外した。10分程経っても妹エマが戻ってこなかったので妹の部屋に声を掛け中を確認するが妹は部屋にいなかった。トイレにも浴室にも、両親の寝室、ベッドの下、押し入れ、天井裏まで確認したが妹は消えてしまっていた。そしてその日、妹エマが家に帰ってくることはなかった。
警察に捜索願を出す一方で、私は学校に行かず妹エマの足取りを探すべく近所に聞き込みを行なう。その中で妹エマが近所のケーキ屋に誕生日ケーキを注文しており、昨夜20時前に受け取りに来たことが分かった。姉である私に誕生日ケーキをサプライズするつもりだったのだろう。私はなおのこと妹エマに会いたい気持ちを膨らませつつ妹エマを探し続けた。
2年後…
私は今、あの日の妹エマと同じ目に遭っている。私の嫌悪感が最高潮に高まった時。それが復讐の時。人を呪わば穴二つ。どちらの穴にも毒をたっぷり塗り込んであるのだ。
予定通り小学1年の元担任と6人の男の死は看取った。私も逝くよ。会えるといいな。エ…マ…
