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 生活者協会を出た後、適当な商店で適当な弁当を買って、宿屋に入った。


 本日の夕食は何かしらの肉とタイ米っぽい主食の、スタミナが付きそうなメニューだ。


 こっちに来てからの食事は、俺にとってうまいのかどうか心配していたんだが、思いの外うまい物が多いようだった。


 こういう異世界の飯は、例えば普段俺たちが口にしないようなゲテモノが当たり前のように食べられている・・・そういうものだと思っていた。

 例えばトカゲとか、毒々しい色合いの昆虫とか、何かのモンスターの肉とか。

 ラノベでもゲームでもそういう展開はよくあるし。

 でも、ラヴィリアは違うらしい。

 見た目に違いはあっても、味は地球の食べ物に近かったりする。

 豚肉っぽく見える肉は、食べてみると鶏肉に近い味だったり。

 キャベツのような見た目の野菜の味が、食べたことがないような面白い味だったりする。

 だけどまあ、それらに困ることはなかった。

 そりゃあ、日本人の口に合うっていうわけじゃあないが、口にするのも嫌だってレベルでマズいことはない。ただし、合わないってヤツがないわけでもない。

 まあ、さっき買って来た弁当もそれなりにうまいだろう。


 よし、明日も赤子を抱えて歩き回らなきゃいけないわけだし、ささっと食うとしよう!


 ・・・と、その前に。


 片付けておきたい疑問がある。


 俺は弁当をテーブルに置き、その流れでヴェロニカをベッドの上に座らせ、彼女の前に胡坐を掻いて座る。


「で、どうしたんだい?お腹空いたからミルク作ろう!」

 そういえば、ミルクも作らなきゃいけなかったわ・・・

 だが、その前に、

「それもすぐやる。けど、その前にこれを解決しよう」

 ヴェロニカの前に、フェリーチェと書かれたパスポートを置き、

「ほら、ここを見てみなさい」

 所有ポイントを確認できる適当な画面を開いて見せる。

「おお、30000ポイント。さっき君が叫んでいたとおりだ」

「はい、続いてこれを見てみなさい」

 続いて、俺のパスポートをヴェロニカ用の隣に置き、画面を操作して見せる。

「16ポイントかぁ。少ないねぇ」

「それだよ、ソレ」


 なんなんだ、このポイント差は!!


 所有ポイントの桁がかけ離れ過ぎている!

 仮に一年で1ポイント付くとしても、ヴェロニカは自称十八歳。18ポイントが妥当なところなんじゃないか?

 何がどうなったら30000ポイントになるんだよ。

 なんだ?存在だけじゃなくて、そういうところもチートしてるのか?

 それとも、ラヴィリア人はこれくらいが当たり前だったりするのか?

「う~ん。何でこう差があるのかと言われてもなぁ」

「そりゃあ俺はその辺にいる年相応のヤツだろうけどな?こうも差があると、何でって思うだろ?」

「わたしも詳しい仕組みは分からないけれど、これはそういうものらしいよ」

 ヴェロニカは自分のパスポートをぺたぺた触りながら、

「これは魔法の力が使われているらしくて、随分と昔からある物らしいんだ。それこそ、文明ができた頃から。まあ、いつ頃から使い始めたかまでは分からないけれど」

「文明ができた頃からってことは・・・」

 人が誕生して、人が人として生活をし始めた頃から、もうすでにこれがあった?

 確定の情報ではないにしても、仮にそれが本当だとしたら、これは俗に言うオーパーツとか、オーバーテクノロジーっていうアレじゃないのか?

 俺の手の中に、そのオーパーツがあるってことか・・・

「このスキルポイントもパスポートの機能の一つで、ポイントを割り振ってスキル登録をすることで、何故力を得ることができるのか、今も分かってないことなんだよ」

「・・・それでもみんな使ってるんだろ?それなりに分かりそうだけど」

「理由は分からないけれど、便利だから使ってるっていうのが現状かな?」

 確かに、ポイントを割り振ることで何かしらの能力を得ていくと分かっていれば、便利だから使っていこうっていう話になるかもしれない。

 たとえ、それがどういう原理でそうなるか分からないとしても。

 それは現代人にも言える一面がある。


 ちょっと違うだろうが、スマホがそれに該当するような気がする。


 外で電話を掛けられるし、知りたい情報を調べることもできるし、SNSを使って誰かと連絡を取ることも簡単。アプリで遊ぶことも、映画や美容室の予約も、投資だってできる。

