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ファンタジーな世界ってこんな感じなんですか? ー起こることは現実的で心が折れそうですー  作者: ナツオ


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勝気な娘は好きですか? -たとえ方向性を違えていたとしても-

 メリコを発って約二十キロ地点。

 俺たちはとある雑木林の側でキャンプをしている。


 今回、移動は集団を避けて、ドッシュをレンタルしていた。


 何で集団を避けたか?

 これに関しちゃ、テストっていう意味が大きい。


 集団のメリット、デメリットは前に考えたとおり、ある程度予算を抑えられる反面、周りに気を遣う。これがざっくりとしたところだろう。

 費用に関しちゃあ、ぶっちゃけしばらくはどうとでもなる。俺個人の資金もそこそこできたし、必要であれば素材を売って作ることもできる。だが、周りの目はどうしようもない。

 もう親子設定に違和感を覚えることはなくなってきた。なくなってきたが、周りはそういうわけじゃない。大人と違って子供、特に赤ん坊は我慢がきかない。

 それを考えると、やっぱり単独で移動するほうが絶対に楽。

 危険なモンスターがいることは重々承知・・・というより、嫌でも考えるが、そこは破壊力抜群のミサイルがうちにはいるから、その点は他の連中と比べると圧倒的に楽だろう。


 単独で移動する場合、どういうことが起こるのか・・・

 例えば、一日二十キロ程度の移動であれば食糧の質をもっと上げられるとか、野営に適した場所がそんなに無いとか、ドッシュの餌代がそこそこ掛かるとか。

 今回は色々と確認をしたいから、わざわざドッシュをレンタルして移動したというわけだ。


「やっぱりドッシュはいいねぇ。速くて助かるよ」

 地面に座ってのんびりしているドッシュ。その上に乗っているヴェロニカが、俺たちに話題を振ってきた。

「そうですねぇ。ドードと比べると快適ですね」

 マーベルさんは荷物の整理をしていて、

「ありがてぇありがてぇ」

 俺は集めた枝を地面に置いて、斧で薪割りをしていた。

「即席だけれど、壁と屋根があるのもありがたいねぇ」

「そうだろう、そうだろう」


 俺はマーベルさんから購入したタープで、ダイヤモンド張りを組んだ。


 タープの張り方は色々ある。組みやすいもの、カーテンを作って人目を遮ることができるもの、雨風に強いもの・・・本が一冊できるくらい、その種類も多い。

 今回は簡単に組むことができて、かつ屋根と壁ができるダイヤモンド張りで済ませたわけだ。

「キリヤさんの世界ではこういう風に野営をするのですか?」

「いや、そういう人もいるってくらいかな」

 今日の場合、タープ泊ってやつになる。

 荷物を少なくしたいとか、ガッチガチじゃなくてもブッシュクラフトをやりたいって人がするような手法。それがタープ泊かな、と俺は思っている。

 実際、テントは結構な荷物になる。モデルにもよるが、小型の物はカバンに入っても居住性が低かったりするし、居住性を求めるとカバンに入らないし、それ自体が結構な荷物になる。

 程良い性能の物は当然あるけど、そんなに種類もない。

 でも、タープでテントを組めるなら、割と自由度は高い。組み方を変えるだけで雰囲気も変えられるし、荷物も少なくて済むから、荷物を少なくしたいキャンパーにとって目指すスタイルの一つと言えるかもしれない。

「まあ、あくまでも今日はこれくらいでいいだろって感じだ。もっと真剣にやらなきゃいけない日もくるだろうし・・・」

 タープ泊の弱点は、テントほどがっつり悪天候に耐えられないこと・・・と俺は思う。

 耐えられる張り方をすればいいんだが、結構難しいし、手間も多い。張り方によっては風に弱いことだってあるし、ダイヤモンド張りみたいな張り方だと雨が吹き込んでしまう。

 万能的な宿泊をしたいなら、やっぱりきっちりとしたテントを買うか、この世界のオアシスみたいな宿泊施設を頼るべきだろう。


 今回、試したかったってのもあるし、雨の心配は要らないって分かってる一面もあった。


 探検家特有のスキルである、踏破。

 今まで意識していなかったこともあるが、こうやって野営をする時にその性能がよく分かる。

 

 例えば雨。

 ちょっと曇ってきたとして、それが今にも降り出しそうな状態なのか、どれくらいの雨を降らすのかなんて分からない。いくら天気予報士でも、いくつかのデータが分からないと判断しにくいだろう。

