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「結局、お前も俺たちを邪魔する側なんだろ?」

 さっきから敵対意思全開の真田。

 シグナルも真っ赤だし、やる気満々ってところか。

「いやいやいやいや、別に邪魔する気はないんだけどな?」

「嘘こけ。なら、何で俺たちに関わる?」


 戦うならこいつが向かってくるのか・・・?

 だとしたら何を使ってくる?

 見たところ丸腰っぽいような気もするが・・・


「話は終わったか?」

 ジェシカとキースがやって来て、

「あいつらの拘束はしておいたぞ」

「・・・ああ、助かる」

 二人は俺の前に立った。いつもの布陣だ。

「丸腰か?」

「油断するなよ。あいつら、結構やるかもしれん」

「何でだよ?」

 さっきまでの話が聞こえてないらしい。

「そりゃあそうだろ。俺たちは転移者だからな」

「あっ、テメッ」

 あっさり言いやがって!

 こっちの気も知らずによくも!

「転移者・・・マジかよ」

「初めて見た・・・」

 この二人は初遭遇か・・・

「でもよ、転移者だから気を付けろってのは何でだ?」

 ・・・そういう疑問も当然出てくるよなぁ。

 これは知ってる人が知ってるとか、興味があるから知るとか、そういうモンだからな・・・たまたま遭遇したとか、どうでもいいヤツはどうでもいい、そういう内容になる。

 しかも、遭遇が初めてなら、そもそも知識がなくてもおかしくない。

「伸二、気を付けなさいよ。剣士は麻痺属性の剣を持ってるわ」

「あ、え?な、何でバレた?この剣を知ってるのか?」

「あと、そのエルフ娘。どういうわけか格闘家よ」

「どういうわけってどういうこった?あ?」

 見た目が分かりやすいからジョブを言い当てられるのは仕方がないが、こういう内容も筒抜けってのは痛いな・・・

 ジェシカの場合は大した情報が出てこないのが余計に悲しい・・・

「表にいるのは白魔術師ね。あとは・・・ん?」

 ・・・このリアクション!!

「突っ込め!!」


 これは更に後ろにいるあいつらのことだろう・・・!

 でかいほうか?もしくは・・・?


 どっちにしても、これ以上余計な情報を知られても困る!

 どうせ戦う気満々のヤツだ。一気に行かせてもらう!


「おお、向かってくるのか」

 真田が久米の盾になるように前に立った・・・?

「どけ!!」

「行かせねぇよ」

 こいつ、どういうスキルを使ってくる・・・?

 分からないが、あの女のテレパシーを止めないことには!

「スローエッジ」

 真田が腰の辺りからナイフを取り出して、すぐさま投げつけてきた!

「うおっ!?」

 なんとか避けることはできたが、体勢を崩されてしまった・・・!

「隙あり」

 真田が右側にスッと避ける。

 奥でベンチに座ったままの久米が、左手をこっちに向けていた。

「ダークセイバー」

「おいおいおいおい!!」

 濃い紫の光が瞬間的に集まって撃ち出された!

「どわぁ!!」

 ドオン!!

 紫に光る刃が足元に突き刺さる!

「あっ、ぶねぇ・・・!」

 板張りの床に大きく穴が開いた・・・

 なんとか跳んで避けることができたが、これは想定外の威力・・・!

「こいつら・・・!」


 ナイフ使いと、闇属性魔法の使い手・・・?

 ってことは盗賊と白魔術師か!!


 ナイフ投げのスキルはあった。武器を失うことになるから俺は避けたが、こいつは躊躇うことなく投げてる。

 しかも、こいつが投げたのは割と小型のナイフ・・・首にぶらさげられるレベルのブッシュクラフトナイフだろうか?