 簡単だから使う。

 スマホに関しては生活必需品のレベルまで上がったかもしれないが、結局のところはそういうことだ。

 この世界の人間にとって、パスポートがそれに該当するかな、と俺は思っている。

 出所が分からない、使う内容が違うだけ。

「どういう仕組みでそうなってるのか、詳しくは分からないけれど」

「調査はしてるのか?」

 ヴェロニカは小さく頷き、

「しているらしいとしかわたしは答えられないけれど。たぶん、分からないんじゃないかな?だって、使い始めて何世紀も経っているはずなのに分からないんだから、これからもきっと分からないよ」

 言っていることは分からないわけでもない。

 地球でいうオーパーツも、何でこういう物があるのか、未だに分かってないわけだし。

 ラヴィリアも同じようなものなんだろうな。

「それでも、発行するとかそういうことはできてるわけか・・・」

 オーパーツを複製している、とかのイメージだとは思うが、それはそれで別のオーバーテクノロジーなんじゃないのか?

「魔法の力か、魔法を利用した道具で複製しているんだと思う」

「そうなってくると何でもアリじゃないか・・・」

「スキルにもあるでしょ?」

 自分のパスポートで調べてみる。

 確かに、複製っていうスキルがあった。

 スキル名をタッチして開いてみると、詳しい内容が書かれている。

 ―――複製。

 生命体や食品、金銭以外の対象をそっくりそのままに増やすことができる。消耗品を増やせば、消費を抑えることが可能。ただし、増やした対象は時間経過で消滅する。

 おお、めっちゃ便利じゃん!

 時間経過で消滅するっていうデメリットはあっても、消耗品を増やせるわけだ。

 例えばティッシュとかトイレットペーパーを複製すれば、ベースを確保さえしておけば使い放題にできるということだ。

 これでトイレ問題が劇的に楽になる。

 金銭を増やせれば相当アツいが、時間経過で消滅するっていう制約上、詐欺になるわけだし、この辺りは仕方がない。

 テレパシーとかは俺には使いどころが微妙なラインだが、これは欲しい!