 だが、踏破は雨雲の様子を把握できる。

 今にも降りそう。降っても傘が要らないくらい。大雨、嵐になる。それが手に取るように分かる。

 風もそうだし、日照具合も分かる。最早歩く天気予報士。いや、予報どころか現場できっちり分かる。これはキャンパーにとって相当ありがたい能力だ。

「ま、今日の場合はこれくらいで十分いけるってくらいだ」

 雨も降らないし、風もそんなに強くない。多少吹いても、タープで防げる。これが分かるだけでも相当いい。

 モンスター相手に有効じゃないにしても、長旅をしなくちゃいけないなら、この能力は使える。

 幸い、攻撃に関しちゃヴェロニカがいるからどうとでもなるしな・・・

「よし、焚火するかぁ」

 適当な枝で地面を軽く掘って、太い薪を横にして、その手前で細い枝を簡単に組んだ。

「キリって野営が好きだったね」

「まあ、そうかな」

 そういう話をヴェロニカにはしていたっけな。

「わたしが点けてあげるよ」

 ヴェロニカが小さい火の玉を焚火に発射。

 枝にすぐに火が点いたので、

「火力が高い!」

 俺もすぐに追加の枝、薪を入れていく。

「これでしばらくはいけるかな・・・っと」

 太い薪をベースにして、それに追加の薪を立てかけていくリーントゥっていう型で組んでみた。

 これは薪の追加が楽でいいから、俺はよくやるスタイル。

「ドッシュたちは火は大丈夫なのか?」

「うん、大丈夫そうだね」

 焚火を始めたのは、暖を取るためってのもあるが、獣避けって面もある。

 獣は火が苦手だ。その理由は諸説あるだろうけど、焚いているだけで獣が警戒してくれる。

 モンスターにも効果があるのかは分からないのが困るが、ドッシュたちの様子を見ると問題は無さそうではある。

「まあ、借りてきた子たちはニギの森の件で協力してくれた子たちだし、ある程度の耐性はできたのかもしれないねぇ」

「・・・そういえばそうだったな」

 今回、レンタルしてきたのはクモの件で世話になった二頭だった。

 元々、火に対して耐性があるのかもしれないし、ある程度の文明を目にする機会はあったのかもしれない。それに、目の前でドンパチを経験しているから、慣れもあるかもしれないな。

 まあ、落ち着いてくれているのはありがたい。こっちも人以外の気遣いもしないといけないって思うと、それも多少ストレスになるしな。

「で、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

 俺は金貨とマナタイト鉱石をカバンから取り出して、

「金貨とマナタイト鉱石のことかい?」

「この金貨・・・どういう風に使われるんだ?」


 この世界も、日本と一緒で紙幣とコインでやり取りが行われている。


 散々使ってきたからそのシステムは分かっているが、金貨は初めて見た。

 これをどういう風に使うのか、単純に理解しておきたい。

 お礼として渡されたわけだし、まさかのコレクションアイテムってこたないだろうが・・・

「ああ、金貨はね、一応お金として通用するんだよ」

「・・・ほう」

 使い道はあるんだな、一応。

「ただ、普段使っている紙幣やコインのようには使えません」

 マーベルさんは巾着の紐を解いて、金貨を一枚取り出した。

「この一枚は一定の価値が決まっているわけではありません。日によって価値が変動する物なのです。例えば、今日は一枚につき一万フォドル、明日は五千フォドル、といった具合です」

「・・・なるほど」

 具体的な例を挙げるなら、地球で言うところの株だろう。

 もちろん、そのシステムで言うなら、地球産の金も一緒だな。コインになってるか、延べ棒になってるかの違いくらいか。

「例で挙げたくらいの価格変動は基本的にありませんが、時と場合によっては無価値にもなり得る。それが金貨です」

「一種の資産のようなものだね」

「今のところ、一枚当たりの価値は?」

 気になるところは、結局そこだな。

「私もここしばらくの価値を確認していないのですが、少し前は一枚当たり三十万フォドルでしたね」

 ・・・結構高いな。

 地球の金の価値がよく分からないから何ともだが、それでも俺みたいな高校生が持つ資産としちゃあ出来過ぎだわ。

「だから、物々交換なんかでも使われるよね。今の価値と換算して、とか」

「使い方として間違っちゃないな」

「ところで、何枚いただいたか、確認してもよろしいでしょうか?」

 ・・・ずっと気になってたんだろ。

 巾着はマーベルさんが持ったままだし、

「どうぞ」

「では、失礼して」

 ちょっとは遠慮したほうがいいぞ。ホント。損してる気がする。

「・・・すごいですね。十枚入ってます」

「じゅうまい・・・」


 ・・・三百万ってか!!


