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「どうするつもりなんだ?聞こうじゃないか?ん?」

『急に強気である』


 どうやら、アポロが別の力を使えるようにしてくれるらしい。


『我の力の一つは、広範囲を見渡し、詳細を把握する能力。バードアイという力である』

 広範囲を俯瞰して見ることができ、かつピンポイントに対象を観察することができる、まるでドローンみたいな能力。

 どうもそれをバードアイというらしいが、

「それは堪能させてもらったが、んなモンであの化物を倒せるわけねぇだろ!?」

 すごい能力であるこた間違いないが、モンスターをどうこうできる能力じゃないってことくらいは分かる。

『話は最後まで聞くものである』

「グアアァァァァァァァァァァア!!!」

 ガノダウラスがこっちに向かって突っ込んできやがる!

 とにかく避けて、

「そういう余裕があればね!?心行くまでご自慢を聞いてあげられるんだけどね!?」

『自慢をしているわけではないのである』

「グォオアアアッ!!!」

 火炎放射ブレス!

「うおっ、あっつぅ!!!」

 なんとか避けられたものの、相当な高熱・・・!

「俺が悪かった!早くその力ってのを使えるようにしてくれ!」

 アポロに余計なことを言うと、それだけ対応が遅れる!

 その間に殴られるか焼かれるか、どっちかで俺もあの世行だ。とにかく受け流して、

『先に伝えておくが、この能力はバードアイよりも強い力を発揮するものである。魔力を激しく消費するが故に強い、という認識である』

「おうおう、そういうもんだろうよ!」

『少年はまだ神の力に耐性がない。かろうじてバードアイは使いこなせているようだが、今から授ける力を使えばどうなるか、想像は容易いが』

 確か、アポロは自分を守護獣とか何とか言ってたな。

 アルテミナの遣いなわけだし、神の力を持っているっていう認識もまあ、分からん話でもない。

 ただ、それを使いこなさんと死ぬってのも分かり切った話なわけで、

「後のことは後で考える!!とにかく早くしてくれ!!」

「ガァァアアッ!!」

 今度は尻尾攻撃・・・!

 しばかれて死ぬのが先か、焼かれて丸焦げが先かなんて二択、まっぴらごめんなんだよ!!

『雰囲気というものが大切なのであるが』

「え?何?お前もそういうの気にするタイプ?」

『・・・授けるのである』

 お前みたいな存在にも、そういうのあるんだな・・・?

『今から少年に授けるが、能力を受け取った瞬間は違和感が出るかもしれん』

「分かったからはよやれ!!」

「グオァァァァァア!!!」

 火炎放射を避けた、その直後。

「うっ!?」


 頭に突然、強い違和感・・・!?


 なんだ、こりゃ・・・?

 何かに頭をわしづかみにされて、脳味噌に何かを流し込まれてる感覚・・・?

「うっ、こいつは・・・!」

 流し込まれてる感覚だけなら、予防接種のそれに近いような気がするが、そんな小規模のもんじゃない。脳味噌全体に影響してる感覚がある。

 これはキツイ・・・!

 違和感なんてもんじゃないぞ、こりゃあ!!感覚は違うが、結構キツイ頭痛と一緒だよ!!

「キリヤ、大丈夫なのか!?」

「キリヤくん・・・!?」

 外野から見ても、俺の動きはおかしいらしい。それすら気にしていられないほどの感覚だ・・・!

『よし、終わったぞ』

 違和感が徐々に抜けていく。

『少年、たった今授けたのは威嚇という能力である』


 威嚇・・・?


『我の強い眼光を相手にぶつけることで、一切の動きを制限する能力である。掛けられた者は、指一本動かすことすらできぬ、強力な能力だ』

 相手の動きを完全に止める?

 ってことは、動きを封じている間に攻撃を仕掛け続けられるってことだ。

 何それ、めちゃくちゃイイ能力じゃねぇか!!

『ただし、動きを封じられる時間は使用者の魔力や技量に左右される故、一定ではない。一時間止められる場合もあれば、一分も止められない場合もある』

 なんか嫌な内容だな・・・

 一律で五分とかなら納得できるんだが、短ければ短いほどメリットなんかない。使ったら魔力を使うわけだし、しかも時間が短いと分かりゃあ本人のレベルも分かっちまう。

 だが、今はそんなことを言っていられる状況じゃあねぇ。使えるモンは何だって使わにゃあ、全員仲良く恐竜の腹の中だ。

「キース、動けるか!?」

 意識も現実にだいぶ戻って来た。

「ちと厳しいが、どうにかする!!」

「リオーネは!?」

「足をやられちゃって・・・」

 一人動けないか・・・!

「ジェシカァ!!聞こえるか!?生きてんのかァ、おい!!」

「いきっ、てる、わぁクソ・・・!」

 あ、生きてた。驚きはするが、とりあえずよかった。

「立てるよな!?リオーネの回復を急げ!!」

「おまっ、まずはあたっ、しの心配、が先、だろっ」

 強がれるくらいだからまだ元気なんだろうが、ちと怪しいな。リジェネが効いてないのか?

 それはそれとしても、状況を切り抜けるためには回復役を切って捨てられん!