 スキルツリーを見る限り、クラフトというスキルの先にある。

 ・・・あれ?これ、すでに登録されている?クラフトレベル1が黄色になってるんだが・・・

 まあ、それは一旦置いておいて。

 習得しようとしても、手前のスキルを登録して辿り着かないといけないし、複製自体の必要ポイント数も5ポイントと多め。

 非常に欲しいスキルなんだが、ただでさえ少ないポイントをここに入れてもいいものか。

 これは追々解決する課題かな・・・

「でも、これだけの技術の物を一人の力で複製しているわけじゃないと思う。やっぱり、何かしら道具があると思うよ」

 仮にパスポートの力で複製できるとしたら、オーパーツもちょろい物ってなるよな。

 そもそも、パスポートでスキルとして得られる複製は、時間消滅するものだし、全く別物だ。

 今の技術でどうこうできるわけじゃないからオーパーツとかオーバーテクノロジーって呼ばれるわけだし、そんなに簡単に複製できるものじゃない。

 そういう道具とか装置がある、と考えるのが妥当か。

 協会にそういう物があるのか、機会があれば尋ねてみてもいいかもしれない。まあ、重要機密みたいなもののような気がするから、答えちゃくれないだろうが・・・

「そういうことだから、わたしにもポイント差のことは分からない。ごめんねぇ」

 存在そのものが謎な物と、それから得られるポイント。ついでに言うなら、割り振りで力を得られるシステム。

 正しくオーバーテクノロジー。

 もしくは、考えるだけ無駄とか頭が痛くなるとか、考えれば考えるほどワケが分からなくなるから考えるのを止める案件だ。

 いくら常識から外れた存在のヴェロニカでも、分からんものは分からんってことだな。

「まあ、ヴェロニカが悪いわけじゃないし、謝る必要もない。ミルク作ろう」

 ・・・今更気付いたが、ヴェロニカが今にも泣きそうな顔になっている。

 というか、いつも俺にも分かるようにテレパシーで言葉を聞いているから気付きにくいが、生の声はえぐえぐ言っている。

 急がないと泣いちゃうぞ、これ・・・

「スプーンとマグカップは準備できたぞ。いつでも煮沸消毒できる」

 いつもの手順でミルクを作り始めた。

 ヴェロニカが空中に水の塊を作り、そこへ火炎放射を噴射。

「なあ」

 あったまるまで時間が掛かるので、

「またヴェロニカのパスポートを見てもいいか?」

「いいよ~」

 早く飲みたい。

 涙ぐんだその目と、操る魔法に気合が込められている。

「・・・ごめん」

 先にミルクを済ませたらよかったかもしれない。

 ただ、ミルクを飲んだらすぐ寝てしまうのが赤ん坊。

 詳しく話を聞きたくても、次の日になってしまう。

 気になったことはすぐに解決しておきたいよなぁ。じゃなきゃ、寝た次の日にはこっちが忘れちゃうってことがあるんだから。

 気を取り直してヴェロニカのパスポートを手に取り、

「・・・見なきゃよかったかもしれない」

 ポイント確認画面から、スキルツリー画面に切替え。

 一段目を見ると、フレアやアクアなどの所謂ところの属性系魔法と、俺や動物との意思疎通のためのテレパシーが黄色になっていた。

 まあ、これに関しては、目の前で繰り広げられているわけだし、すでに登録されていることに驚きはしない。

 ただまあ、驚くのはそこから派生する二段目、三段目と続く上位スキル。

 ・・・一部がすでに黄色になっていた。

 ざっと必要なポイントを換算しても、16ポイントは簡単にオーバーしている。

 ヴェロニカはすでに、相当な技が使えるというわけだ。

 俺は今から徐々に進めていこうとしているところなのに・・・

「消毒しよう~」

 もう泣きそうだ。我慢の限界か。

 ただ、もうお湯はいい感じで熱々だ。

 水の塊の一部をカップですくって俺のカップに移し、ヴェロニカのカップでもう一度すくう。

 そこにミルク粉末を入れて、スプーンでかき混ぜつつ、人肌の温度まで下げたらできあがりだ。

「できた!できたわ!ほら、飲もう!」

 急いでヴェロニカをだっこして、ミルクをスプーンですくって口元へ。

 ヴェロニカは勢いよくミルクを飲んだ。

 まるで、カラッカラの吸水スポンジが水滴を吸い取っていくかのような・・・

 よっぽど腹ペコだったんだな・・・

「遅くなり過ぎた・・・ごめん」

「キリの気持ちは分からなくもないし、協力してもらっていることもあるし、わたしもあまり強く言えないのだけれど、気を配ってもらえるとありがたいかな」

 本当に罪悪感に駆られる。


 赤ん坊の姿ってそういうところも得な気がする。


 *


「すやすや~」

「マンガかよ」

 満腹になったヴェロニカ。

 げっぷを出させて横になったら、すぐに眠ってしまった。

 前に本人も言っていたが、眠気も、空腹具合も、便意も、体力も、ありとあらゆることが赤ん坊レベルらしい。

 まあ、持っているポイントだけはそれを圧倒的に凌駕しているが・・・

 意識は大人であることは疑いようがないものの、すぐに寝てしまうところを見る限り、やっぱり体力はそう多くはない。

 こういう現実を踏まえると、今までよく森の中で一人で暮らしてこられたなと思わされる。

 テレパシーで動物と意思疎通を図り、彼らの力を借りて生きてこられたわけだが、それがあったとしても生き延びられていただけでも奇跡だ。


 確証も何もないが、捨てられていたというのが本当だとしたら、よく生まれたばかりの子供を捨てたものだ。

 

