12-2
「―――という経緯でして」
「・・・ふむ」
闇が心地良い空間である。
闇、と一言で言える言葉ではあるが、それにも様々な感触がある。
柔らかい闇。
静かな闇。
途方もない闇。
ここは冷たい。
ここを照らすのは数本の蝋燭のみ。
このほんのわずかな明かりと、時折入って来る冷たい風。これが私にとって心地よいのだ。
この世界に入り込んできた男がいる。
私がよく知る、あの男だ。
「随分派手に力を使っているな」
「その点に関してはご容赦を。あの少年の力を見るために必要なことでしたのでね」
「それで、どうなんだ?二度の接触で見えたのか?」
「的確に答えるのが難しいですね」
老人は右手で顎を触りながら、
「なかなか鋭いところはありますね。直感とでもいうのでしょうか」
「ほう」
「私の存在に気付くのが早くなってきています。それも的確に。攻撃も土壇場にしては上手く凌ぐ。直感的に動いているように私は思っているのですが」
直感的に動く。
それはそう珍しいことではない。
特に考えるわけでもなく、目の前の状況に合わせて本能的に動く。
大抵は本人が持つ性質故のことだが、様々な事柄を実践し、経験を積んでいくことで出来るようになることもある。
名を挙げた者たちの中にも、そういった才能を持った者も多かったであろう。
だが、例の少年の場合は違うように思える。
「・・・まさかとは思うが」
この男の瞬間移動能力は検知が難しい。
この男が持つ能力・・・空中だろうが、建屋内であろうが、ゲートを作り出すことができれば、どこでも瞬間的に距離を無視して移動できる。
それを感知するというのは非常に難しい。目視できる個所にゲートを作った場合は発見しやすいだろうが、それすらも音も無く出現するため、目で見る以外での感知は不可能とも言える。
例の少年・・・神の力を得ているのではないか?
可能性が無いわけではない。例の少年も転移者だ。能力を得ている可能性はある。
危険感知でもゲートを検知できるかもしれないが、報告を聞く限り、それよりも精度があるように思える。
となれば、それとはまた別の力・・・神の力を持つと考えられる。
我々のように・・・
「おっと・・・そろそろ失礼致します。大事な会議がありますので」
「程ほどにしておけよ。まだその時期ではない」
「承知しました。では」
気配が消えた。ゲートで移動していったか。
「・・・気にはなるが」
ほんのわずかな可能性。それのために人員は割けない。
例の少年の調査は奴に任せるとしよう。
「私にはやらねばならんこともあるのでな」




