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 正確な数や出現する周期なんかは不明だが、一定数やってくる存在。

 この世界には無い物を持っている存在。

 この世界の常識外の存在。


 転移者。

 俺もそれに該当する。


 今回の相手は転移者か・・・

「なんか分かったのか?おい」

 ジェシカが尋ねてくるが、

「・・・まあ、な」

「何だよ、歯切れ悪いな」

 どう返答したらいいのか迷う。


 どうやら、ラヴィリアでは転移者は珍しくないって話だ。一定数いるし、協会にたどり着く数より力尽きる数のほうが多いから、接触する機会が少ないだけ。

 召喚先は完全にランダムだとアルテミナも言っていたし、ボルドウィンだけじゃなく、ここシルフィもそうだし、他の大陸にも召喚される。

 俺がヴェロニカと出会ったように、ここの連中もその二人と出会ったのか。


 だったら合点がいく。

 村に現れた時に疲弊していたのは、召喚された先が人がいない土地で、食料を求めてさまよい続けたからだ。腹が減るだけじゃなく、雨風に打たれて体力も削られていただろうし、モンスターに遭遇して追いかけ回されることもあっただろう。

 この世界の優しくない現実を受けた二人、ってことか・・・


 転移者だってことを伝えるのはできる。

 だが、ここの連中が転移者に対してどういう考えを持っているのか分からない。


 幸い、ヴェロニカは珍しいと思いつつ、お互いを利用しあうことでその存在を了承してくれた。元々、偏見もないんだろう。

 だが、村を陥れている例の二人はどうだ?

 恐らくだが、話が繋がらないことも、素性が分からないことも不思議に思いながらも、転移者だってことに気付いていない可能性も高い。

 転移者がやらかしていることを踏まえると、例の二人は当然だが、これから接触するかもしれない連中に偏見を持たれるかもしれない。

 俺のことはどうでもいいが、大勢に余計な情報を与える必要があるのかどうか迷うところだ・・・

「キリさん」

 ヴェロニカが呼びかけてきて、

「その辺りは黙っておいたほうがいいかもね」

 ・・・やっぱりそう思いますか。

「たぶん、協会の受付でもそういう話が出るはずだよ。キリもそうだったでしょ」

 そう言えば、文字を書いたら、日本語がこっちの文字に変換されていた。

 それを目の当たりのするのは、協会の受付嬢。真っ先に目の当たりにするわけだし、知らないわけがない。

 協会も個人情報の管理はそれなりにしているだろう。村長に報告するかどうかは分からないが、

「?」

「ああ、いえ、ふっふっふ」

 この様子からして、報告はされていないらしい。

「この村は首都からもそこそこ離れているし、接触する機会がなかったのかもしれないね。キリは特別何もないけれど、例の二人の場合は騒ぎを起こしてしまってる。余計な情報を与えて、今後の人たちに偏見を持たれたら困るかもしれないし、黙っておいたほうが得策かもしれないよ」

 今後のために黙っておく、か・・・

 賛否両論ありそうな対応だが、

「・・・うし、とりあえず話を進めるぞ」

 今は目の前の状況をクリアすることに専念する。

「・・・よろしいのですか?」

 マーベルさんも察してくれたようだが、

「まあ、今ここでうだうだしててもしょうがないし」

「それは確かにそうですが・・・」

 仮に伝えて偏見を持ってもらっても結構だ。どうせここに長居しないしな。今後のこの村がどうなろうと知ったこっちゃない。

 だが、知らないことが幸せなこともある。

 知らないってことは強い一面が絶対にある。この件はそれに近い気がした。

「二人は確保できた。残っているのは五人」

 転移者の二人と、この村のチンピラ三人。

 数的不利はだいぶマシになった。本丸に挑む前に二人倒せたのは大きい。

 問題は転移者たちがどれくらいの能力を持っているのかどうかだが・・・

「村長さん、その村の外から来た二人って、どういうことができるんです?」

 とにかく情報だ。

「どういうこと、とは?」

「どういうジョブを選んだとか、戦うスキルを持ってるとか、そういうのですよ」

 状況からして、現れた後は介抱しているだろうし、パスポートも発行しているだろう。

 現代人ならゲームの一つや二つしていてもおかしくないだろうし、こういうことができる、ああいうことができると想像するのも簡単なはず。

 こういうことをやらかしている以上、何かしら設定はしているはずだ。

「ワシらも詳しいことは聞いておりません。自立できるようになった後は二人で行動することが多くなりましたし、村の者たちも知っていることは多くないかもしれませんね」

「ぐぬぬ」

 情報なしか。

 この二人、もしかしたらパスポートを相当使いこなしてる?

「モンスター退治もしているかもね」

 どうやらこの世界は、モンスター討伐で得られる経験値のほうが圧倒的に多い。そこに気付いたなら、武器を手に入れて討伐に向かってもおかしくはない。

 何かしら戦う術はある。それくらいは覚悟しておいたほうがいいだろう。

「・・・やることは変わらんな、これは」

 バトルは避けられないだろう。少なくとも、チンピラどもとは。

 例の二人に関しては、話が通じればワンチャンやり過ごせるだろうが、話が通じるような予感はしない。こっちとも戦うことを覚悟せにゃあならん。

「みんな、作戦を考えるぞ」


 やるなら、それに向けて準備するだけだ。

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