 まあ、こっちの世界観を理解しきったわけでもないし、ヴェロニカの生みの親にもそうせざるを得ない事情はあったんだろうが、それでも正気の沙汰ではないだろう。

 日本でもそういうニュースがあったりした。というか、珍しくない。

 その度にどういう神経をしているんだと疑ったもんだが、ラヴィリアの人間の道徳観もおかしいということが分かる。

「さて・・・」

 スプーンとマグカップを洗おうと思ったが、何となく気になってパスポートのほうを手に取った。

 何が気になるのかというと、すでにいくつか登録されているスキルの内容だ。

 今の俺がどういう技が使えるのかっていう確認もあるんだが、登録されている内容によっては少ないポイントを割り振る必要がある。

 そうだないと、ずっとヴェロニカにおんぶにだっこだ。

 ヴェロニカがそれでもいいというのならまだしも、さすがに十六年も生きてきた真っ当な人間だという自覚はそれなりにあるもんで、自分でも何かしらしないと耐えられない。

 そういう精神的な問題があることもあるが、地味にやっていけない一面があることも否定しない。


 今のヴェロニカに足りないこと。

 それが食事、移動など、生活を送るための手段だ。


 ミルクを作ることはヴェロニカ自身でできても、飲むことはハードルが高いらしく、補助が必要。

 移動も空中をふわふわ浮くことで解決するし、気温の寒暖差もシェードを使うことで快適に過ごせるが、それも周囲に人がいないことが前提の話。

 トレイ問題もそうだし、一人で生きていくのは限界がある。

 その対応として、森では動物の力を借りていたわけだが、これからは人目が発生する。人目に付かない場所はあるにしても、村や町を経由せずに旅を続けることは不可能だ。

 だからこそ、最低でも人目に付く場所は俺の力で切り抜ける必要があると思っている。

 そのために何が必要なのか?

 お金の問題や、そもそもラヴィリアでの基本的なことはヴェロニカ頼り。できることは俺もしていかないといけないわけだ。

「スキルツリーの画面を出してだな・・・」

 パスポートをいじる。

 操作がスマホ感覚なのが地味に嬉しい。使い慣れていることもあって、操作に困ることはないからだ。

「基礎スキルは何があるんだ?」

 フレアやアクアは属性系魔法の、テレパシーは補助系スキルの基礎スキルだった。

 協会の説明で出た農具レベル1っていうのは職業系スキルに属しているようだし。


 というか、色んな要素が入り混じっているから分かり辛い。


 属性系魔法、補助系スキル、職業系スキル・・・と細かく区切る分は分かるんだが、それからジョブの話も加わってきて、該当スキル欄にそれらしいピクトグラムの表示もある。

 生活者協会で農業を例に挙げて話を進めたが、農家もアクアを使う場合があると言っていたし、そう考えると単純に属性だとか補助だとかの括りで話が進まない。

 考えていけばいくほどこんがらがる。


 とりあえず、悩むのは避けられないから、それを前提として、パスポートで得られるスキルにどういったものがあるのかを把握してみよう。

 他には何があるんだろうか。

「ふぅん。やっぱりこういうのがあるのか」

 両刃剣レベル1、片手剣レベル1、鈍器レベル1、槍レベル1。

 剣士のようなキャラが使う王道のスキルがある。

 それに加えて、杖や鞭といったちょっと変わった武器と、遠くから攻撃できる弓もある。無手レベル1っていうのもあるんだが、これはグーパンみたいなものか?

 まあ、こういう中世時代のような世界観で使えそうな武器は粗方揃っているようだ。

 一方、ヴェロニカお得意のフレア、アクア。こっちが属性系魔法のスキル。

 他にも氷、風、雷もあるし、光、闇魔法もある。こっちも、ゲームで出てきそうな属性は一通り網羅してるっぽい。

「この辺りは大体どういうものか分かるからいいとして、問題は他なんだよなぁ・・・」

 問題は王道的なところじゃなく、他のスキル。

 補助系、職業系だ。

 最早日常のテレパシーを筆頭に、欲しい複製スキルの基礎となるクラフト。他にも罠設置や解除と言ったダンジョンに特化したスキルもあるし、目利きとか威圧とかいうスキルもある。

 隙間時間で把握しきれないほど、補助系スキルの幅は広い。

 そして職業系スキル。

 農具、漁器具、鍛冶器具、薬品器具など、農家や漁師が専門で使うようなスキルがこれになる。

 今のところ用事はないが・・・


 ここまで見れば、これらに関連する職業・・・つまり、ジョブが気になる。


 ジョブ選択画面に切り替えると、剣士や魔法使いがすぐに目についた。さすが異世界。これぞ異世界。

 他にも色々とある。格闘家、探検家、盗賊、狩人といった専門的なジョブや、商人や農家などの商売職、作家とかいうのもある。

 剣士とかはいいとしても、盗賊っていいイメージがない。どっちかっていうと、敵キャラの名前にくっ付いてるほうじゃないの?盗賊1とか2とか・・・

 それに作家。イマイチ使いどころが分からないんだが・・・

 まあ、どうするジョブなのかは置いておいて、もう一回スキルツリーへ。

 今登録されているスキルを確認して、それに応じたジョブを考えてみよう。

 こっちのほうが割とすんなり終わる場合もあるし。

「いや・・・?」

 逆か?

