ひまわりの花が咲く頃に
あの日、家から裸足で逃げ出してきた僕をいざなった、太陽のにおい。
居場所がなくなった僕に安らぎのひと時を与えてくれた。
あざだらけの体で、必死に走ってきた僕をやさしく包み込み、「どうしたの」とその黄色い顔を太陽に向けながら尋ねる。
「別に何もない」
僕は答える。
僕の背丈の倍もある君を見上げて、僕もこんなに大きければ、と思う。
「僕もいつかそんなに大きくなれるかな」と聞くと、「なれるよ」と言う。
「またここに来てもいい?」と僕は尋ねる。
君は黙って、陽光に顔向けたまま、生ぬるい風にその身を任せる。
やっぱり、この世界には僕の居場所はない。
重い足取りで、君に背を向ける。
もと来た道に出たとき、君は言った。
「私たちはいつでもあなただけを見つめているわ」
振り返った僕の目に映るのは、まぶしいほどの黄色だった。
また今年も、照りつける太陽の季節がやってくる。
その懐かしいにおいがする度、僕は思う。
「あの日の君にもう一度会いたい。」