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ファンタジーな世界ってこんな感じなんですか? ー起こることは現実的で心が折れそうですー  作者: ナツオ


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「とにかく、落ち着いたな」

「全くだ」


 クーピ村からノーボに向かう道中。

 寂れたオアシスを発見した。


 クーピ村自体が小規模で活気のない村だったこともあるし、そこまで移動する人もいないからか、オアシスの規模も相応に小さかった。

 最低限の人数は泊まれるようになっているようではあったが、利用している人間はほとんどおらず、それこそ宿のオーナーと、俺たちみたいな冒険者が一人か二人くらい。ぶっちゃけ、ほとんど貸切と言ってもいい。


 とりあえず二人分の部屋は確保できたってことで、俺の部屋に集まっているんだが、

「しっかし、何なんだよアイツは。バカか」

「知るか。バカはバカだろうが」

 問題は色々ある。


 今のところ俺たちに重たくのしかかっているのは、言わずもがな、突然現れた黒魔術師だ。


 突然現れたことも気になるが、とにかく火力がヤバい。

 今までヴェロニカの火力がとんでもないレベルだとか思っていたが、それを上回るヤツがいるとは思いもしなかった。

 世界は広いし、上には上がいる世の中だから、そういうヤツと出会うのもある程度は納得できる。できるが、いざ目の前に出て来られて、しかも村一つ消滅する火の玉を発射されると誰が思うか?

「いや、わたしも本気を出せばあれくらいできるけれどね?」

 余計なところで張り合ってきやがる。

 でも不思議なもんで、できるだろうなぁ・・・とか思っている自分がいる。

「でも、意外だったねぇ。キリに用事があるだなんて」


 本当に気になるのはそこだ。


 ヴェロニカに用があるのは分かる。

 なにせ、存在自体がおかしいし、火力の権化みたいなものだ。このことを知っていれば、誰だってヴェロニカのほうが有能だと思うだろうし、狙うに決まってる。

 なのにどうして俺なのか?

 俺にそんな価値あるか?いや、別に無価値とは思わん・・・いや、思いたくはないんだが。俺にも最低限のプライドがある。

 それはまあ置いといて、接近戦も一通りできるし、風魔法も覚えたばかりだし、オールラウンドな運用ができる。クラフトレベルも高くて複製もできるから、日常生活・・・特に野営に関しては自信がある。そんじょそこらの駆け出しレベルではあっても、それなりにできるほうだと思うんだよ。

 でもそれは、所詮一般人レベルでの話・・・ヴェロニカレベルになれば子供同然。

 狙うならヴェロニカだろうが、どうもそういうことではないらしい。本当に意味が分からない。

「あんた、あいつに何かしたんじゃないのか?」

「あ?」

 ジェシカが怪訝そうに、

「何かしなきゃ、あそこまでしないだろ?何やったんだ?」

「するわけねぇだろバカ。大体、初めましての相手にあんなことするわけないだろ。いくら何でも」

 初めて会う相手だぞ?いくら何でもそれはない。

 俺も最低限の常識を身につけているわけだぞ。逆にジェシカのほうがやりそうなくらいだ。

 いくら何でも・・・

「首都の芋二人の関係者ってことはないかなぁ?」


 ・・・マジ?そこなの?


 まあ・・・確かに初めて会う相手にフレアバレットをかましたな・・・俺じゃなくてヴェロニカが。

 そういう風に認識されていても、最終的には親・・・いや、親役の俺の責任になるわけで。

 となれば狙われても仕方がない。仕方がないだろうが、さすがにそれはないだろう。


 まず、あいつは正確に俺を追尾できていたように思える。


 どういうカラクリかは分からんが、俺がクーピ村にいるってことをきっちり分かっていたはず。まるでGPSでもくっ付いてるかのように。

 スキルでもなければそんな芸当できないだろう。ただ、俺もそこまで把握していないから、何のスキルなのか分からない。九割そうだろうなって感じだ。

 スキルを取得していれば誰でもできるのか・・・ってところが気になるところ。


 たぶん、できない気がしている。


 これはあくまでも例なんだが、トールとジャン、キースは同じ剣士で、クラッシュソードを使える。使えはするが、威力は同じじゃない。トカゲと蛇の差があるものの、苦戦具合からしてこの三人に差があるのは確かだ。