 俺が今必要なことを優先して、ジョブのほうを後付けで考える。

 こればかりは趣味や考え方の違いかもしれないが、ポイントが少ないから無駄な消費は避けたい。

 どっちの考え方も、方向性は同じか?走って行く方向が一緒で、到着するゴールが一緒なだけで。

 とりあえず話を進めよう。

「今覚えているのは、っと・・・」

 基礎体力レベル1。その名の通り、体力が向上する。

 知識レベル1。賢さが向上する。戦闘における魔法攻撃の威力が向上する。

 技術レベル1。テクニックが向上する。戦闘におけるクリティカル率が向上する。

「・・・ううん・・・」

 どっちつかずなスキルが登録されている。

 好みの問題だろうが、剣士であれば魔法の威力などあってないようなものなので、その辺りは切り捨てて腕力レベル1のような攻撃力が上がるスキルや、防御レベル1のような守りを固めるスキルを覚えたほうがいいように思える。

 それは逆も言える。クリティカル率に関しては問題ないとしても、魔法使いに体力は要らない。

 その辺りを活かすジョブでもあれば話は別だろうが、これでジョブを選ぶのは難しいな。

 となれば、他のスキルが頼りだ。

「・・・ほおぉぉぉぉ・・・」

 ナイフレベル1。ナイフの基本的な使い方を覚える。

 ナイフレベル2。ナイフ技術の応用を覚える。クリティカル率が5%向上する。

 斧レベル1。斧の基本的な使い方を覚える。

 さっき気付いたこのクラフトレベル1。基礎的な工作技術を覚える。

「これはまるでアレだな・・・」


 キャンプに必要なスキルだ。


 ―――キャンプ。

 日本語で言うなら野営という行為。人によって色々と解釈はあるんだろうが、要は外に滞在して遊ぶ行為をいう。

 布や枝でテントを作り、かまどを作って火を起こして、料理して食べて、そして星空の下で寝る。

 俺の両親はアウトドアが好きで、俺を連れてよく出かけた。

 俺も自然は好きなほうだし、割と乗り気で遊んだ。

 そこで色々教わった。

 ナイフや斧の使い方、火の起こし方、シェルターやウインドスクリーンの作り方。

 今どきはアウトドア用品の性能がすごい上に色々と商品化されているので、お金さえ出せば不自由のないキャンプライフを送れるわけだが、それがなくてもできるように教えてくれた。

 おかげで、過酷なキャンプもそこそこできるようになった。

 協会でこっちの世界に来るまでの経験がパスポートに反映されていると聞いた。それがこのラインナップになっているってことか。

「となれば・・・」

 ヴェロニカと出会ってここまで辿り着くまでの間で、何が必要なのかは大体分かったつもりだった。

 それが、村や町にたどり着くまでの間の生活力。

 それに対応できるスキルがある程度習得できている。

 となれば、別のスキルにポイントを使える。

「ジョブも考えものだな・・・」

 スキルは分かった。

 体力とかの問題はともかくとして、すでに習得しているスキルを活かしていく方向性がいい気がするが、ここが異世界だということを忘れてはいけない。

 ここは異世界という現実で、ゲームの世界じゃないわけだし。普通に死ぬぞ、ここでは。

 ここはヴェロニカに相談するべきか・・・

「それにしても気持ちよさそうに寝てるわ・・・」

 何の不安もなさそうな寝顔だ。

 こういうのを見ると平和だなと、親は思うんだろうか。

「・・・さて、食器を片付けて寝ますかね」

 毎度のことながら、朝はヴェロニカのミルクタイムが早い。

 俺の飯はどうでもいいから後回し。

 明日はいよいよ、生活基盤を固めるための買い出しだ。

 とりあえず、食器の片付けと歯磨きといきますか。

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