 小遣いどころで済まない額だわ!!

 しかも、価値が上がってる可能性もあるし、三百じゃ済まんかも!?

 ってか、とんでもない量を渡してきたな、ボーマンよ!!

「わたしが預かろうか?持ち歩くのも不安だろうし、そもそもそんなに使う物じゃないしね」

「おう、そうしとくれ」

 三百万の資産を持ってうろうろするとか嫌だわ。

 こういうこともできるから、ヴェロニカはありがたい。

「金貨に続いて、こちらですね」


 金貨は一旦置いといて、次はこの鉱石だ。


 メリコで使い方は聞いたけど、合成の素材で、研磨をしないといけないってことくらいしか分かってない。

 どこでどういう風に使うのか・・・一応、知っておいて損はない。

「合成は専門職のところでしかできないんだよ。クラフターってジョブだよ」

 そんなのあったっけ?

 未だに隅々まで見てないのがよく分かる。

「町に工房を構えている方もいますが、人が少ない場所で構える方・・・グリューセン先生を覚えていらっしゃいますか?あの方がそうです」

「ああ、ナイフと斧の。でも、鍛冶がメインなんだろ?そういうのもするの?」

「一纏めになっているけれど、中身は分岐しているんだよ」

 試しにパスポートを見てみるが、確かにクラフターっていうジョブがあった。

 スキル欄も鍛冶系、細工系、工芸系と分岐している。クラフトや複製も含まれていた。

「合成は特殊なジョブだからねぇ。あまりなる人もいないから、工房も少ないよねぇ」

「そんなに難しいのか?」

「難しいのも色々あるでしょ?例えば、技術的に難しいとか」

 言わんとしていることは分からなくもない。

 誰もできない高技術なら、身に付くまでに辞めてしまうかもしれない。

 工房を構える必要があるなら、道具や設備の維持が必要になってくるわけだし、そこが難しいと判断する可能性もある。

「クラフターの、特に合成を生業とする人が直面するのが、依頼の数が少ない傾向があることかなぁ」

「やっぱり、ヴェロニカさんもそう思いますか?」

 二人の共通認識っぽいが・・・

「・・・というと?」

「合成が必要な人って割と限られるんだよ。例えばキリみたいな戦士とか、わたしみたいな黒魔術師とか、狩人とかもそうだね」

「戦闘職しか用事がないってことか?」

「人にもよりますが、大体がそういう方々です。そこでもう一つ問題があるのが、素材の問題です」

 素材っていうと、

「こいつの問題?」

 マナタイト鉱石・・・こいつが問題の一つなのか?

「それも課題の一つですね。マナタイト鉱石はそんなに簡単に採掘される物ではないんです」

「一回の合成に一つ、鉱石が必要になるんだ。合成する物によっては複数個必要。その割に採掘量が少ないから、取り合いになるんだよね」

 単純な合成で一つ消費して、グレードが高い物の合成だといくつか必要。具体的な数字は分からなくても、目の前に出てくる物が少ないなら、そういうことになっても仕方がない。