 そして闇属性魔法ときた。

 光魔法の真逆の属性。威力も高く、あまり苦手がない魔法でもあるらしい。

 意外性もあったが、驚かされるのはこの威力。

 リオーネのシャインセイバーも威力はあるほうのはずだが、こいつの一発はかなり強いイメージだ。強めに撃ったのかもしれないし、ジョブの効果もあるんだろうが、それは置いておいても相当ビビるレベル。


 遠距離攻撃のコンビだが、物理と魔法が揃っていて、しかも久米のほうがテレパシー持ちってか。


「だが!」

 冷静になれ。

 真田はナイフを投げた。いくつか持っているかもしれないが、そんなに本数を持っているようには見えない。

 少なくとも、攻撃力は低下しているはずだ!

「まずはあんたからだ!」

「詰めるぞ!」

 キースが鞘に納めたままの剣を振りかぶり、突っ込んでいく。

「俺の武器が今のナイフだけだと思ったのか?甘いぞ」

 真田がまた腰に手を添えていた。

 確かに小さいナイフ・・・いや、手裏剣とか言うべきか?サイズ的にまだ持っていそうだが、捌けば済む話。

 ここは一気に詰めてボコボコになってのびてもらうか!

「スローエッジ」

「おっと!」

 アンダースローでまた投げてきたが、これは革紐で弾くことができた。

 刃に負けないか心配だったが、ランドリザードの素材で作られているから頑丈なのかもしれない。

 これなら真っ向から弾き飛ばしても問題なさそうだ。

「まあ、武器は問題ないでしょうね。でも」

 久米がまた手をこっちに向けていて、

「あたしも黙ってないんだけど」

「・・・ほお」

 そりゃあまあ、そうですよね・・・そうなりますよね。

「ダークアロー」

 またまた紫の光が集まって、闇の矢が発射され、

「俺!?」

 今度はキースが狙われて、

「うおおおおっ!?」

 咄嗟に腕で受け、吹っ飛ばされた!

「キース!!」

 手甲を装備していたから直撃はしていないものの、かなりの威力に吹っ飛ばされている・・・!

 しかも、手甲はもう粉々!

 こりゃあ、生身だと腕の一本くらい吹き飛ぶな・・・何とか装備で弾かないとヤバい。

「だが・・・!」

 やることが変わらんのが悲しいところよなぁ!

「あたしが前に出る!!」

 ジェシカが構えて突っ込んで行った!

「キリヤは隙を突け!」

「おう!」

 そう、それしかない!

「あれくらいなら耐えられるはずだ!」

「耐えられる?麗香の魔法を耐えられるとか言ったのか?あのエルフ」

「リジェネ!!」

 ジェシカにはこれがある!

「は・・・?回復魔法?」

 自動回復魔法を使って、攻撃を受けた瞬間から治癒をしていけば、直撃を受けたとしてもすぐさま回復できる。

「近寄ってくるなら、刺すまでだろ」

 真田がナイフをまた抜いていた・・・!

「どけ!!」

「スローエッジ」

「ジェシカ、避け―――」

 避けろと言いたかったが、ナイフを投げるほうが圧倒的に早い。

「うっ!!」

 ジェシカの腕にナイフが突き刺さる!

 右腕でガードして直撃は避けたが、手甲を貫通している・・・!

「おおおっ!!」

 それでもジェシカはそのまま突っ込み、左腕を振りかぶって、

「グローパンチ!!」

 真田に向かって打つ!

「ちっ!」

 真田はひらりと躱して避けた・・・!

「おっせぇ攻撃だな。そんなもん、当たるのか?」

「うっせぇよ。テメェこそ、どこ狙って投げてんだ?あ?」

 ジェシカは真田を左手で指差しながら煽る。

「腕に刺さったってこたぁ首か胸か?防がれたら意味ねぇけどな!」

「・・・調子に乗るなよ、エルフ女」

「テメェこそ調子に乗るな!エルフ舐めんなよ!」

 ジェシカは右手に突き刺さったままのナイフを掴んで、

「ぐっ、うぐぅ!」

「おい、無茶すんな!」

「うるせぇえええええ!!!」

 ジェシカは突き刺さったナイフを抜き取った・・・!