 ヴェロニカも同様。クーピ村で別れた黒魔術師との火力の差は誰が見ても分かる。

 だから、同じ技でも実力差は発生するというわけだ。ということは、あの謎の黒魔術師も同様で、そう考えるとレベルは相当高いと推測できる。

 じゃあそれで何でないと言い切れるかってなると、そんな高レベルなヤツが、高々吹っ飛ばされそうになったくらいで自分から動く・・・なんてことはしないと思うからだ。

 仮に俺が報告を受ける側・・・例えば旦那だとしたら、まともに話を聞かないだろう。夢でも見たんじゃね?くらいの気持ちになるはずだ。世間的にもヴェロニカは異質なわけだし、常識的に有り得ないと思うはず。

 あれくらいレベルが高いヤツなら、国でも相当有名なはずだし、首都お抱えの大魔術師って線もなくもない。仮にそんな存在が村一つ吹っ飛ばしたことがバレたら、さすがにテロリスト認定されるだろうし、動きたくても下手に動けないってのが現実か?

 じゃあ一体なんなのか・・・?


 そんなもん分かるわけはないが、確実に言えるのはまともな人間じゃないってことだわ。


「そもそもここは本当に安全なのか?部屋まで取って泊まっちまってるから今更だけどよ」

「ああ、それは大丈夫じゃないか?」

「なんでだよ?」

 ごもっともな心配を今更しているようだが、そこに関しては多少自信があって、

「危険感知に引っ掛かってない」

 あいつの存在に気付いた時、突然危険感知が作動した。

 あれは自分に対して敵対心のあるヤツに対して作動するスキルだ。

「いきなり出てきたことに関しちゃ驚いたし、相当できるってことは分かる。ただ、危険感知がきっちり作動してるってことは、俺はあいつを捉えることができるってことだ」

「お、おう」

「ということは、今ここにあいつがいた場合、俺は気付くことができる。まあ、相手が俺に気付いていればっていう条件はあるが、その点に関しても問題ない」

「何で?」

「今日居合わせた宿泊客は若い冒険者だし、オーナーもそこまで歳を取っていなかったからだ」

 実際どこまで歳を取っていたかは定かじゃないが、ここにいる誰よりもあいつは年寄りのはず。

 今ここで遭遇はしていないと考えられる。

「言うことは分かるけどなぁ」

「ホントに分かってんのか?」

「ナメんなよ?」

 ただまあ、これに関しちゃあ、あの時みたく突然出現されたら対応できないんだよなぁ。

 あれってやっぱ転送だったりするのか・・・?

 ってことは、やっぱり相手はヴェロニカと同様かそれ以上ってことに・・・嫌な現実だ。

「よくもまあそこまで考えるもんだ」

「お前は考えなさすぎだ」

「何だとコラ」

 直感的に考えすぎてる・・・いや、それしかないな、この女。

 いや、別にそれが悪いとは言わない。言わないが、さすがにそれだとマズいと思うので、

「お前、人が動くために必要な要素って分かるか?」

「何だよ、急に?」

「お前の今後のために教えをと思ってな」

「何様のつもりだコラ。殴るぞ」

 ・・・この調子じゃあ、一生このままだな。その未来が簡単に想像できてしまうのが悲しい。

「まず、観察」

 人差し指を立て、

「観察ぅ?」

「まずは観察だ。ここで言う観察は自分と周辺、置かれた状況なんかを言う」

 例えばパラライズバイパーの時なんかだと、ジェシカ、キース、リオーネの合計四人で討伐に挑み、雨でぬかるんだ地面に蛇がいて、そいつは寝ていて、周りに岩がある、とかが分かる。

