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「おや・・・?」

 行ってすぐ帰って来たからか、村長が怪訝な顔をして、

「何かありましたかな?」

「いや、ちょいと話を聞きたくて」


 人数はざっくり分かったし、あとは実力でどうこうできるかどうかを知りたい。

「武器を持った連中の実力を知りたいんです」

 いざ戦うってなったとして、自分たちより格上だったとしたら、相当しんどくなる。

 じゃあ格上なら逃げるのか?って思われるかもしれないが、そういうことじゃなくて、作戦を立てる材料にしたいわけだ。

「一人だけ戦闘職だったかのう?あとは農家と林業を生業としていたはずですが・・・」

 五人中一人だけが強い可能性が高い、と。

「それはどいつです?剣、ナイフ、斧、杖がいましたけど」

「杖じゃったかな。白魔術師をしておったと思います」

 一人は魔術師か・・・厄介だな。

 ただまあ、配置的にはこっちに分があるかもしれない。上手く立ち回ればいけるか?

 あとは武器を持っただけの素人。スキルさえ習得すれば技は使えるわけだし、警戒はもちろん必要だが、キースみたいに専門でやってない分、楽かもしれん。

「だったら殴り込めば楽だな!」

「まあ待てまあ待て」

 素人を潰すのは楽かもしれないが、残念ながらお前はスロースターター。あったまるまではイイ勝負するどころか、押される可能性もある。

 やっぱシンプル殴り込みは難しい。作戦は必要だな・・・

「あとは夫婦がいますよね?あいつらは何者なんです?」

 問題はそこだ。そこの情報が重要。

「あの二人は・・・」

「すいませーん、食糧調達に来ましたァ」


 若めの男が二人やって来た。

 パッと見、二十歳になるかならないか、あるいは高校生くらいか?

 一人は斧を持っている。もう一人はナイフを腰のベルトに取り付けている。

 表で見張っていた二人か。


「またか・・・」

 村長のため息が凄い。

「もうほとんど残っておらんわ」

「またまたァ。まだ食糧庫にあるのは知ってるんですよォ」

 このノリは高校生・・・いや、若手芸人か?

 どっちでもいいが、このやり取りもそこそこやってるんだろう。対応に感情がにじみ出ている。まあ、被害を考えれば出るのが当たり前だろうが・・・

 とりあえず、目の前に二人が出てきている。

「・・・バードアイ」

 バードアイを使用。

 辺り一帯に連中はいない。あの夫婦を含めて、集会所で待機している。

 ずた袋を持って来ている辺り、言っていたとおり、食料品を取りに来たって感じか。

 ・・・目の前に敵は二人だけ・・・

「・・・おい、ジェシカ」

 一応、確認しておきたいことがある。

「・・・何だよ?」

「お前なら状態異常を回復させるのにそうそう時間は掛からないよな?」

「・・・お、おう。まあな。でも、状態によるぞ?一撃で死ぬような強力な効果は除去に時間が掛かる」

 であれば、どうにかなるか。たぶん!

「・・・何だ、お前ら?見かけない顔だな」

 二人が俺たちに気付いた。

 この村もそんなに人が来ないから、見知った顔しかいないっていう環境だ。こうなるのは想定済。

「ああ、ちょいと用事があってな。さっき来させてもらったんだが」

「へぇ、そうかい。じゃあとっとと帰ったほうがいいぜ。こんな辺鄙の村に何もないからよ」

 元々こういう性格なのか?それとも勢いが余ってる?

 どっちにしてもしていることはろくなモンじゃない。

「何もないかどうかは他人が決めることでお前らが決めることじゃないな」

「・・・あ?何だお前?」

 斧はマンガとかでよくある刃がデカいタイプじゃなくて、アウトドアで使うような現実的なタイプ。当たってヤバい範囲は思いの外狭い。

 ナイフに関しちゃ初心者モデルのように見える。

「何でもいいだろ!」

 村長から離れて、一気に詰める!

「あ!?お前!!」

「ちょいと風邪引いてもらおうか!」

 鞭を抜いて、最寄りのナイフ持ちをしばく!

「いってぇ!?」

 一発しばき、

「何で戦闘職が村にいるんだ!?」

「もう一丁!」

 ナイフを抜こうとしているが、構わず追加でもう二発入れる!