 そういう演出は映画とかでもよく見るが、あれはフィクションだから見られるわけで、リアルのそれは生々し過ぎてダメだ。本当に良くない。

「ふうぅぅぅぅぅ」

 ナイフを握った左手が震えている。相当痛いだろうに・・・

「おら、こんなモンじゃ大したダメージにならないぜ」

 ナイフを床に投げ捨てて、

「どんどん投げて来いや!!すぐさま回復したらァ!!」

 すぐさま右拳を固めた。

 元々回復力は高いはずだし、傷の治りも早いとしたら問題はないんだろうが、受け続けるのはさすがにいただけない。

 傷は治っても出血量まではカバーできない。いくらガードが効いてるとは言ってもダメージだって回復しきれるもんじゃない。

 ジェシカのやる気が最高潮のうちに倒さにゃ大変なことになる。

 何か攻略の糸口を掴まないことには・・・


 ナイフと闇魔法の遠距離攻撃と、テレパシーの隙なしコンボ。

 これの攻略方法は・・・


「・・・!」

 そうか・・・こういうカラクリだったか!

「ジェシカ、仕掛けろ!」

「おう!!」

 だとしたら、ここはジェシカに託すしかないか・・・!

「伸二、早く決着つけなさい。気付かれたわよ」

 あっちも俺が察したのに気付いたか・・・

「マジか。早いな」

 相手はテレパシー持ちだし、バレるのは仕方がない。

「とにかく仕掛けろ!!」


 気付いた変化点。

 真田が投げたナイフが消失した。


 一投目のナイフと、ジェシカに当てたナイフ。二本とも見当たらない。

 特に二投目のナイフは、ジェシカの血が付いていて、あいつが投げ捨てたから床に血痕が付いている。その辺りに転がっているはずだが、それが見当たらない。

 普通、物質が何もせずに消えることはない。燃やすなり砕くなり、何かしら処理が必要になる。

 それでも無くなる。それは何故か?


 あのナイフは複製で増やされた物だからだ。


 複製は命や金以外の物を一定時間増やすスキルだ。

 俺は紙やロープなんかを増やすことが多いが、武器も複製できる。鞭を増やすことにメリットがないから俺はしてこなかったが、真田みたくナイフを投げる場合は旨味がある。

 スローエッジはナイフ投げのスキルだが、投げたナイフは返ってこない。一種の使い捨てっていうイメージでいいだろう。

 手元に武器が無くなってしまったら、後は逃げるか、自分の体で戦うかくらいしか選択肢がないが、複製で増やし続けて投げることができれば戦い続けられる。

「回復スキルは抜けた血は戻せないって聞いたことがある」

 真田はナイフを増やして投げてくる。

「いつまで俺の攻撃を受け続けられるんだ?お?」

「ンな攻撃、大したモンじゃねぇよ!!」

 ジェシカは攻撃を受けて耐えているが、

「ぐっ!!」

 やっぱり痛みは隠しきれない・・・

 どうやら、生物には痛みのキャパってのがあるらしい。必要以上に受け続けられない。

 この戦い・・・長期戦ができない!!

「ダークアロー」

 また矢が撃ち込まれた!

「ぐはっ」

 放たれた矢はジェシカの右太ももに直撃した!

 あまりの威力にジェシカが片膝を突いてしまう・・・!

「これで終わりだ」

 真田がナイフを複製して投げようとしている・・・!

「投げさせるかバカ!!」

 早い攻撃で真田を狙い、

「伸二、避けなさい!!」

「あ!?」

 ベシッ!!

「ぐあ!?」

 ・・・攻撃が当たった・・・

 テレパシーで相手の思考を読んでいるのに・・・?

「・・・そうか」

 そういうことか・・・!


 テレパシーの攻略、思いの外どうにかなりそうだ!!

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