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「よし、手はず通りにな」

「おう」

「行くか」


 俺とジェシカ、キースの三人で、集会所の正面に並んだ。

 作戦は単純。速攻でチンピラ三人を倒して、転移者の二人に挑む。


 転移者二人を倒す・・・っていう風に言えないのは、その二人の力がどんなもんなのか分からないからだ。


 チンピラたちを扇動するだけならまあ、できなくもない。今の俺の状況に近い。まあ、俺はマーベルさんたちを扇動なんかしてないが、誰かを巻き込んで動くことはできている。そういうこと。

 だが、村全体はさすがに無理。人っ子一人の力で、そんなこと簡単にできん。

 少なくとも、大なり小なり強いスキルを得ているだろう・・・っていう想定で動いたほうがいい。


 例の二人がどんな力を持っていようと、スピード感を持って動けばどうってことはない。

 俺たちはモンスター相手の経験は多くても、対人はほぼ無い。工夫しても立ち回りに無理が出てくるだろうし、小細工は不要。

 作戦会議すると言ったものの、よくよく考えれば大したことはできなかった・・・っていうオチもある。悲しい。


『少年』

 ・・・アポロか。

 これから行くって時にどうした?

『内部の様子がおかしいのである。確認しておくがよい』

 ・・・お前、最近割と協力的だな?何かあるのか?

 いや、まあ、それはそれだな・・・警告してもらってるし、警戒しておいて損はない。

 念のためバードアイで見ておく。

「・・・あれ?」


 さっきまでチンピラ三人はフロア中央、転移者二人は教壇の奥にいたはず。

 転移者二人の位置は変わらないが、チンピラたちの位置が変わっている。

 一人は中央で杖持ち。残り二人は分かれてドアの側。


「これは・・・」

 明らかに待ち構えてる・・・!

 ドアを開けて入っていった瞬間、両脇の二人が襲撃。中央の杖持ちが魔法を撃ち込むって寸法か。

『先ほどの話を踏まえると、この先にいる二人も転移者・・・スキルを使いこなしている可能性は否定できないのである』

 ・・・スキルか。

 村の様子は目視できなくもないし、窓から眺めていて俺たちが食料調達係二人を拘束したのが見えたのかもしれないが、スキルの可能性もある。っていうより、そっちのほうが可能性が高いか?

 中の様子が変わっていることを踏まえると、危険感知を習得している可能性があるか。

 ただ、あれはある程度対象を捉えていることが条件で発揮する。

 となりゃあ、やっぱり目視で確認している・・・?

「・・・分からん」

 ここでうだうだ考えても分からんし、やることは大して変わらんってのが現実か。

「・・・リオーネさん」

 離れた場所で待機しているリオーネを呼び寄せて、

「どうしたの?」

「正面に一人いる。たぶん白魔術師だ」

「え・・・?どうしてそういうことに?」

 それは俺も聞きたい。

「一発撃ち込めるようにしてくれ。矢でも刃でもいい」

 こっちの攻撃で撃ち抜けるのが一番いいが、最低でも相殺させたい。

「了解。刃だと集会所を壊しちゃうから、矢でいくわ」

「頼む。少し離れててくれ」

 相手がどういう魔法で来るかは分からないが、一点集中で撃ち抜けるかもしれない。

「二人とも、いくぞ。襲ってきたらすぐさま倒せ」

「おう。腕が鳴るぜ」

「っしゃあ、行くか!」

 こんなしょうもないこと、とっとと終わらすに限る。

 ドアに手を掛けたら、


「キリさん!!避けて!!」


 ・・・は?ヴェロニカ?

 なんて思った瞬間、ドアが急に光って破裂した。

「うぼぉあ!!?」


 あれ?何が起きてる?

「キリヤ!?」

「どうなってんだ!?」

 それは俺が聞きたい!

「ち、チョト、マテ・・・」

 ちょっと状況整理しませんか・・・


 突入しようとした。

 ドアに手を掛けた。

 ドアが光った。

 ドアが破裂した。

 吹っ飛ばされた。

 地面に転がった。今ここ。


 うん・・・攻撃されたな。

 エフェクトからして光魔法・・・面積からしてシャインアローか?

「うぐっ」

 メチャクチャ痛い・・・いや、痛いことは痛いが、思いの外どうにかなってるっていう感想。

 たぶん、ドアが緩衝材になってくれたおかげだ。魔法の直撃を避けられたのは大きい。まあ、そのドアの破片が所々体に突き刺さってきたのは仕方がない。

「大丈夫か!?すぐに回復を―――」

 ジェシカが回復をしに走ろうとしたが、

「おらぁぁぁっ!!」

「うおっ!?」

 中から大柄の男が飛び出してきた。

「こいつ・・・!!」

 片手にナイフ・・・!

「んだテメェ!!」

 咄嗟に手甲で弾けたようだが、下手したら刺さってたかもしれん。

「ジェシカ、そいつは俺がやる!キリヤの回復を」

「お前の相手は俺だよ!!」

 反対側で待機していた剣持ちがキースに襲い掛かってきて、

「くそっ!!」

 ジェシカを回復に向かわせようとしたキースだったが、そっちに動きを阻まれる・・・!

「ちょ、ちょっと、どうするの!?」

 撃ち込むつもりでいたが、連中の動きで乱されて、矢を撃ち込むつもりでいたリオーネが困っている。

「お、落ち着け、リオーネ」

「キリヤくん、大丈夫なの!?」

「なんとかな・・・」

 ダメージがないわけじゃあないが、思ったより痛みはないし・・・動ける!

「・・・この様子だと」

 リオーネの動きも読まれてるな?

 このカラクリを解き明かさないとしんどいが、勝機がないわけじゃない。

「集会所に撃ち込め!」

「え、あまり威力抑えられてないけど!」

「大丈夫だ、いけ!」

「い、いくわよ・・・?シャインアロー!!!」

 リオーネが強めのシャインアローを撃ち込む!

 中で強く光を放って炸裂したような音がしたが、

「二人とも、援護しろ!!」


 とにかく突入だ!

 今なら中の連中も目が眩んでいるはず・・・この隙を縫っていく!


「どけオラ!!グローパンチ!!」

「おぼおっ!?」

 ジェシカがナイフ持ちを殴り飛ばし、

「ふんっ!!」

「ぐえっ!?」

 キースが剣持ちを鞘で殴り倒す。

「え、うわ!?突っ込んできた!」

 中央に杖を持った白魔術師。

 この慌てよう・・・撃てる状態じゃないな!

「倒れてもらおうかな!!」

 鞭を抜いて、シンプルに叩く!

「お、うわ!?」

 一発目は杖で弾かれた。

「シッ!!」

 魔法を使う隙を与えないように、二発、三発と続けて叩く!

「あっ!?」

 続けて鞭を繰り出したことで、杖を弾くことに成功。

「ほらよっ」

 更に追撃で、革紐を叩き込む!

「いだっ、ううっ!?」

 腕で防御されてしまったが、その場で倒すことはできた。

 がくがくしているし、麻痺が回ったんだろう。これでしばらくは動けないはずだ。

「よし・・・」

 表の二人も軽く潰してるし、リオーネに牽制してもらえれば動きを封じることはできる。

「あとはあんたらだ」


 教壇の奥にベンチが二つ、横並びにされていた。本来ならフロアに並べられている物だろう。

 そのベンチの周りに小さいテーブルを三つ置いていて、何かの料理と、フルーツの盛り合わせが載せられている。

 ちょっとした別荘のそれに近い雰囲気だ。

 そんなところに、

「・・・案外やるな」

「ね」


 ・・・こいつらか。

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