「まずは挑む状況に対して、自分だけじゃなく周りの状況も把握する。情報を得るってことだ」

「情報なぁ」

 これが割と重要なんだが、この脳筋エルフ娘には分からないか・・・

 まあいい。話を続けよう。いや、続けてみよう。

「次に分析」

「観察の次は分析かぁ」

「ここでいう分析は、観察で得た情報を元に、こうしたらこうなるかも?って考えることだ」

 蛇の例で分析をすると、寝ている間に攻撃を仕掛けて急所に当てることができれば楽に倒せるとか、突然起きて戦闘になるかもとか、想定される未来を考える。

「三つ目、決定。分析で考えた想定の中から行動する内容を決定する」

 蛇の時はリオーネに頭を貫いてもらうことにした。保険で囲って袋叩きってところか。

「そんで最後、行動。決定で選んだ内容を実施する」

 シャインアローを放って頭を貫く、と。結果は惜しかったものの、それは今ここで論ずることじゃあないから割愛。

「観察から行動。これを繰り返すわけだ」


 これをOODAループっていうらしい。

 確かどこかの国の退役軍人が考案した理論だって話だが、詳しくは分からん。


「あー、一応言っとくけど、これはあくまでも俺なりに把握した内容だってことを了承してもらいたい。解釈は人それぞれだからな」

「誰に言ってるんだい?わたしたちは特に気にしないはずだけれど」

 一応言っとかないと炎上しかねんからな、こういう世界だと。

 それはまあ、それとして、

「これは戦闘だけに限った話じゃなく、日常生活どころか、自分が行動するたびにしていることなんだぞ」

「そうなのか?」

「例えば買い物とかもそうだ。荷物に食う物が残ってないと分かる観察、料理するか食べに出るのかを考えるのが分析、食材を買うことを決定して、買い物に出かけるのが行動」

「そう考えれば自然だねぇ」

「これの面白いところは、状況がころころ変わるから、絶対に行動までいかない場合があるってことだ」

 買いに出た先であまり食材がなかった場合、料理する物がないと分かる。行動する場合、買うってことになるだろうが、そこまでいけないと分析できる。

 状況的に無理な場合はあるわけだ。

「そういう時は決定から観察に戻る。そこから分析していって、次の動きを決定、行動する。その時の状況次第でこの流れは変わり続ける」

 日常生活だから程度は少なく済むだろうが、こと戦闘になればループする回数や速度は一気に増えるはずだ。

「ここで泊まることだって、このループの結果だぞ」

「なるほど、キリはこのオアシスを観察して情報を得て、分析して問題ないから泊まれると思ったわけだね」

 ヴェロニカに小さく頷いて返してやり、

「直感が鋭いとかよく言うが、あれもループした結果のはずだ」

 あくまでもこの理論を元に考えると、観察から行動までの速度が誰よりも速く、瞬間的に行われた結果じゃなかろうか。

 まあ、これは賛否あるだろうし、ここで語る内容じゃないから、ここで切り上げるが。

「俺も案外考えてるんだぞ」

「そうかいそうかい」

 こいつ、せっかく教えてやったのに全く興味がなさそうに・・・腹が立つな。

 腹が立つからと言ってキレても、こいつには響かないだろうと分析できるのがもっと腹が立つ。

 もうやめよう、この話・・・

「さて、寝るか」

 明日はノーボに向かって移動しないといけない。

 今のところは大丈夫だが、またいつあの魔術師に遭遇するかも分からないし、早めに出たほうがいいだろうしな。

「一応、交代して警戒はしておくか?」

「・・・おお、そうだな」

 こいつ、そういう提案ができるのか?

 一応、危機管理みたいなのはできるんだな。だったらもっと考えて動けよ。

「あんたが先に寝ろ。子供の世話もあるし、早いほうがいいだろ」

「そうだな。助かる」

「あたしは部屋も戻る。適当な時間でドアをノックするから、そこから交代な」

 ジェシカが部屋から出ていった。

「・・・案外、キリの話が身についたのかもしれないねぇ」

「・・・であればした甲斐があったってもんだ」

 本当にそうであれば、な?


 さて、何も起こらずノーボに着ければいいんだが。

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