「こいつ、うっ!?」

 動きが止まった。

 口から泡を吹いている・・・毒が回ってくれたか!

「うげぇっ・・・!!」

「おい、大丈夫か!?」

 倒れ込んで吐いている。

 モンスターも悶絶するくらいの毒だ。人間だったら相当なダメージだろう。

「二人とも、囲め!!」

 片方が動けないし、斧持ちを封じれば勝てる!

「おっと!」

「動くな!」

 ジェシカとキースと連携して、二人を囲んだ。

「ここでボコボコされろ。な?そうしろ」

「悪党の物言いだぞ、それは・・・」

「ぐっ・・・くそ・・・!」

 向こうはこっちの実力を知らない。今はジェシカの火力が低いことも知らない。

 手甲を装備した格闘家が一人いる。それに加えて、キースがいつでも抜刀できる状態で待機している。

 これだけでも十分脅威だろう。特に素人には。

「どうする?お前もそいつみたいにゲロ吐きたいか?」

 格闘家、剣士、状態異常を引き起こす鞭持ちの合計三人に対して、そいつらはもう一人しか動けない。

「どっちにするでもいいぞ。戦うなら戦うで結構だし。でもな、早く判断しないとそいつ死ぬぞ?」

 毒が回った男の動きがかなり弱まっている。

 相当回ったんだろう。

「おい、キリヤ」

 ジェシカが強く呼ぶ。そろそろ危ないってことか。

「大人しくお縄につくなら、そいつを助けてやるよ」

「お前っ・・・こんなことをしてタダで済むと思ってんのか!?」

「済むかどうかは一旦置いとけ」

 だいぶ強がるな。

 集会所にいる三人が強いのか、それとも例の夫婦がよっぽどヤバいのか・・・?

 それは今どうこう言っても分からない。今は目の前のこいつらを潰す。

「考えなきゃいけないのは俺たちじゃなくてお前らだよ。相方はもう死にかけだし、一対三で俺たちに勝てるのか?」

「やってみるか?」

 キースが剣を抜刀。太陽光による反射でギラリと刃が輝く。

 それを見て男は生唾を飲み込んだ。

「・・・キリヤ」

 あ、そろそろマジでヤバい。もうほとんど動いてないし、顔色も青い。

 このままいくと俺が処罰を受ける。それだけはマジで勘弁してほしい。

「降参するならボコボコにするのは勘弁してやろう。転がってるのは友達か?そいつも助けてやる」

 寧ろ助けたい!今後のために!

「・・・分かった。降参する」

 よしキタァ!!

「武器を捨てろ」

 手斧を捨てさせて、

「キース、抑えてくれ」

「おう」

 剣を納めたキースが、男を取り押さえる。

「ジェシカ」

「おう」

 すぐさまジェシカが倒れたヤツの解毒に取り掛かる。

「・・・あとちょっとで死んでたぞ、こいつ」

 ・・・でしょうねぇ。モンスターも肩で息をするレベルの毒だからなぁ・・・

 だからってこういうのは加減が利かないからなぁ。またこういうことをする機会があったら、やり方は考えよう。

「酷いわねぇ・・・あの子」

「あそこまでやるかね・・・」


 ・・・なんか、聞こえるなぁ。


「あの子、素人なのにねぇ」

「しかもあの武器、モンスター用だろ?それを人に向けるとか」

 ああ、一般的にそういう認識なのか・・・

 いや、俺も思ったよ?ランドウィップでなくてもいいんじゃないかって。でも、手持ちはこれしかないし、かと言ってナイフで掛かるって言ってもそっちのほうが自信がないし・・・

「・・・ふう」

 周りの評価はどうでもいいか。いや、地味に傷つくから嫌だけど。

 やっぱり一定数はそういう人もいるよなぁ。


「皆さん、何か勘違いされていませんか?」


 そんな雰囲気にマーベルさんが切り込んでいった。

「あなた方が助けを求めたからうちの人が対応しているのです。今ここで立ち回らなければ、あなた方は食料を差し出していたのでは?」

 食料の強奪に来るのは今回が初めてじゃあない。

 何人で来るかは知らないが、二人でもビビって動けなくなっているくらいだから、渋りながらも毎回差し出しているはずだ。

「本気を出せば、大人数で掛かれば、制圧することはできなくもないでしょう。それなのに今まで何もせず、言い訳をしながら言いなりになってきたのはあなた方です。助けたうちの人は依頼されたからしただけで、方法は過激であっても、非難される謂れはありません」