「俺が何とか引き付けるから、早く回復させろ!!キース、動けるなら手伝ってくれ!!」

「随分簡単に言うじゃねぇか・・・」

「挟み撃ちでいいな!?」

「おう!!」

 どこまでこの恐竜の攻撃を避けきれるかだな・・・

『すぐに威嚇を発動させないのか?』

 そうしたいのは山々だが、俺が発動させてどれくらいの間効果が発揮されるのかが分からない以上、無暗に撃てん・・・!

 アポロが神の力の耐性がないって言うくらいだ。五分も止められりゃあ御の字だが、一分以下も有り得る。

 だからこそ、ジェシカが動けるようになったら、すぐにリオーネを回復させる。リオーネが動けるようになったら、全員で全速力で逃げる。これがモアベターな使い方だろう。

 あとは上手くいくことを祈りながら、

「とにかく集中・・・!」

 恐竜の猛攻を凌ぐだけ・・・!

「ガァァアアッ!!!」

 それにしても、随分と暴れまわる!

「くそっ、仕掛けられねぇ・・・!!」

 キースが斬り掛かろうとするが、尻尾を振り回したり、足で蹴ろうとしたりと、動きが細かい。

 機敏な動きも割とできるタイプらしい。スピードがもっとあったら、より完璧なモンスターだったろうが、こっちとしては余計な面倒が増えないだけありがたい。

「こういう時こそ・・・」

 鞭を振り回し、

「これの出番か!」

 隙を縫うように、革紐を叩き込む!

「ガアアアッ!!」

「ムムムッ!」

 大したダメージになってないようだが、目的は動きを封じること。

 ランドウィップの毒、麻痺のどれか、もしくはどっちも発動できれば、少しは動きを遅くできる。

 その隙に態勢を整えられるし、あわよくば威嚇を使わずに離脱もできる。

 たぶん、大した時間は止められないだろうし、効果が発揮されないこともあるだろうが、期待できるなら仕掛けるべきだろう。

「シッ!!!」

 剣とかグーパンと違って、鞭ってどんだけ強く振って当てても効果があるのかが自信がないんだよなぁ・・・ホント効いてる?みたいな。

 カマキリのリアクションを見る限り、それなりにダメージはあるはずだが、ガノダウラスにとっちゃあそうでもない・・・と思っても仕方がないところか?

「ガッ!?」

 がくんっ。

「ん!?」

 ガノダウラスの動きが急に遅くなった・・・!?

「・・・よし!!」

 口周りから泡が出てる!

「よしよしよしよォし!!」

 毒が回った!

 ガノダウラスの場合、毒の耐性のほうが低かったらしい。

「キリヤ!!」

「ああ、とにかくしばけぇ!!」

 動きはキレる前以上に遅くなっている!

 この隙に麻痺も与えて更に動きを鈍化させて、時間を稼ぐ!

「クラッシュソード!!」

「そらっ!!」

 剣での斬り付けと、鞭での同時攻撃。麻痺の注入は更に多くなっている。

 このまま麻痺が発動して、更に時間を稼げたらありがたい!

「キュア・・・!」

 ジェシカが自分に回復魔法を掛けて回復したらしい。

 ゆっくり立ち上がった。

「ふざけやがって・・・このトカゲ野郎・・・!!」

 派手にぶっ飛ばされたからなぁ・・・だいぶキテるな、ありゃあ。

 だが、今はそこじゃねぇ!

「リオーネの回復に走れ!!」

「わぁってるよ!!」

 ジェシカがリオーネに向かって走っていく。

 これで回復する手はずは整った。

 あとはこいつの注意を逸らし続けられれば・・・

「グオァァァァァア!!!」

 顔を空へ向けた・・・!?

 勢いよく空気を吸い込んで、胸を膨らませて・・・それで!?

「マズい!!」


 火炎放射か!!


 俺とキースは足元にいる!

「待たせたな!状態は!?」

「本当に待ったわよ・・・」

「こいつはひでぇ・・・!すぐに治療する!」

 となりゃあ、ジェシカとリオーネしかいねぇ!

 二人はちょうど合流したところ・・・治療に取り掛かろうとしている!

 そもそもリオーネは動けないし、いくらガードスキルを覚えたからと言って、ジェシカだって火炎放射はひとたまりもない!

『少年!』

 迷っている場合じゃねぇ・・・!!

「いくぞ!!」

『ガノダウラスを捉え、そして睨め』

 アポロの言うとおり、ガノダウラスをしっかり捉えて睨む!


 ゾクッ!!


「ガッ!?」

 何だ、この感覚・・・?

 目に何かの圧が加わったような、何かが入ったような、不思議な感覚。

 異物が混入したわけじゃあない。痛みがあるわけじゃない。

 だとしたら何なのか?

 これがアポロの言う威嚇で、それが発動した証拠なのか?

「やったか!?」

 ガノダウラスのリアクションからして、何か起きていることは分かった。

 今にも炎を吐き出しそうな体勢のまま硬直しているように見える。

『成功だ、少年。威嚇が通っている』

 これが威嚇・・・!

 あの四人掛かりで止めることすらできない恐竜を、この場で固定できている・・・!

 これはとんでもない能力だ!

「・・・うっ!?」


 ぐらんっ!


 頭が急に回った・・・!!

「なんっ、だ、こりゃ・・・!?」

 さっきまで普通だった頭が、急にくらくらになってる・・・!

 ふらつくだけならまだしも、目まで回って平衡感覚が取れない!

『潜在魔力量が思ったよりも少なかったか』

「ああ!?」

『それは魔力切れである』


 こんな時にマジかよ・・・!!

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