 鉱石の採掘だって、鉱山から常に出てくるとは限らない。マナタイトが出てくるところならいいが、所によっては別の鉱石が出てくることだってある。

 バランスにもよるんだろうが、取り合いになっても仕方がないな、これは・・・

「それに、戦闘職が必要とするくらいだから、武器も防具も強くしたいわけだけれど、それには相応のリスクも伴う。キリなら、分かるよね?」

「・・・なるほど。強いモンスターの素材が必要なのか」

 武器を強化して攻撃力を上げたい。防具を強化して防御力を上げたい。その辺の石ころで強化しても仕方がない。

 強いモンスターの素材が必要になる。ということは、それを狩ってくる必要がある。それを狩る実力が必要になる。

 そこが高いハードルになるってことか・・・

「中には鉱石を合成する人もいるよ。鉱石はお金を出せば買える場合もあるからね。ただ、それもお金があればの話になるよね」

 俺みたいな駆け出しなら、当然お金もない。ゲームでもそうだ。

 ただ、偶然ランドリザードと出くわして、流れでクモ退治を受けて、全部ヴェロニカが始末をつけてくれたからどうにかできるわけだが、本来ならそんなことできない。

「国お抱えの部隊なら、税金やまとまった仕入れで素材を手に入れることは可能ですが、メリコまで同行していたあの二人のような方々は、そこまで到達するのが難しいんです」

 トール、ジャン・・・お前ら、居なくなってもボコられてるぞ。

 まあ、やる気はあったし、これから伸びるかもしれない・・・と、密かに祈っておこう。

「私は詳しく分かりませんが、話を聞く限り、本当に一部の方々だけのようですね。合成を利用できるくらいまでの実力者というのは」

「そんなに少ないのか?」

「私も素材を販売していますから、それなりに個人で活動している戦闘職の方とお話することもあります。ありますが、値段の問題で購入を諦める方もそれなりに多いので・・・」

 そんなに高い値段で売りつけてるのか?だとしたら、売る側に問題があるんじゃないのか?

 いや・・・それも商売だしな。その辺りのことは俺には分からないし、考えるのはやめよう。

「そういう事情はともかく、ボーマンさんも良い物をくれたね!」

「確かにな」

 金貨も大概過剰な報酬だろうが、マナタイト鉱石も相当奮発したんじゃないか?

「こちらは余計な岩石を削ったり研磨して、鉱石本体を出せば使えるはずです」

「ということは、斧の背中で岩を叩いて落とせばいいのか」

 研磨するなら・・・砥石か何かか。

 まあ、クラフターじゃなきゃ加工できないってわけじゃないし、これはこれでありがたいとしておこうか。正直に言えば面倒だけど。

「今の手持ちの素材で合成するなら、ランドリザードの爪と鱗、ポイズンスパイダーの毒針とかかな?」

 それはメリコでも言ってはいたが・・・

「トカゲの爪と鱗、クモの針?合成するとどうなるんだ?」

「ランドリザードの爪と鱗で鞭本体の強化ができるね。ナイフくらいじゃ切れないくらい強靭な革紐にできるし、単純に攻撃力も上がるよ。それに、ポイズンスパイダーの毒を合成すると、攻撃した相手を毒状態にすることもできるね」

 どれくらい強化されるか分からないが、単純に攻撃力、耐久性が上がって、追加で効果を発揮する毒属性も追加できる、と・・・

 冒険の序盤でそんな強い武器ができてもいいのか?

「クラフターが次の町にいらっしゃればいいんですが、そもそも次の目的地はどうするんです?」

「そうだなぁ・・・」

 別に、合成は今すぐしなきゃいけないわけじゃないし、本来の目的はヴェロニカの親探し・・・

 となれば、自然と人が集まる場所を目指すか、人里離れた山の中ってことになるだろうが。

「メリコから北東の方角にレノトという町があります。そこを目指してみては?」

 マップポーチを開けて位置を確認してみる。

「ここからなら、大した距離ではありません。ドッシュの足があれば、明日には到着するでしょう」

 メリコほど大きくはないものの、位置的にそんなに遠くはない。

「首都やメリコほど規模は大きくないですが、それなりに人はいます。ワケ有りがいるかどうかまでは分かりませんが・・・」

 大きな街ってわけじゃなさそうだし、生活するには十分な規模なんだろう。

 そこなら、ワケ有り夫婦もいるかもしれない。

「例の二人もいるかもしれないけれどね」

 黒魔術師と盗賊のコンビか・・・

 確かに、あの二人もいるかもしれない。

 ただまあ、俺たちの目的はそこじゃない。必要になりゃ戦うが、突っかかってこなければスルーでいい。突っかかってきたら吹っ飛ばすだけだしな・・・俺じゃなくてヴェロニカが。

「じゃあ、明日は移動の日になるね」

「早くご飯を食べて、お休みしましょう」

「となりゃあ」

 やることはいつもと大して変わらない。

 バッグからスキレットとケトルを取り出して、

「ヴェロニカ、水を作ってくれ。マーベルさんは買ってきた食材を出して」

「わたしのミルク用だね。アクア!」

「ドッシュのご飯もあげないといけませんね」

 明日も移動だ。

 レノトで何か得られたらいいけど、果たしてどうなることやら、だな。

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