 おお・・・ピシャっと言うなぁ。しかも、まあまあ強めにおっしゃる。

「この二人はもう手を出してしまいましたからどうしようもありませんが、残った方々はお任せしょうか?報酬の話はありましたが、特に契約書も交わしていませんし、今なら黙って去ることもできます。放っておいても我々は困らないのですが」

 そう言うと周りは黙り込んでしまった・・・

 やってくれなきゃ困るが、やる様を見ると引く・・・って状態か。

 助け舟を出してくれるのは嬉しいが、俺も強めの攻撃を仕掛けたから何とも言えないし、複雑な心境よな・・・

 まあ、気にしない方向でいこう。やっちまったモンは仕方がないし、気にしたってしょうがないし。

「ジェシカ、回復しきる前に縛っとけよ」

「分かってるよ」

 毒で体力が落ちているから、いきなり動けるようになるとは思わないが、念のため拘束はさせてもらう。

「いよっ」

 ここからはお話タイムだ。

 キースに任せた男の前に立ち、

「お話、聞かせてもらえるかな?」

「・・・何だよ?」

 降参したくせに、態度が素直じゃないな。

「一応言っとくけど、相方がああなったように、俺の武器は一発当たれば痛いし、毒を与える。聞かれたことは素直に喋っといたほうが利口だぞ」

 合計三発入れたが、どれもがかなりのダメージを与えていて、服は一部裂けてしまっている。

 モンスター用だからこうなっても仕方がないところはあるが、これを見れば嫌でも受けたくはないだろう。

「俺、割と容赦しないからさ」

「わ、分かったよ。何でも答える」

「結構なこった」

 これで話がしやすくなる。脅しってのはたまには役に立つな。

「お前らの仲間の数は把握してる」

「は・・・?どうやって分かるんだよ、そういうの」

「企業秘密じゃ」

 バードアイだの神力だの言ったところで、こいつらには分からん。そもそも話せないし。

「歳が近い連中とは別に夫婦がいたろ?あいつらナニモンだ?」

 チンピラどもは多少手こずってもどうにかなるだろ。

 問題は村に影響を及ぼす存在だ。

「・・・あいつらは別に夫婦じゃねぇよ」

「・・・あれ?」

 あれ?オアシスでそうだって話を聞いたと思うが。

「一年くらい前に急にやって来てよ。ボロボロで、今にも倒れそうな状態でな」

「・・・はあ」


 この村の住人じゃないのか・・・?

 それはまあ、有り得る話ではある。他所から引っ越してくることだってある。

 気になるのはボロボロだったってところだ。


「彼らのことはワシから話しましょう」

 村長がやってきて、

「彼らはどこからやって来たのかは分からないのです。非常に疲弊していたので、長時間歩いていたのでしょう」

「疲弊している、か」

 そんなこと、普通に生活してるヤツに起こり得るか?

 そりゃあ、例えば移動途中で道に迷うとか、ドードが逃げてしまったとか、そういうのはあり得るんだろうけど・・・

「不思議な二人でした。見たこともない所持品と身なりで、我々が知らない何かを語っている」

「・・・見たことがない所持品と身なり・・・?」

 見たことがない・・・ってことは、珍しい物ってことか?

 この辺りで珍しい物って何だ?マーベルさんみたいな行商が売ってるレア物とか?

 大量生産品じゃない物とかなら、珍しいとか、見たことがないってのは可能性があるだろうが、この世界の物ってそんなレア物ってあったっけ?俺から見ればそんな珍しい物は特になかったと思うんだけどな。

「ねぇねぇキリさん、キリさんなら心当たり、あるんじゃないかな?」

 俺ならある心当たり・・・?

「・・・あ」

 見たこともない所持品・・・!?


 俺は知っていて、こっちの世界にない物のことか!?

 物は分からんが、スマホとか向こうの世界の現金とか、そういうのを持ってたのか!?


 相手は転移者・・・!!

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